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161 Lv44の夜

「はぁ!」

「アア!」


 フランがダーティ・ウィスプに切りかかる。だが、その攻撃はその体をすり抜けてしまう。


 闇魔術か? どうやら一瞬だけ実体を失い、物理攻撃をすり抜けているらしい。


「ファイア・ジャベリン!」

「アア!」

『ちっ! 速いな』


 動きもそうだが、魔術の発動が速い。フランが放った火魔術も、ダーク・シールドに似た闇の盾で防がれてしまった。


『ファイア・アロー』

「ファイア・アロー」

『ファイア・アロー』


 今度は盾で防ぎきれない数の魔術を叩きこむ!


 これならば防ぎきれまい! そう思ったんだが……。


「アー!」

『消えた……! いや、転移か!』


 その姿が消えたと思ったら、3メートル程離れた場所にダーティ・ウィスプの姿はあった。


 短距離しか移動できないようだが、面倒だな。倒すだけなら範囲魔術を連打すればいいが……。


最重要は魔石である。下手に高威力の魔術を使ったら魔石まで破壊してしまうかもしれない。


高ランク高レベルの相手なら魔石もデカくて硬いのでそこまで心配しなくてもいいんだがな。こいつは厄介なだけで強さはそれ程でもないし、魔石に強度は期待できそうもないのだ。


 ならば――。


『逃げられない速さで、叩き斬る!』

「ん」

『ウルシ!』

「オン! ガルァ!」

『ファイア・アロー』

「アー」


 俺たちの放った攻撃を躱すため、ダーティ・ウィスプが影転移を行う。だが、これで良い。


ダーティ・ウィスプは詠唱短縮も持っていないし、どれだけ魔術の発動が早かろうが転移を連続では行えないはずだ。ならば、転移直後の一瞬を狙えばいいのだ。


感知スキルを全開にして転移場所を予測する。このダンジョンで散々苦労してきた成果か、俺たちはダーティ・ウィスプの転移先をはっきりと感じ取ることができていた。


「はぁ!」


そしてフランの右手が閃き、火属性を纏った俺がダーティ・ウィスプを斬り裂いていた。


『やったな!』

「ん!」

『この調子でウィスプ狩りだ!』

「オオン!」



 ダーティ・ウィスプとの戦闘から3時間後。


『フラン、ウルシ、夕飯が出来たぞ』

「ん!」

「オン!」


 俺たちは19階の片隅で、野営をしていた。


 ソラスから手に入れた戦利品である気配遮断テントもあるし、俺とウルシの張った結界に守られている。今俺たちが居るテントは、このダンジョンで最も安全な場所と言っても過言ではないだろう。


 今日はダーティ・ウィスプを無事に倒し、思考遮断も手に入れたし、フランのレベルも44に上がった。


 明日はいよいよ20階層に到達するだろう。フランのレベルも45、つまりカンストに達する可能性が高かった。


 だが、その前にフランに言っておかなくてはいけないことがある。


『フラン、ちょっと話がある』

「ん?」

『もうすぐLv45だな』

「ん」

『鑑定する限り、フランのレベルは45が上限だ』

「分かってる」

『ただな、その……』


 言いにくい事だが、ここはいざと言う時に落胆しない様、先に言っておくべきだ。


 俺は心を鬼にしてフランに告げる。


『Lv45に達したとしても、進化できる可能性は低いと思う』


 そう、それがフランに言っておかねばならない俺の予測であった。


 いくら黒猫族が弱いと言われていても、全員が全く戦えない訳ではないだろう。過去に、Lv45に達した黒猫族が全くいないというのは考えづらい。


 という事は、黒猫族が進化するには、Lvカンスト以外に何か条件が必要なのではなかろうか。それが俺の考えだった。


 だが、それはフランも分かっている様だ。


「ん」


 特に動揺を見せることもなく、コクリと頷いている。


「他にも、進化に条件が必要な種族はいる。例えば狐系の獣人とか有名」


 狐系獣人は、特別な者だけが覚えられる固有スキル、狐火を持っている個体だけが高レベルで進化できるらしい。なるほど、黒猫族も何か特殊なスキルが進化のトリガーという事も考えられるな。


「詳しくは知らないけど、白狼も普通の進化じゃないって聞いたことがある」

『そうなのか?』

「だから、おじいちゃんに話を聞けば、何かヒントが手に入るかもしれない」

『だからオーレル爺さんの依頼を受けたのか』

「ん」


 進化を目標にしているフランが、その事を考えない訳がなかったか。むしろ俺なんかより余程考えている。


『まあ、分かってるならいいさ』

「だいじょうぶ」



出版元がGCノベルス様に決定いたしました!

これから改稿やら何やらで忙しくなりそうです。


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