14 町へ向かっております
鑑定をレベルアップさせた効果で、俺自身のステータス表示にも多少の変化があった。まずは、魔力伝導率という謎の項目。フランに訊いても、知らないようだった。魔力を伝導する効率? 何なんだろうな?
次に、スキルの表示形式の変更だ。スキルの種類ごとに、ソートできるようになっていた。これで、多少は見やすくなった。
あと、今まで使い方の分からなかった、自己改変の使い方も分かった。どうやら、スキルをカンストさせたおかげで、ボーナスに項目が追加されたらしい。
それは、スキルスペリオル化、という物だった。LvMaxに達したスキルを、特殊なスペリオルスキルに改変するという、凄いボーナスだ。その代わり、そのスキルはセットスキルから除外され、フランと共有できない俺専用のスキルになってしまう。当然、俺専用スキルなのでセットスキルにセットできず、二度と共有は不可能となる。
自己進化ポイントを10も使うので、慎重に選ばないとならないのだ。使うのが自己進化ポイントなのが謎だが、あくまでも自己進化が主体で、自己改変の役割は自己進化のサポートという事なのだろう。
道々、俺についてもフランに教えた。隠すつもりもないし。他の奴らにばれないように、口裏を合わせないといけないしね。
魔石を吸収して成長すること、スキル共有や、装備者のステータスを上昇させる能力、等々を教える。
「魔石……」
『おう。まあ、レベルアップしたばっかだから、先は長いけどな』
「ん」
『あ、おい。何すんだよ』
「ん」
ガンガン
途中で倒した牙ネズミの魔石を、俺の刀身に押し当ててくる。吸収させてくれようと言うのだろう。やり方はかなり乱暴だが。
『待て待て! 切らないとダメだから! 刃に当ててくれ!』
「こう?」
『そうそう』
「ほんとに吸収した」
『こうやって強くなっていくという訳だ。素材は売ったりもできるだろうし、魔獣を積極的に狩っていくぞ』
「ん。了解」
ここまでの道中は、問題なくやれている。やはり平原が特殊な環境だったらしく、森の外に出る魔獣は大した強さではなかった。精々、エリア2相当だろう。
食事面に関しては、俺にお任せだ。
正気を失っていた時に上げてしまっていた料理スキルが生きた。食材は、次元収納に確保していた魔獣である。料理のおかげで、魔獣が食用かどうか分かるようになったのだ。
フランも俺と同じスキルを持っているのだから、料理ができるはずだが、料理は俺が担当しようと思う。これも、保護者としての務めなのだ。
さらに、念には念を入れて、耐性スキルも装備し、吸収強化、消化強化、捕食といった、食事に関するスキルも装備している。
捕食は、食べた物を取り込み、その力を得るというスキルだ。どの程度の効果があるかは分からないが、装備しておいて損はないだろう。
現在、フランのステータスはこんな感じになっている。
名称:フラン 年齢:12歳
種族:獣人・黒猫族
職業:なし
状態:契約
ステータス レベル:4
HP:70 MP:63 腕力:38 体力:30 敏捷:40 知力:25 魔力:28 器用:43
スキル
夜目、剥ぎ取り上手、方向感覚
セットスキル
剣術:Lv7、拳闘術:Lv3
剣技:Lv7、拳闘技:Lv1
回復速度上昇:Lv1、回避:Lv2、回避上昇:Lv1、脚力上昇:Lv2、瞬間再生:Lv1
回復魔術:Lv1、火炎魔術:Lv1、浄化魔術:Lv3、土魔術:Lv4、火魔術:LvMax、補助魔術:Lv3
危機察知:Lv1、警戒:Lv4、気配察知:Lv2、採取:Lv2、反響定位:Lv1、魔力感知:Lv3
隠密:Lv3、気配遮断:Lv3、逃走:Lv1
威嚇:Lv2、覇気:Lv1
火炎耐性:Lv1、恐怖耐性:Lv1、衝撃耐性:Lv1、状態異常耐性:Lv1、精神耐性:Lv1、毒耐性:Lv3、眠気耐性:Lv1、病気耐性:Lv3、物理攻撃耐性:Lv1、麻痺耐性:Lv2
解体:LvMax、投擲:LV3、料理:LvMax
空中跳躍:Lv2
鉱物学:Lv1、製薬術:Lv1、薬草学:Lv3、
毒中呼吸:Lv1、分体創造:Lv1
気力操作、次元収納、振動牙、浮遊、分割思考、魔力操作
暗視、吸収強化、視覚強化、消化強化、鷹の目、聴覚強化、肺腑強化、敏捷力小上昇、魔力小上昇、味覚強化、腕力小上昇
称号
解体王、スキルコレクター、火術師、料理王
装備
布の服、力の腕輪+1
ステータス的には、ゴブリンよりは圧倒的に強い。ゴブリン・キングよりも強いな。エリア3の魔獣や、オークの上位種とタメを張るくらいだろうか。服は、馬車から持ってきた粗末な服に着替えていた。
装備者ステータス中上昇で各数値が20ずつアップしてる上、腕力小上昇などのスキルの効果も発揮されているからだが。かなりチートだと思う。下位の魔獣を相手に戦うのなら、問題はないだろう。
スキルはこれが基本になるが、場合に応じて切り替えるので、ちょいちょい変化するはずだ。
問題は所持金である。こちらの単位は世界共通でゴルドというらしいが、奴隷商から頂いた硬貨は、銀貨2枚、銅貨24枚。合計で224ゴルドだったのだ。これは宿に一泊できるかどうか、微妙なラインらしい。
らしいと言うのは、フランもそこまで世間の相場を分かっている訳ではなかったからだ。知識として、知っているだけらしい。
まずは、お金をゲットしないと。それで、武具や探索必需品を揃えるのだ。
一応、あてはある。俺が次元収納に仕舞っている魔獣の死骸だ。フランによると、魔獣から素材を取って売るのが、冒険者の主な収入源らしいので、収納内の素材を売ればいくらかの金にはなるだろう。
なので、持ち込み前にきちんと解体して、売れそうな素材を選別するつもりだ。
ただ、高位の魔獣の素材を、フランの様な少女が大量に持ち込んだら目立ってしまうかもしれないので、最初はあまり強くない魔獣の素材から売ろうとは思っている。
まあ、それもこれも、町にたどり着けたらの話だが。
『よし、できた』
俺たちは今、野営の最中だった。フランは素材の解体中である。ついさっき知ったが、装備者登録さえしてあれば、離れていてもスキル共有が行われるようだった。ステータス中上昇もだ。なので、多少離れていても、フランは解体スキルを使えている。
フランはナイフを片手に、地面に横たわった魔獣の死体を、せっせと解体していた。血の匂いで魔獣が寄ってこない様に、浄化魔術による消臭結界を展開中だ。これも、フランが自分で張った。
俺は、フランの食事を準備中だ。奴隷商人の馬車から持ち出した鍋と食材と魔獣肉でシチューを作った。あとは、薬草学を使って手に入れた薬草も使い、栄養も完璧だ。
食材を切るのは、剣の俺にとっては簡単なことだし、持ったり混ぜたりは、念動で問題なくこなせる。しかも、料理LvMaxなので、味も完璧――なはずだ。味見ができないのが本当に残念だぜ。
今後も、この分担が基本になるはずだ。俺が調理や見張りを担当し、フランは解体を担当する。魔石は俺がいただき、その他の部位はフランが売ったり、食べたりする。
『フラン、できたぞ』
「ん」
『水で手洗えよ』
「アクア・クリエイト」
フランは自分で出した水で、パチャパチャと手を洗っている。MPに関しては問題ない。装備者であるフランは、俺の保有魔力を使えるので、水程度はいくらでも生み出せるのだ。
『解体は終わったか?』
「大体は。でも、あれだけ無理だった」
『ああ、亀か』
ブラスト・トータスは解体スキルがMaxでも、ただのナイフじゃ解体できなかったみたいだ。まあ、仕方ないだろう。上位の魔獣だし。
昨日も、タイラント・サーベルタイガーを解体できていなかった。主に道具の問題で。
『今日も、俺の出番か』
「おねがい」
『おう、任せとけ。フランは飯食ってていいぞ』
「ん。ありがと」
さて、フランが食べ終わる前に、とっとと解体しちゃいますか。




