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129 Side 戦士たち

Side フォールンド


 突如として人々が化け物と化し、暴れ出してから1時間。


 すでに30体は仕留めたはずだが、後どれくらい居るのだろうか。それに、今後ほかの人間が化け物にならないという保証もない。原因を排除する必要があるのだ。


 俺は怪物を排除しつつ、邪気の濃い方向へ向かっていた。


「あ、ありがとうございます!」

「……」

「? あの……」

「……ああ」


 俺は礼を言ってくる男性に対して、礼は良いから早くこっちに来いと言う意味でコイコイという身振りをした、まだ危険があるかもしれないからな。


 だが彼は、何故か真っ青な顔で「すいませんでしたぁ!」という言葉を残して走り去って行ってしまった。


 何故だ? せっかく騎士団の詰所まで護衛してやろうと思ってたのに。ああ、もしかしてあっち行けという意味にとったのか?


「はぁ……」


 いつもこうだ。俺は無口で無表情だとよく言われる上、どちらかと言えば威圧感のある顔をしている。自分では普通だと思うんだが……。最近では初対面の相手に怯えられることにも慣れてきてしまった。


 口下手なので、せめてジェスチャーで意思を示そうと思ったんだがな。これでも怖がられるのであれば、もうどうすればいいんだろうか。


「仕方ない、次の化け物を探そう」


 俺は周辺を見渡し、1番高い4階建ての建物の屋上に駆けのぼった。どうやらどこかの商会の本部らしいな。


 ここからならかなり遠くまで見通すことができる。


「ふむ……」


 見つけた。夜の闇の中でも、発せられる邪悪な気配は隠しようもない。どうやら人ではなく、家畜を襲って食べているようだ。あれなら直接行くのではなく、ここから処理すればいいだろう。距離は300メートル程か? まあ、これだけ近ければ外さない。


「貫け」


 虚空から生み出された1本の魔剣が、俺の意思に従って空を走った。矢よりも早く、槍よりも強く。俺の撃ち出した魔剣は化け物を一撃で貫き、沈黙させた。そして、役目を終えた魔剣は生み出された時とは逆に、ゆらりと虚空に溶けて消えていく。


 これが俺のエクストラスキル『剣神の寵愛』だ。過去に1度でも手にしたことのある魔剣を記録し、俺の意思に応じて生み出すスキルである。あまりにも強力過ぎたり、格が上過ぎる魔剣は具現化できないが。以前、神剣イグニスに触れさせてもらう機会があったが、さすがに具現化出来なかった。


 本来は状況に応じた魔剣を生み出す能力であるが、俺は長年の修練により、生み出した魔剣を撃ち出して操る術も会得していた。魔剣の具現化時間を短くすることで必要魔力を減らし、最大で100本近い魔剣を同時に撃ち出すこともできる。


「……発見」


 また見つけた。今度は人が襲われているな。俺は建物の屋上から飛び降りると、現場へ急いだ。


 しかし、これは何が原因なのか。自然現象ではありえないだろう。化け物どもからは邪悪な気配が感じられる。明らかに世界の理から外れた存在だ。以前倒した高位の邪人にも通じる気配である。


 絶対に何か原因があるはずだ。禁止魔道具の暴走か、何者かの陰謀か。ともかくその原因を取り除かなくてはならない。


 バルボラは故郷を失った俺にとっては第二の故郷。絶対に守り抜いてみせる。


「フォールンド・アーノンクール、参る」



Side フィリップ


「怯むな! バルボラ騎士団の精鋭たる意地を見せよ!」

「おう!」

「うりゃあ!」

「はぁぁぁ!」


 私の発破に応えて、部下たちが一斉に鬨の声をあげた。良い気合だ。


「突貫!」


 そんな部下たちに情けない姿は見せられない。私は専用の騎士槍を構え、先頭に立って化け物の群れに突っ込んだ。


 それに父上の話が本当であれば、この事態を引き起こしたのは我が弟達である。その責任は取らねばならない。



 私が父上に呼び出されたのは、日も変わろうかと言う夜中のことであった。そして衝撃的な話を聞かされた。ブルックの立てた恐ろしい計画と、その末路についてだ。


「それは、本当のことなのですか!」

「ああ……本当だ……すでに、混乱も起き始めている……」


 憔悴した様子の父の話は到底信じられるものではなかったが、あの変わり果てた姿のブルックを見せられては……。



 弟の不始末は、兄である私が清算せねばならない。無論、クライストン侯爵家の存続のためという理由もある。だがそれ以上に、長年我が侯爵家を信頼してきてくれた民の信頼を裏切らぬために――いや、既に裏切ってしまったのだったな。ならば、命を懸けてでも償いをせねばならない。


 末の弟であるウェイントの顧客に貴族が多かったせいだろう。この場所に押し寄せる怪物たちは、元貴族の成れの果てであった。守るべきはずの民に襲い掛かる怪物となった、哀れな者たちだ。せめて民を襲う前にここで仕留めてやるのが情けというものだろう。


 それを喜んで受け入れる殊勝な者がどれほどいたかはわからないがな。それどころか、自分が生き延びる為であればいくらでも他者を食いものにするような、腐った貴族達ばかりであっただろう。


「ぶあああぁぁぁぁぁ!」

「おぶおぶぶうぅぅぅ!」


 それもこうなってしまっては、ただ同情の念しか湧かないがな。


「魔槍・グランボルトよ! その力を示せ!」


 私の魔力を喰らった愛槍が眩い輝きを放ち、その表面に荒々しい雷を纏う。これこそがグランボルトの能力だ。


「ペネトレイト・チャージ!」


 私の槍技に貫かれた2体は、胴体に風穴を開けられて崩れ落ちた。さらにグランボルトから放出された雷撃が周囲の化け物たちを打ち据え、その動きを止める。


「今だ! やれ!」


 その隙を見逃さず、部下たちが突貫して化け物たちを葬っていった。これでこの周辺の化け物は粗方片付いただろう。


「このまま平民街の救援に向かうぞ! 体力は大丈夫だな?」

「当然であります! まだまだ戦えますよ!」

「よし。俺は1人で良い。お前たちは5人一組となり、各所に散れ!」

「はっ! 了解いたしました!」

「敵の中には強い個体も混ざっている。心せよ」

「はい。フィリップ団長もお気を付けて!」


 まずは黒幕どもを探さねばな。


 我が家の隣にある屋敷から凄まじい火の手が上がったのは、その10分後であった。


Side ゼロスリード



『ゼロスリード! 拒否するとは何事じゃ! う、裏切り――』


 うるせぇ! 今いいとこなんだよ!


「どらああぁぁぁぁぁっ!」

「ぐぎゃがぁぁ!」

「ははははははは! いいぜぇ! ランクD冒険者が元になっているだけあるなぁ!」

「ぎょおぉ!」


 俺が戦っているのは、リンフォードのジジイによって邪人化された犠牲者たちの中でも、特に目を付けていた奴だった。


 経験豊富なランクD。しかも戦闘特化型。くくく。こうやって斬り合っているだけで、血が最高に滾ってきやがる! リンフォードの下らん陰謀に長々と付き合った甲斐があったってもんだぜ! 邪神の力なんておもしれーものも貰ったしな!


 楽しい殺し合いだったが、そろそろ終わりにするか。他にも面白そうな気配がいくつかあるしな!


「ちぇすとぉぉぉぉぉぉ!」

「がぁぁぁぁっ……」


 真っ二つにしてやった邪人の死体から邪気が流れ込んでくる。ゼライセの人体実験とやらに協力した結果として手に入れた力だが、素晴らしいな!


 固有スキル『共食い』。同種を殺せば、その力の一部を吸収できるっつースキルだ。俺の場合は邪人や邪獣を殺せばいいらしい。


 リンフォードのお陰でおあつらえ向きにエサが大量にいるしな。邪人どもを喰らって、俺は更なる高みに昇ってやるさ。


 最後には――そうだな、リンフォードを喰っちまうのもいいかもな! そうすりゃ、さらに力を得ることが出来るだろうしなぁ!



Side コルベルト


「うらぁぁぁぁっ! デミトリス流武技・衝波!」


 俺の拳が筋肉ダルマの顔面を爆散させる。結構強いが、封印を解いた俺の敵じゃないな。


「コルベルトさん! もう1体も撃破しました!」

「つよいですー」

「怪物になった人が強いと、怪物も強くなるようですね」


 なるほどな。リディアの言う通りかもしれない。俺が相手にしたのは元がランクE冒険者の女だった。緋の乙女の3人では相手にするのが危険な程度には強かっただろう。


 緋の乙女に対処させた怪物は宿の従業員が変身した奴だったが、そちらは3人でも倒せる程度の強さしかなかった。


 だとするとこの辺よりも、冒険者ギルドのそばの方が危険かもしれない。あとは騎士団の詰所か? 貴族街の方で上がった火柱も気になるしな。


 それにフラン嬢ちゃんのことも気になる。きっと嬢ちゃんはこの異変の原因を知っているはずだ。


 無事でいてくれるといいんだが……。


「それにしてもコルベルトさん、なんかパワーアップしてませんか?」

「分かるか?」

「はいー」

「明らかに速いですからね」

「まあ、お前らなら良いか。俺はデミトリス流の門下生なんだよ。しかも皆伝の試練中だ」

「ああ、なるほどー」

「納得です」


 それだけでこいつらには伝わったらしい。まあ、デミトリス流の試練はそこそこ有名だしな。


「え? 私しらないです!」


 ただ、ジュディスは知らなかったらしい。少し説明してやるか。


 S級冒険者デミトリス。世界でこの名前を知らない人間はいないだろう。素手で竜を倒し、拳で悪魔を退ける最強の格闘者。デミトリスが独自に編み出した技は神の目に留まり、1つの流派として認められるに至った。


 過去に新たなスキルとして認められた流派は20しかないことを考えれば、破格のことだと分かるだろう。


 そもそも武術や武技と言うのは、戦神や武神などの闘いに関する神々が編み出した、最も効率のよい武術の型と言えた。柔軟性に富み、あらゆる事態に対応ができる。そして個人が多少工夫した程度の小技やフェイントなどは武術スキルの変形技として扱われてしまい、個別にスキルとして扱われることはないのだ。


 例えば俺が剣術、剣技を使えたとしよう。修行を続け、試行錯誤を重ねた結果、他者とは差別化された俺自身が扱いやすい、独自の型を編み出すことに成功したとする。だがそれでも、神から見たら多少工夫した剣術、剣技の範囲内でしかないのだ。剣術、剣技のスキルレベルは上がっても、コルベルト流剣術という新スキルを覚えることは出来ないはずだ。


 だが、時折現れる戦いの天才たちにより、神すら驚愕させる、既存のスキルでは包括しきれない特殊な技や型が編み出されてしまう事がある。そういった場合にのみ、新流派や新技がスキルとして扱われるのだ。師匠であるデミトリスは「世界の理に登録される」と言っていたな。


 そう。デミトリス流武技も、格闘術や拳闘術の派生として、神にスキルと認められた流派であった。


 俺はデミトリスに弟子入りして修練を重ねた結果、デミトリス流のスキルレベルが8に達している。これは皆伝が認められる最低条件だ。


 ただ、正式な皆伝を受けるためには、ある試練をクリアせねばならなかった。世に有名なデミトリスの試練である。まあ、ジュディスは知らなかったようだが……。


 その試練と言うのが、デミトリス謹製の封印珠という魔道具によって力を封じられた状態でランクA冒険者になるというものだ。


 デミトリスの意向によって封印珠には鑑定偽装が掛けられており、封印状態とデミトリス流のスキルが鑑定に表示されない様になっている。依頼などを受ける時などのクレームに対処するためだ。まあ、依頼主からしたら手抜きと思われても仕方ないしな。


 一応、自分の意思で封印を解くことは可能となっているが。今回のような事態に対処するためだ。


「なるほど。そういうことなのですね」

「おう。この異変が終わったらまた封印珠を使うからな。他の奴らに言いふらすなよ?」

「分かっています」

「コルベルトさん、これからどうしますかー?」

「お前らはここに残れ。危機は去ったと思うが、怪物がまた来ないとも限らない。宿を守るんだ」

「コルベルトさんは?」

「俺は冒険者ギルドの方へ――」


 ドオオォォォォ!


「な、なんです?」

「あ、あそこ! 神殿のほうです」

「おっきい怪物ですー」

「……あれはヤバイな。これだけ離れているのに、危機察知が反応しまくりだ」


 原因かどうかはともかく、あれを放置はできないな。


「下手したらバルボラが滅びるぞ」

「そんなに強いのですかー?」

「正直、俺でも勝てないだろう」

「ええ? 封印を解いているんですよね?」

「真コルベルトさんでも、無理ですか?」


 リディアよ、真コルベルトはやめてくれ。


「俺一人では足止めが精一杯だろう」

「なら私たちも――」

「だめだ」

「何故ですー?」

「お前らを無駄死にさせたくない」


 俺の言葉に、3人は悔しげに俯いた。自分たちでも分かっているのだろう。俺に付いてきても瞬殺されて終わると。むしろこいつらを守らなくてはならない分、足手まといにしかならない。


「俺は行く! 後は頼むぞ!」

「……分かりました!」

「私たちはー、私たちの出来ることをしますー」

「まずは騎士団に協力して市民を避難させましょう」

「おう! 無茶するな!」

「コルベルトさんも!」



Side アマンダ


 フランちゃんからお手紙をもらって2日。私は移動速度の上昇する術を使い強行軍でバルボラに駆けつけていた。山も森も突っ切って直線で突き進んできたおかげで、2日でバルボラにたどり着くことができた。マナポーションの飲み過ぎでお腹がタポタポになっちゃったけどね。


 普通なら私はアレッサの町から離れることができない。レイドス王国への牽制として、ランクA冒険者が最低でも1人は常駐する必要があるから。


 でも、ちょうどいい身代わりが現れたのだ。ジャンには感謝ね。あいつはランクB冒険者だけど、戦争時には特例としてランクA扱いとされることになっている。むしろレイドス王国からは私なんかよりもジャンの方が恐れられているんじゃないかしら。


 ジャンの異名『皆殺』は、レイドス王国との戦争で活躍したことで付けられたものだから。ジャンの死霊魔術は対大軍戦では凄まじい威力を発揮する。何せ倒した敵を取り込みながら、無限に増殖し続ける不死の軍勢よ? ジャンのアンデッド軍団により5000近いレイドス軍が殲滅された戦いは、今でもレイドス王国軍内部では恐怖と共に語り継がれているらしいわ。


 だからジャンにアレッサを押し付――任せて。私はバルボラに来ることができた。


 手紙にあった通り、孤児院は酷い物だったわ。あれで子供たちに美味しいご飯を食べさせてあげてるイオさんは本当に尊敬できる。


 まあ、その日の内に孤児院は私が買い取って、色々と手続きも済ませたからもう大丈夫だけどね。笑顔の子供たちに「ありがとう!」って言われた時は、本当に来てよかったと思えたわ。子供の笑顔こそが私の活力だから。これで10年は戦えるわね。


 次はフランちゃんに会いに行くつもりよ。屋台をやっているって言ってたし、お客さんとして訪ねてみようかしら? もちろんサプライズで。驚く顔が楽しみだわ――とか思ってたんだけどね。



「はぁぁぁぁ!」


 私の鞭が、怪物を薙ぎ払った。弱いわね。元が冒険者と言っても、ランクD程度じゃこんな物かしら?


「さて、巨人の下へ急がないと」


 孤児院の周辺にいた化け物を排除していたら、夜の闇に突如咆哮が響き渡った。そして、今までに感じたことのない程の邪気の塊が現れたのだ。


 はっきり言ってやばいわね。遠目からでも強さが分かる。突如現れたあの巨人を放っておいたら、バルボラが壊滅してしまうだろう。そうしたら孤児院だって危険だし。


 孤児院は騎士団と冒険者たちに任せてきたから安心だけど、それでも早く戻ってあげたい。フランちゃんがどうしているかも心配だし。


 とっととあの巨人を片づけて、異変の原因を探ってやろう。でも、1人で勝てるかどうか……。それでも私がやらねばならない。それがランクA冒険者に課せられた責任だ。


 何より――。


「あんなのが暴れたら、どれだけの子供たちが巻き込まれることか!」


 そう考えて巨人に近づいていたら、私と同じように巨人に近づいてくる気配が複数あった。もしかしてこの町の冒険者かしら?


「いた」


 一番近い気配に近づいてみる。


「こんばんは」

「ひゃっ! え? こ、こんばんは」


 銀髪の可愛い少女ね。動きも悪くないし、これはまだまだ伸びそう。でも、あの巨人に挑むには力不足かしら? ここは思い留まらせないと。


「あなたも巨人に向かっているの?」

「そ、そうです! あなたもですか?」

「ええ。私はアマンダ。あなたの名前は?」

「シャルロッテです。戦闘力は高くないですが、何か出来ることはないかと思って」


 うーん。本人はやる気なのね。どうやって思い留まらせようかしら――。そんな事を考えていたら、いつの間に他の冒険者たちが集まってきていた。


「よう。あんたらもあれと戦うつもりかい?」

「わしもいくぞ!」


 皆一人では厳しいと感じていたようね。


「百剣のフォールンドに、鬼子母神のアマンダ? バルボラ騎士団長フィリップは噂じゃランクB相当の実力者だって話だし、ギルマス――竜墜のガムドまでいるとは! 大物祭りじゃないか!」


 最初に話しかけて来たコルベルトと言う男が驚いているわね。私も百剣が居るとは思わなかったわ。それにバルボラギルドのマスターである竜墜のガムドと言えば、元ランクA冒険者。十分戦力になるわ。


「で、あなた誰?」

「まあ気にすんなよ。姐さん! 名無しの助っ人だ!」

「狂戦士に似ている気がするけど?」

「捕まえてみるかい? 今は一人でも戦力が必要だと思うが?」

「分かってるわ。くれぐれもよろしく頼むわね?」

「分かってるさ。今の俺じゃ、あんたらにはまだ勝てないしな。それに、今はあっちのデカブツの方が興味がある。そういう事で、そっちの兄ちゃんもよろしくな?」

「……今は見逃してやる」


 コルベルトと狂戦士は因縁があるのかしら。一触即発の雰囲気だけど、大局を見る目を持っていてくれて嬉しいわ。馬鹿やり始めたら、まずはこいつらをお仕置きしなくちゃならなかったし。


 これだけの戦力が居れば、あの巨人にも対抗できる。


 でも、百剣からは少し困った情報がもたらされた。あの巨人の周りにはドーム状の結界が張られており、それが破れないらしい。百剣が力ずくで破れないと言うのであれば、誰にも破れないということだ。


「多分、結界に魔力遮断と物理無効が付いている。あの巨人の魔力が尽きるまではどうしようもできん」


 厄介ね。百剣の話では、結界の中で戦っている人物がいるらしい。その人物が魔力を消費させてくれることに期待するしかないのかしら? もしくは、その人物が倒されてしまったら、一時的に結界が解かれるかもしれない。どうやらその人を閉じ込めるために結界を張っているようだし。でも、できればその人を死なせたくはないわね。誰よりも先に巨人に戦いを挑み、あの場所に釘づけにしている功労者だし。その人が居たからこそ、私たちが間に合った。


 どうするか相談していたら、シャルロッテちゃんがおずおずと話しかけてきた。


 シャルロッテちゃんは邪気祓いができる特殊なスキルを持っているらしく、結界を何とかできるかもしれないらしい。


「それは本当?」

「はい。歌唱と舞を組み合わせた儀式ですが、多分やれると思います。いえ、やります。戦いでは役に立たないけど、せめてそれくらいは!」

「いえいえ。むしろ殊勲だわ! 皆がそれぞれやれることをやればいいのよ」


 そして作戦が決まった。いえ、シャルロッテちゃんが結界を打ち消したら攻撃を開始するっていうだけだけど。


「では――参ります」


 シャラン


 シャルロッテちゃんの腕の輪っかが踊りによって打ち合わされ、鈴のような澄んだ音が鳴り響く。


「儀式の間に、こっちも準備をしないとね」


 私も鞭を構え、魔力を練り上げ始めた。


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― 新着の感想 ―
オールスターズ大進撃 本当豪華過ぎるメンバーですよね。
[一言] な、なんだこのアツすぎる展開はぁぁー!! 最高です!
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