表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1254/1337

1252 シビュラとマドレッド



 フランとアポロニアスの間に立ち塞がり、攻撃をその身で防いだのはシビュラであった。


 その肌にも、赤い髪にも、一切の傷や火傷はなく、平然とした顔で立っている。


「シ、ビュ……」

『フラン! 喋るな!』

「!」


 今のうちに回復しちまわないと! マールと共に、フランの傷を癒していく。


 なんせ、敵は元赤騎士団長たち。それこそ、シビュラとは仲間と言っても過言ではない存在だ。どう転ぶか分からなかった。


「オヤジ、どういうこったいこれは? 黒骸の奴らの先兵になったってことかい?」

「バッキャロー! 違うわい! まあ、色々あって、蘇ったってわけだ! お前さんは、なんでその嬢ちゃんを庇う? クランゼルのもんだろ?」

「民のためだ!」

「なるほど! それなら仕方ねぇな!」


 なんだろう。血が繋がってないって聞いたけど、親子なんだなって分かる会話だ。


 ただ、両者の闘志が高まっていくのがよく分かる。明らかに、互いを敵と見なしているようだ。


「……一度、親父とは本気でやり合ってみたかったんだよ」

「そりゃあ、こっちのセリフだ! かかってこいやバカ娘!」

「もう一度あの世に送り返してやんよ! クソ親父!」


 え? 戦うの?


 俺がどんな状況なのか理解できない内に、アポロニアスとシビュラが戦い始めた。


 しかも、この場に駆け付けたのは彼女だけではない。英雄ゾンビとして蘇った茜雨のジンガが放つのとは別に、赤い矢が戦場に降り注いだのだ。


「マドレッド」

「……民のためだ。今は、共闘してやる」


 シビュラもマドレッドも、こちらに味方してくれるということで間違いないようだ。


『心強い援軍だな!』

「ん!」


 フォールンドも魔剣によって傷を癒し、戦闘に復帰している。これにより、敵の英雄ゾンビが分断された。


 ウルシ、アヴェンジャー、アマンダ、フォールンド、シビュラ、マドレッドが英雄ゾンビと相対し、俺たちの前には紅旗のロブだけが立っている。


「自分を葬った相手と、再びまみえることになろうとはな」

「覚えてるの?」

「ああ。全てな」


 そう言いつつも、彼の眼差しから恨みの念は感じられない。ゾンビなのに、潔ささえ感じさせるのだ。


「今ならば、シビュラの気持ちも分かる。だが、この身は縛られている故、手加減などできんぞ」

「ん!」


 ロブは確かに強いが、一度は勝利した相手だ。フランは、余裕をもってロブの攻撃を捌いているように見えた。


 ただ、戦ううちにフランの表情が曇り始める。


『どうしたフラン?』

(なんか、変)


 どうも、フランが自身の動きに違和感を持ったらしい。動こうとすると、一瞬遅れるように感じるようだ。


『消耗のせいじゃなくてか?』

(違う)


 他の人間ならレイドス王国を覆う微かな邪気の影響かとも思うが、俺たちにはそれはない。ならばと大地やその下に感覚を向けると、魔力が渦巻いている様子が感じ取れた。幻影魔術などの魔力に近いかな?


 生命力や魔力を吸い取る結界は消えたが、それだけではなかったらしい。レイドスの大地の下では、生物の感覚を惑わせるような魔術が展開されているようだ。


 レイドスの主力は死霊だ。非常に相性がいい魔術と言えるだろう。こちらの仲間たちが気づいていないのは、その影響が微弱なことと、邪気によってそもそも感覚が乱されているからだろう。


 フランの周囲に、浄化魔術で結界を張ってみる。


『どうだ?』

(ん。変なの消えた)


 フランの動きが、明らかに改善した。ここまで、フランの動きがやや鈍いのは、消耗のせいだとばかり思っていたのだ。もっと早く気付けていれば、アポロニアスとの戦いでも傷つかずに済んだかもしれない。


 だが、フランの調子が戻ったのなら、ロブとの戦いはさらに余裕が出るだろう。俺も守りに割くリソースを減らし、ロブだけにしっかりと集中できる。


『邪神の信頼、起動!』

「むぅ! 何が……」

『抵抗が、やばいな!』

「ぬうううぅぅぅぅん!」


 干渉が弾かれた!


 アヴェンジャーは元から邪神に対して好意的だったが、ロブは邪神の信奉者ってわけじゃないからだろうか?


 ともかく、このままでは支配は成功しないだろう。


『なら、こうだ!』


 今度は、聖浄魔術のホーリーゾーンを使用してみた。浄化効果自体はピュリファイに及ばないが、一定範囲を浄化の結界で囲んで長時間浄化し続けることが可能だ。


 結界で弱体化させて、支配してやる!


 だが、ロブが強すぎて一瞬で結界が消し飛ばされていた。


(師匠、もっと強い術、今すぐ覚える?)

『……そうだな。聖浄魔術を成長させよう』


 この先、邪神の欠片との戦いが控えているかもしれない。戦うにしろ逃げるにしろ、聖浄魔術のレベルを上げておいて損はないはずだ。


 俺は、その場で聖浄魔術にポイントをつぎ込んだ。レベルを、5から10へと一気に上昇させる。


《聖浄魔術がLvMaxに達しました。聖浄強化がスキルに追加されます。フランが称号、聖浄術師を獲得しました》

《条件を満たしたことでユニークスキル、魔導神髄を獲得しました》

《フランが称号、神術師を獲得します》


 せ、聖浄魔術だけではなく、なんか凄いスキルと称号ゲットしちゃったよ!


 魔導神髄は、魔術使用時の反動軽減、消費軽減を併せ持ったスキルのようだ。上位の魔術を複数LvMaxにすることが条件らしい。


 ユニークスキルだし、かなり強いんじゃないか?


 神術師の称号は、その名の通り神術師に転職可能な称号っぽい。剣王の時と同じだろう。まあ、フランが術者系の職に転職するとは思えないが、持っているだけで魔力の使用効率が上昇するようだった。


 魔導神髄と合わせたら、俺たちの魔術運用効率はかなり強化されただろう。守護神の盾といい、いいスキルを短期間でゲットできているな!


『聖浄魔術の極大魔術は――使えるぞ!』

(ん!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >「民のためだ!」 >「なるほど! それなら仕方ねぇな!」 めっちゃ理解し合ってる感あって好きw
[一言] 聖浄無双が奥義! 物体x(かける)だ!
[一言] 凄く久しぶりに、師匠の強みである戦闘中のスキル成長をした気がする。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ