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最終話 未来

「それじゃあ、今日も神剣について授業をしていきましょう。前回は、神剣の名前や能力、所在地について学びましたね? 覚えていますか?」

「「「はーい」」」

「皆さん、良い返事ですねぇ」


 今日もウィナル先生はポヤポヤしてるわね。巨乳ポヤポヤ銀髪エルフとか、需要在り過ぎて震える。


 なんだかっていう漫画の主人公に似てるって、下級生たちが騒いでたっけ。


「じゃあ、前回のおさらいをしていきましょうか。今日は13日ですからぁ、マルク君。神剣はいくつあるんでしたっけ?」

「はい! 26振りと言われています!」

「良くできました。正解です」


 私の前に座っていた、青猫族のマルクが先生の質問に元気よく答える。綺麗なお姉さんに憧れるお年頃ってやつ?


 幼馴染の何とも言えない姿を見て、ため息が出そうになる。そう言えばこいつ、昔から年上好きだったっけ。


「では、所在が分かっている物はいくつでしょうか?」

「20振りです」

「はい。そうです。邪神の欠片の封印が大幅に減った現在では、神剣の多くが国によって厳重に管理され、戦争などで使われないように各国の監視下にあります。また、毎年公開義務が課せられているので、使い手の一存でこっそり持ち出すことも難しいんですね」


 神剣チャリオットなら見たことがある。レイドス地方では公開の日に合わせてお祭りが開かれるから、学院生なら誰でも1度は見に行くのだ。


「所在が分からない6振りの内、最も特殊なのが終末剣・ゼロです。神託書記で名前だけは確かめられているものの、史上一度も実在が確認されたことがないのですねぇ」


 先生が白板にゼロと書き込む。


「では、オリエッタさん。他の所在不明の剣のうち、4振りは共通点があります。分かりますか?」

「えーっと、イグニス、ガイア、クリスタロス、テンペストは、使い手を求めて放浪します」

「そうです。あと、制作者が同じということも共通点ですね。この神剣たちは歴史上何度も名前が出ますが、いつでも登場は唐突です」


 先生が再び神剣の名を書いていく。


「それは、この剣たちが使い手を探して世界を巡っているからなのです。放浪中は、使用者以外には普通の剣に見えてしまうそうですよ。浪漫がありますねぇ」


 男子たちがざわつく。みんな、自分が神剣の使い手に選ばれたらって妄想しているんだろう。かくいう私だって、昔から似た妄想はしてきた。


 いえ、黒猫族なら誰だって一度は妄想するはずよ。なんせ、神剣への思い入れなら私たちが一番だし。


「他には、リンドヴルムやヴァルキリーなども放浪する神剣ですが、現在は居場所が判明している状態です。しかし、使い手が亡くなれば姿を消すでしょう。何十年かに1度、その行方を探すクエストが冒険者ギルドに張り出されて話題になります」


 おじいちゃんが神剣探しに参加したって言ってたけど、結局使用者が名乗り出たみたい。


「では、最後の1振りはなんでしょう? フランさん。分かりますよね?」

「はい」


 先生が私を指名した。まあ、多分来るだろうって分かってたけどね!


「師匠剣・フランズ・マスターです」

「そうですね。約3000年ほど昔、僅かな期間だけ確認された謎の神剣。それがフランズ・マスターです」


 先生がフランズ・マスターに丸を付けながら、謎と書き加える。


「神託書記で、まだこの剣が存在していることは分かっています。でも、どこにあるかは分かりません」


 神剣は格が高すぎて、神託書記でも所在不明と出るらしい。


「歴史上、何度かこの剣が使われたのではないかという出来事はありますが、確証はないのですね。まあ、黒猫族のフランさんなら、知っていて当然でしょうか」

「それはそうですよ。だって、私の名前はそのフランからとられてますから」


 そもそもフランというのは、黒猫族の女性の名前のド定番だ。黒猫族の聖地でもある、大都市シュワルツカッツェなんかに行ってみようものならそこら中フランだらけである。


「黒猫族中興の祖にして、神罰に立ち向かった聖女。黒猫族にかけられていた呪いを解き、最難関ダンジョン地獄を踏破したという逸話もありますね。そんな英雄フランが使い手と言われていますが、能力に関してはややあやふやなんですよねぇ」


 そう、フランズ・マスターは黒猫族にとって小さい時から話を聞かされている神剣であるのに、その能力については解明されていない。


 他の神剣と戦って負けたっていう逸話もあるけど、その神剣が負けた相手に立ち向かって倒したっていう話なんかもある。


「黒神帝のフランが実在する人物なのは確実です。冒険者ギルドに記録が残っていますから。旅をしながら人々を救った功績で、聖女の認定も受けていますねぇ」


 シュワルツカッツェの大広場にはその時の功績を讃えた石碑があるから、間違いないだろう。メッチャ大きな岩を削り出した、やり過ぎなくらい凄い石碑だ。


 当時のフランの人気がよく分かるわよね。


 まあ、可愛くて強くて優しいだなんて、超すごいもんね。もう至高の存在? すーぱー凄いのよ。


「黒神帝のフランの足跡は世界各地に残っています。カレーを広めた功績でカレー博物館に大きな銅像が飾られていたり、最年少でランクSに上り詰めた冒険者でもあります。あと、現在も続くウルムットの武道大会の、最年少優勝記録も未だに破られていませんね」


 カレーは美味しいわよねぇ。ルシール社の黒猫印のカレー粉が最高に美味しい。あれは神の食べ物だわ。


「後忘れてはならないのが、個人による邪神の欠片討滅への参加記録ですね。なんと、7体もの邪神の欠片を倒しました。彼女がいた時代は、神剣の所持者が非常に多かったことでも有名です。紅王カレード、風鞭のアマンダ、竜炎のネメア、冥軍ジャン、鬼神のアースラース、紅蓮剣イザリオ、聖音のソフィーリア。彼らと協力し、各地の邪神の欠片を倒したと言われていますね」


 神剣が何本も同じ戦場に存在するなんて、凄い時代よねぇ。戦乱が絶えない黄昏の時代なんて言われてるけど、どんな暮らしだったのかしら?


「私が好きなのは、黒神狼種のウルフたちですね」

「私も好きー」

「俺も!」


 クラスメイトたちが次々と声を上げる。私も狼は好きだ。フランの相棒だった特別な狼の子孫たちで、今でもその血統が守られている。


 シュワルツカッツェにいくと、黒猫族なら狼を飼わなきゃって風潮があるくらい狼たちは生活に溶け込んでいる。うちでも最近飼い始めたから、小さい狼がコロコロしてるわ。


「でも、後年の足取りや、家族構成などがサッパリなんですよ。子供がいたのかどうかや、最期はどうしたのかということは謎とされています。仲の良かった男性は大勢いたようですが、それが恋愛関係だったのかどうか、研究者たちの議論の対象となっていますね」


 黒神帝のフランは結婚しなかったらしい。でも、晩年には小さな少女を連れて歩く姿も目撃されており、それが自身の子供なのかは分かっていなかった。


 物語だとそこら辺は作者が自由に創作していることが多いかな? 黒猫族の少女なら、誰にでも自分の推しの恋人候補がいる。


 私は、神剣チャリオットの使い手だったという、レイドス地方の太守カレードくん推しだ。


 詳しくは分からないけどフランに命を救われて、その後は死ぬまで何十年も友人で居続けたらしい。それって、愛じゃないかしら?


 他には、冒険者ギルドのマスターでエルフの男性や、青猫族の英雄ゼフメートが人気かな?


 きわどい作品だと、フランが逆ハー状態の作品とかもあるし、知人のナディアから夫であるイザリオをNTRする作品とかもあった。私はあれ、嫌いだなー。


 つらつらとそんなことを考えていたら、隣の席のマルクがコソコソと声をかけてきた。


「なぁ! フラン!」

「なによ?」

「神剣の在り処、本当に知らないのかよ?」


 黒猫族なら誰でも1度は聞かれる質問ね。そもそもこいつ、幼馴染なんだから私がそんなの知らないって分かってるはずじゃない?


 相変わらず馬鹿……。


「知らないわよ」

「そうかー、だよなー。そもそも、英雄の使ってた神剣だし、フランなんかが知ってるわけないよな」

「言ってくれるじゃない!」


 でも、その通りなのよね。名前は同じフランだけど、英雄フラン様と比べたら全然普通の女の子だし?


 魔術を学んでるのも、就職に有利だからだ。剣術はへっぽこで、成績は下から数えた方が早い。思い切りの良さとかは評価されるけど、強みはその程度。そんな私じゃ、よしんば神剣に出会えたとしても選ばれるわけないよね。


「でもさ、黒猫の修練場に隠されてるって噂あるじゃん?」

「あそこは調べ尽くされてるわよ?」


 黒猫の修練場というのは、黒神帝のフランがフランズ・マスターの力を使って作り上げたという、黒猫族しか入ることができないダンジョンのことだ。


 黒猫族を鍛えるために、シュワルツカッツェの地下にダンジョンを生み出したらしい。英雄って、やることが派手よね。


「万が一があるじゃんか! お前、今年の夏、黒猫の修練場に入るんだろ?」

「ええ。帰郷した時、少しだけね」

「いいなー。もし神剣見つけたら、俺にも見せてくれよな!」

「はいはい。見つけたらね」


 今まで何百万もの黒猫族が、修練場を探索してきたのよ? 数日入るだけの私なんかが見つけられるわけがない。


 でも、そうね。もし万が一発見できたら、皆に自慢してやろうっと。


 そう思ったら、待ち遠しくなってきてしまった。


「黒猫の修練場か……」


 どんな場所で、どんな出会いがあって、どんな物を見つけられるのだろう。今から楽しみだ。


 きっと、良いことがありそう。幸運の足音が聞こえるっていうの? 何故か、そんな予感がした。

8年半連載をさせていただいた転剣、これにて終幕でございます。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

ただ、メディアミックスは今後も色々と予定されておりますし、アニメの第2期もすでに動き始めております。いつ放送とお伝え出来ないのは心苦しいのですが、かならず第2期は放送されますので、今しばらくお待ちくださいませ。

新作の掲載など、今後の予定などに関して本日中に活動報告にてもう少し詳しくお伝えできればと考えておりますので、気になる方はそちらをご確認ください。

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― 新着の感想 ―
アマンダの神剣は、作中の鞭でしょう。ウィーナのツテってアリステアでしょう?きっと受け取ったばかりの時は、銘が封印されてて神剣としての名が分からない状態なのでは?。
レイドス地方…ということはレイドスは国ではなくなったか… 小さな子供を連れてたってこれは邪神ちゃんかな?
アマンダは何の神剣手に入れたかわからんけど(たぶんテンペスト辺り?所有者制限的にフランが贈った鞭の方が大事そうだし) ジャンは十中八九ネクロノミコンでしょ、魔国の王様認定に必要なもんだし 大魔獣、レイ…
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