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1276 炎翼と神剣模倣



「「「はあああああああああ!」」」

「馬鹿な……最強の障壁がぁ……!」


 赤騎士団長たちの連携攻撃によって、ラランフルーラが纏っていた障壁が破壊された。


 四方からの神気による同時攻撃は、さすがに耐えきることができなかったのだろう。


 本来は周辺を巻き込んで凄まじい破壊が起きてもおかしくはないが、障壁が威力を吸収したらしい。周囲への影響は、僅かな微風と大地の震動だけであった。


 ただ、ラランフルーラ自身にはかなりの反動があったらしく、その場で片膝を突いている。


「ぐぅぅぅぅ! 聖母よ! 何をしている! 障壁を張り直せぇ!」

「あぐぅ!」


 ラランフルーラが叫んだ直後、聖母が苦悶の声を上げる。同時に、障壁が再び張り巡らされていた。


 だが、ラランフルーラは怒りの表情のままだ。


 新しい障壁は、先程までラランフルーラの身を守っていた障壁からは格段に劣る性能だったのだ。魔力の薄さや形状の歪さから、はっきりとそれが分かる。


 そこに、アポロニアスが、超高速で肉薄した。その『炎翼』という異名の通り、背中に生えた炎の翼が凄まじい加速を生んでいるようだ。


 さらに、その手には炎で作った巨大な槍を構えている。


「ぶっ飛べやぁぁぁぁ!」


 一本の巨大な炎の槍と化したアポロニアスが、正面からラランフルーラへと激突した。


 新しい障壁がなかったかのように、あっさりと貫通していた。


 咄嗟にかざされた左腕を削り飛ばしながら、肩口から後ろへと抜けていく赤い槍。直撃はならなかったが、ラランフルーラの肉体をいとも容易く貫いた。


 さすが赤騎士団長の奥の手。凄まじい威力だ。だが、足らない。


 腕は既に再生を始めている。そこにフランとウルシが襲い掛かった。シビュラたちの遠距離攻撃の嵐の中を突進し、渾身の一撃を叩き込む。


「ガルォォォ!」

「てやぁぁ!」


 神気で覆ったウルシの前足が、ラランフルーラの脇腹を深く抉る。その一瞬だけ大きく開いた傷跡に向かって、フランが正確に斬撃をお見舞いしていた。


 圧縮した邪神気を纏った、天断である。邪神気と黒雷の残滓を棚引かせた一閃が、ラランフルーラの胴体を大きく斬り裂く。


「ぎいいぃぃぃぃぃぃいぃぃ!」


 ラランフルーラが、予想外に大きな悲鳴を上げる。どうやら、想定以上にダメージを与えたらしい。邪神気が有効なのか? だが、そうではなかった。


〈スキル、金色の効果である可能性、97%〉

『そういうことか!』


 合魔討ちが進化したスキルである金色がラランフルーラのもつキメラの部分にクリティカルヒットしたってわけだ!


『もういっちょだ! 今度は、金色全開で!』

「ん! ウルシ!」

「オン!」


 フランが軽く跳び、ウルシがそのフランを前足で打ち出す。今までは天空から打ち下ろされるだけだったが、今や横に飛ぶことも可能であるらしい。


 ウルシの膂力によって弾き飛ばされるように駆け出したフランが、再び攻撃を繰り出した。


「はぁぁぁ! 狼式抜刀術・二式!」


 なんか、新しく名前付いとる! こんな風なネーミングも考えられるのに、何で金色のオーラはカレー斬りなんだ!


「ぎゃあああぁあぁぁっぁあっぁぁぁ!」


 右腕を斬り落とされたラランフルーラが、先ほど以上の悲鳴を上げる。それほどに、効いたらしい。


 薄い障壁すら完全に消え、ラランフルーラの動きが止まっていた。


 シビュラ、ユヴェルの遠距離攻撃が、ラランフルーラの肉体を削るのが見える。


 アヴェンジャーは、ペルソナの側で警戒中だ。攻撃力が足りていないことを悟り、いざという時の肉壁役を選んだらしい。あの性格で、意外と冷静だよなあいつ。


 ただ、フォールンドの姿はない。焦って全力で探すと、俺たちのすぐ背後で発見できた。魔剣の力で気配と魔力を完璧に隠蔽し、じっと動かずにいるらしい。


 怪我をして、隠れている? 違う。そこには、異様な光景があった。


 見ただけで分かる。その全身を覆う真っ赤な魔力は、ただ事ではないと。


「俺に」

「……ん」


 相変わらず、どうしてそれで通じるのかっていうくらいのやり取りだ。だが、フランは素直に下がり、フォールンドの射線を通した。


「ふぅぅぅ……神よご照覧あれ。我が力、示さん。汝が寵愛に相応しき――」


 フォールンドが、長台詞を喋る。すると、その詠唱――いや、祝詞にも思える言葉に呼応するように、フォールンドの全身の魔力が微かに神属性を帯びた。


「神剣模倣」


 赤い光を立ち昇らせるフォールンドが、突き出すように伸ばした両手を、眼前で力強く握り合わせる。


 それが合図となったのか、両手の甲に、赤い光で複雑な魔法陣が描き出された。


 放電するように発せられる膨大な魔力が神気へと変換され、握り合わされた掌の間から光が溢れ出していく。


 遂には閃光となって周囲を眩く染め上げた神気。光が収まった時、フォールンドの手には巨大な金属の塊があった。


 超巨大な大剣の先にこれまた巨大なハンマーを取り付けたような、奇妙な武器。いや、武器と言うよりは、攻城兵器と呼んだ方がしっくりくるかもしれない。


 俺たちは、その超巨大な兵器に見覚えがあった。


「大地剣、ガイア……」

『ああ……間違いない』

レビューをいただきました。ありがとうございます。

自分でも思い入れのあるシーンで感動していただけたというのは、私としてもとても嬉しいです。

しかも一気読み? 無茶されましたねwww

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― 新着の感想 ―
[良い点] フォールンドさんが、長台詞www ちょい笑が入って、重くなりすぎないのがとてもイイです(^O^)
[良い点]  Be witness!!  フォールンド、神剣を模倣出来たんか。そりゃあ、Sランクに最も近い冒険者との評価にも納得。  師匠の金色もラランフルーラに効いて良いですね。  かつて、ナディ…
[良い点] あのスキルが活きててうれしい! フォールンドそんなこともできたのか…
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