閑章二 海中ダンジョン 03
『おっす! オラ師匠! フランの神剣だ! よろしくな!』
「け、剣が喋ったぁぁぁぁぁ!」
俺が念話で喋りかけると、静かなる海が仰天した様子で飛び上がった。自身が念話を使えるだけあり、フランの背中の剣が喋りかけたのだと瞬時に理解できたらしい。
それにしてもいいリアクションだ!
俺の正体を知って驚いた者たちの中でも、一番いい反応を返してくれたかもしれない。狼風の魔獣の姿なのに、非常に表情豊かだった。
顎が外れんばかりの口に、眼球が飛び出るのかってくらいに見開かれた目。鼻の穴が丸く広がり、尻尾がピーンと立っている。
後退りして驚愕の声を上げる姿は、非常にコミカルであった。
「ん。神剣師匠! 最強の剣!」
「し、神剣であったか! しかも、インテリジェンス・ウェポンであったとは……!」
全身をワナワナと震わせながら、俺を見つめる静かなる海さん。いやー、この人? 魔獣? めっちゃリアクションがいいし、好きになってきちゃったよ。
「新しき神剣の持ち主が現れたという話は噂で耳にしていたが、まさか声をかけた者がそうであったとは! なんという僥倖か!」
あと、全然静かじゃねぇな。まあ、海の中で活動してるんなら、地上の情報が伝わるのが遅くても仕方ないのかな?
『改めて、俺は師匠! フランの相棒で、一応神剣だ。ただ、いつでもフルパワーで戦える訳じゃないから、そこは覚えておいてくれ』
「うむ。了解だ。そもそも、神剣はそういうものだ。その力を長時間発揮されては、世界が壊れてしまうからな」
『あー、そりゃそうか』
「それに、今回はダンジョンの攻略がメインだ。むしろ、罠の解除や、狭い場所での魔獣への対処といった、冒険者としての実力が重要になってくる」
「ん。任せて。師匠はそういうの得意」
「ほう? 細々とした作業が得意ということか? 神剣にしては珍しいな」
まあ、罠解除が得意な神剣っていうのは、確かに珍しいかもね。
「では、早速移動を始めてもいいか? まあ、我が連れていくので、背に乗ってもらうだけだが。それとも、準備が必要か?」
「だいじょぶ! いつでも準備万端!」
「おお! さすがランクS! 冒険者の鑑であるな!」
「ふふん」
ということで、俺たちは促されるがままに、再び巨大化した静かなる海の背に乗った。そのまま浦島太郎の如く、海中へと潜っていく。
静かなる海の力で水中呼吸が可能なので、溺れることもない。それに、念話とも違う不思議な力で、普通に会話が可能だった。
あそこに古代遺跡があるとか、あそこに沈没船があるとか、メッチャ気になる情報を色々教えてくれた。
今は寄り道できないが、いずれ探索してみたいものだ。
ガイド音声付きで美しい海を進む中、フランが静かなる海に話し掛けた。どうやら、気になっていたことがあるらしい。
「ねぇ。静かなる海は、他の神剣知ってるの?」
確かに先ほどは、神剣について知識があるような口ぶりだった。俺も、情報が聞き出せないかなーと思っていたのだ。ナイスだフラン!
「うむ。いくつかは知っているな」
「ほほー? どんなの?」
「我が知っているのは、アルファ、ベルセルク、チャリオット、ディアボロス、エクスプローラー、ヨルムンガンド、クリスタロス、レイジングロア、ウィズダムであるな」
多い! それに、以前、ゴルディシア大陸で希望の運び手から情報を貰った神剣以外の名前もあったな?
さすが神獣の眷属。世間では知られていない知識も持っているようだった。
「神剣のことを知りたいのか?」
「ん!」
「ふむ。まあ、こちらの願いを聞いてもらうのだ、よかろう」
「おー」
フランがパチパチと嬉しげに拍手をすると、静かなる海は神剣について語り出す。
正直、アルファ、ベルセルク、チャリオット、ディアボロスについては、俺たちが既に知っている情報だった。まあ、相対して、その力を目の当たりにしてるしね。
ああ、チャリオットが召喚する人型のロボが、海中でも行動可能って言うのは新情報だったか。
ただ、その後に語られた話に関しては、新しい情報が多かった。
「探神剣・エクスプローラーは万里を見通す力を持つ。真の姿は片眼鏡という、攻撃力をほぼ持たぬ珍しい神剣だな」
モノクル型の神剣で、大陸中を見通すほどの知覚能力を得られるんだったか?
「しかも、その能力はただ知覚力を上げるだけではない。この神剣を使いこなせば、近い未来さえ視ることが可能であるのだ」
「未来? 予知ができる?」
「いや、そこまで先ではないな。周辺情報を全て完璧に把握することで、高い精度で1秒や2秒先を予測可能ということだ」
それって、実はメチャクチャ強くない? 相手の動きが超高精度で予測できるなら、戦闘で圧倒的有利だ。
「さらに、モノクルに添えられた鎖が自動迎撃、自動防御の力を持っている。これがまた、硬いのだ」
探知能力が高いだけじゃないのか! 能力だけ聞くと、知覚力向上と自動防御という、地味にすら思える効果だ。だが、使い手の戦闘力によっては、最強格になるかもしれなかった。
「以前は、人間の冒険者が持っておったはずだ。確か、『万里鵬翼』という異名のランクS冒険者だ」
「ランクS冒険者!」
「うむ。その類まれなる弓の腕とエクスプローラーの力を組み合わせることで、大陸間狙撃すら可能とする弓士である」
『え? まじ? その人、今でもランクS冒険者だぞ? しかも、神剣使いだなんて話、聞かされてないんだけど』
本人、絶対に隠してるよね? なんか、ポロっと秘密を知っちゃったよ。
転剣第2期が来年放送予定と発表されました!
いやー、長かった。
これからは色々と情報が解禁されていくと思いますので、お楽しみに!
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