表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/1337

150 襲撃者

 俺たちはソラスを連れて、進んできた道を戻る。


 怪我が癒えたとはいえ、ソラスはかなりの血を失っているはずだ。だが、その動きは悪くない。


 彼のパーティはD~Fランクの冒険者で構成されていたと言っていたか? 勝手にランクFだと思っていたが、E以上かもな。


「フランさんは何か感知系スキルを持っているのか? 僕は気配察知くらいなんだ」

「ん」


 ソラスは黙れない性格なのか、色々と喋っているな。まあ、フランは頷くだけだが。


 俺たちが解除しまくった罠はまだ修復されていないようで、サクサクと進むことができた。このまま罠の難度が高い5、6階を抜けられたら有り難いんだが……。


 小走りでダンジョンを進む俺たちの前方から、男が2人歩いてきた。


「やあ、こんにちは」

「ん。こんにちは」

「ええ? もしかしてきみたち2人だけなのかい?」

「まさか! こんな所にこんな子供たちが2人なわけあるまい!」

「だ、だよな? 仲間はどこにいるんだ?」


 普通はそう思うよな。


 2人の男たちは驚愕の表情でフランを見ている。だが、直ぐに平静を取り戻すと、色々と聞いてきた。


「本当に2人だけなのか?」

「冒険者なの?」

「そっちの狼は従魔なのかい?」

「もし仲間とはぐれたんなら、しばらく俺たちと一緒に行くか?」

「おお、それがいい!」

「そうしなよ!」


 気持ちのいい奴らだね。フランとソラスを心配してくれている様だ――なんていうと思ったか!


 鑑定してみたら、こいつら真っ黒だ。


 窃盗、拷問、恐喝、欺瞞スキルを持っているし、男たちの称号に殺人者がある。


 他の冒険者に友好的に近づいて、油断させてからバッサリってことなんだろう。ダンジョンカードには倒した魔獣の情報しか記されないし。罪を犯しても露見しにくい。


 ソラスのパーティを襲ったのはこいつらなのか? それとも別口か? そう思って気配を探ってみると、俺たちの背後からゆっくりと近づいてくる気配があった。これで3人か……。まあ、どちらにせよ敵に変わりはない。


『フラン、こいつら追剥だ』

(ん)

(オン?)

『どうしたウルシ?』

(オンオン?)


 どうやら俺が鑑定を使ったことが疑問らしい。ディアスに鑑定を使う相手は選べって言われた直後だしな。


 だが、あれは公式の場で王族なんかに鑑定を使うと、マナー違反だって怒る奴もいるよ。場合によっては変な陰謀なんかに巻き込まれるかもよ。という注意だ。


 ダンジョンなんかではこういう馬鹿どもも居るし、鑑定を使わざるを得ない。それは寧ろ当然の措置だろう。出会ったばかりの武器を持った相手を無条件で信頼するなんて、どんだけ平和ボケしてるんだって話だ。


 それでも鑑定するのはマナー違反だと怒るんであれば、むしろ怪しい。鑑定されて不味い事でもあるのか? まあ、凄い珍しいスキルでも持っている可能性もあるが……。だとしても、鑑定はするけどね。


 逆に相手がこっちを疑って鑑定してきたとしても、それは仕方ないことだと思うし。


『ということだ』


 俺がウルシに説明してやっている間に、全然進まないフランとの会話に男たちが焦れてきたようだった。


「だから、仲間はいるのかと聞いているんだが?」


 素が出始めたのか、口調が少し荒っぽくなってきたかな?


「ん?」

『フラン、1人は生かせ。リーダーっぽい戦士が良いな』

(あとは?)

『どうせ俺たちだけで生かしたまま地上に連れて行くのは大変だし、斬っちまっていい』

(ん。分かった)

『ステータスはそこそこだ。油断するなよ。ウルシはソラスを護衛』

(グルル!)


 とは言え実はソラスたちを襲った相手とは別で、昔悪かったけど、今は更生して真人間になっている可能性も僅かだが捨てきれない。なので、奴らから手を出してきてほしいところなんだが。


 そんな俺の願いが通じたのだろう。


 焦れた男がついに動いた。


「ふぅ。もういいや」


 リーダー格のその言葉が合図だったんだろう。フランの背後から近付いてきていた男が、短剣を取り出すと凄まじい速さで突進してきた。


 殺すためではなく、怪我を負わせて動きを封じるための攻撃だ。クズだが、腕と判断能力は悪くないな。なにせ、明らかに少女のフランに対しても、まったく油断せずに罠に嵌めに来ているからな。


『まあ、甘いけど』

「なっ――?」


 俺の念動によって、短剣があっさりと受け止められる。空中で急に動かなくなった自分の腕に驚いている男は、次の瞬間には俺の風魔術によって首を切断されていた。


「え? え?」


 驚いて目を白黒させるソラスを置き去りに、事態はあっと言う間に進行する。


「ダズ!」

「ぐあ!」


 1人がフランによって胴を輪切りにされ、1人は剣の腹でぶっ叩かれて吹き飛んでいた。


「がはっ!」


 石壁にヒビが入る程の勢いで激突する男。多分、腕と肋骨は粉々だろう。壁にぶつかった背中もやばいかもね。


「なぜ……」

「バレバレ」

「ぐぞ……ぐ…………」


 フランの言葉に男は悔し気に呻くと、血を吐き出して意識を失った。


(師匠、どうするの?)

『一旦地上に戻ろう。こいつをギルドに突き出す。賞金が貰えるって話だし。他に仲間がいれば、その情報も吐き出させた方が良いだろ』


 俺たちが相談している間に、ソラスがふらりと前に出る。そして何の躊躇もなく剣を振り下ろした。


 ギィン


 フランがとっさに俺で止めていなければ、せっかく生かして捕縛した男の命はなかっただろう。


「なにを?」

「す、すいません。こいつらを目の前にしたら、つい……」


 やはりソラスのパーティを襲った奴らだったらしい。ソラスは青い顔で、剣をおさめる。だが、厳しい顔で倒れる男を睨んでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 鑑定でそこまで表示されるなら鑑定持ちが冒険者を定期的に鑑定しないと駄目じゃないの?
[一言] まじでいい加減イライラするから言うけどコメント欄アホなんかよ パパさんみたいな名前のやつは鑑定を誰彼構わずやってもいいのか とかアマンダとかのランク高い人達のステータスを覗き見出来るのがおか…
[気になる点] 疑問に思った点 ・師匠が貴族など以外は気にせずを鑑定するって言ってるが、フランに一声もかけずに行うのはおかしい。マナーどうこうではなく、ステータスで 犯罪歴が知られるので、相手は鑑定…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ