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閑章 フランとクーネ 01

 邪神の欠片との戦いから2ヶ月。


「おー、海!」

「オン!」

『やっぱ北の海って感じがするな。バルボラの海とは波濤の迫力が違うぜ』


 俺たちは再びレイドス王国へとやってきていた。まあ、もうすぐレイドス王国じゃなくなるけどね。


 詳細はほとんど未定であるらしいが、レイドス王国が解体されることだけは既に決まっている。


 邪神の欠片を利用しようとしたうえ、神罰を受けた国なんぞ残しておけないという判断なんだろう。国際会議的なものが開かれ、レイドス王であるカレードも含めた全会一致で可決したようだった。


 レイドス側としても無理に国体を維持しようとするよりも、処分を受けて早急に支援が欲しいらしい。


 それくらい、レイドス王国は苦境に陥っていた。特に厳しいのが食料事情である。耕作地の多くが集中していた東と南が壊滅し、作物がほとんど収穫できなかったのだ。


 実際、国土の7割くらいが荒れ地と化し、国力が半減どころの騒ぎじゃないしな。自力で立ち直ることは、ほぼ不可能と言えるだろう。


 領地の多くは、クランゼル、ベリオス、フィリアースが他国の支援を受けながら管理していくことになるっぽい。まだ、どこがどう割譲されるかも決まってはいないようだが。


 とは言え、既に決まって動き出していることもある。その1つが、冒険者ギルドの設立であった。


 既に各地に残った町などにはギルドの先遣隊が入り、簡易的な支部の設置などが進められている。国家ではあり得ないフットワークの軽さだろう。さすが、せっかちな冒険者を統率する組織だよな。決定から行動までが早い早い。


 戦力が残っている北部も冒険者の受け入れを了承しており、これからレイドス内での連携が深まっていくことだろう。


「黒雷姫殿! お待ちしておりました!」

「冒険者ギルドの人?」

「はい。支部長を任されています。コットンと申します」


 港の傍にあるという冒険者ギルドの支部へと向かっていると、駆け寄ってくる男性の姿があった。


 待ちきれなくて、迎えに来たらしい。


「ん。私はフラン。こっちはウルシ。で、この剣が師匠」

「オン!」

『よろしく頼むよ』


 俺の念話に、コットンが歓喜の表情を浮かべる。


「おお! 噂のインテリジェンスウェポン殿ですな!」


 俺ってば、神剣なうえにインテリジェンス・ウェポンじゃん? それがバレてしまったせいで、どこに行っても冒険者に大人気なのだ。


 あまりにも話しかけられまくるせいで、今じゃ冒険者ギルドの関係者相手じゃなきゃ喋らないようにしてるくらいである。


 目をギラギラさせた学者や研究者程、相手にしていて苦痛な存在はいないのだ。永久に質問をし続けるし、なんか偉そうだし。


 あと、酔った冒険者程ウザい生き物も稀であろう。好意的なため、ぶっ飛ばすわけにもいかないしさ。


 対外的には、力を温存するために最近は寝てるってことにしてあるのだ。


「とりあえず支部へと参りましょう。そこで依頼の詳しい話をさせていただきます」

「ん。分かった」

「北征公殿の関係者も来る予定です。少々変わった方なのですが、悪い人ではないので」

「?」


 それってつまり、悪人じゃないけどフランが気分を害する可能性もあるから我慢してねってこと? どんなやつが来るんだ……?


 まあ、フランも結構な暴れん坊だと思われてるし、この土地の重要人物と諍いを起こしてほしくないんだろう。


 だったらもっと適格な人物がいると思うが、これがなかなか難しいのだ。政治的な意味がなく、クランゼル王国寄りで、戦闘力は申し分なし。レイドスでの知名度も十分。


 これほどレイドスに派遣しやすい冒険者もいないだろう。


 それに、北征公やその関係者に対して慎重にならざるを得ないのは俺にも分かる。


 普通ならここまでやらかして弱体化した侵略国家なんて、周辺国に攻め滅ぼされるのが落ちだろう。しかし、レイドスは未だに完全な滅びを迎えたとは言えない。


 周辺の国々が無理に動かないのは、この北部の存在があるからだ。


 邪神の欠片討滅戦で見せた、北征騎士団の戦力の高さ。明らかに、周辺国家のどの騎士団よりも精強であった。


 単体での戦闘力ならフィリアースの悪魔騎士の方が上だろうし、騎士団の総数ならクランゼルの方が多いだろう。しかし、質と数の掛け算で考えると、北征公配下の騎士たちが圧倒的に強い。


 しかも、あの時に北征公が率いていた騎士は彼の配下全てではなかった。領内の治安維持や犯罪捜査を任務とする、北伐騎士団という精鋭部隊もいるらしいのだ。


 シビュラたち赤騎士の生き残りや、未だに神剣の所有者であるカレードも北部に身を寄せている。戦力だけで考えたら、普通に大きな国家並だ。


 因みに、カレードから神剣を取り上げてしまえという話にはなっていないらしい。神剣の所有者を決めるのは神であり、そこに口を挟むわけにはいかないという理屈だそうだ。


 アルファやベルセルクのように国家が所有している体裁であればともかく、チャリオットは血統に紐付いているらしいからな。


 どちらかと言えば、王家の所有物ってことなんだろう。賠償で分捕るみたいな話もあるかと思ったんだが、それもないようだ。


 どこも神罰が怖いんだろう。


「関係者って、どんなやつ?」

「若い女性の方です。ああ、黒雷姫殿と同じ、黒猫族だったはずですよ」

「そうなの?」


 お、フランが俄然興味の湧いた顔をしているな。フランの悲願である黒猫族全体にかかった呪いの解除。


 それには、強い黒猫族が何人も必要なのだ。北征公の配下なら、戦闘力は申し分ないはずだろう。


「会うの楽しみ」

「オン!」


 頼む、変なやつでいい。せめて、善人で――いや、善人じゃなくてもいい! フランと相性がよくあってくれ!


お久しぶりです。

新しくピッコマにて転剣のスピンオフ漫画が始まりました。

それに合わせてなんとか閑話の執筆が間に合いましたので、短い間ですがまたお楽しみください。

明後日もう1話更新させていただき、その後は4日に1回のペースで更新させていただきます。


「転生したら剣でした  Rev:黒猫が最強の剣とレベルアップ」

5/12 0:00 から、冒頭3話無料で計15話が以下のURLサイトで読めます!!

▼URL(作品ページ)

https://piccoma.com/web/product/163093?etype=episode

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― 新着の感想 ―
[良い点] また読めて嬉しいです!
[良い点] 閑話ありがてぇありがてぇ
[良い点] 思ったより早かったですね。ありがたい。 [一言] 書籍版と同じキャラなら、間違いなく変な奴だ!
感想一覧
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