表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1231/1337

1229 冒険者の集団?


 開拓村に住み始めて約2週間。


 開拓は進み、フランとウルシは完全に村人に受け入れられた。もう、村の住人みたいなものだ。


 村の周辺には強い魔獣もおらず、穏やかな日々が流れている。レイドスでの激戦で消耗していた俺たちも、完全に回復していた。


 こうやって元の調子に戻ってみると、ずっと無理をしていたことが分かる。不調の状態が当たり前になり過ぎていて、自分たちが消耗していることに気付けていなかったのだ。


 村人たちが落ち着くとともに、外部からの人の出入りもチラホラと増え始めている。


 ペリドットの部下たちに、物資の補給を担当する商人たち。さらには、クランゼル王国が雇って派遣してきた冒険者たち。


 この少人数の冒険者たちは、村周辺の資源の調査や、魔獣の探索を行うことが仕事だ。山の地質が調査不足だった前例もあるので、クランゼル側としてもしっかりと再調査するつもりなんだろう。


 ランクはCだが、調査系の腕はかなりいい冒険者を送り込んできていた。あと、レイドス王国に対する悪意や敵意が少ないことも、彼らが選ばれた理由だろう。


 とりあえず村人とトラブルを起こすこともなく、粛々と仕事をして去っていった。


 ただ、そのままこの村に残った者もいる。一応薬師なので、役には立つんだが……。


「あのシビュラという娘。興味深い。解剖してみたいくらいだ。くくく」

「エイワース、うるさい。子供が怖がる」


 村に居ついたのは、実験狂いの極悪老人、エイワースであった。


「ほう? 随分とこの村に執心しとるようだな? まあ、安心しろ。ここで趣味に走るつもりもない。クランゼル王国から釘を刺されているからのう。それにしても、元ランクAの儂を派遣するくらいだ。国としても、随分と気を使っておるようだな」


 いやいや。気を遣うなら、エイワースを単独で派遣してくるような真似しないだろう。一時期は犯罪者として手配されていたこともあるほどなのだ。


 国側としても、この老人の危険性は認識しているはずだ。そりゃあ、実力は高いし、レイドス王国だクランゼル王国だという拘りもないだろう。


 だが、それ以上に危ないジジイなのだ。


「大人しくしてて」

「分かっておる分かっておる」

「……」


 フランがジト目で、何度も頷くエイワースを見つめている。


 この老人のことが嫌いではないどころか、一部には敬意すら抱いている様子のフランではあるが、危険人物であることもしっかり分かっていた。


 どちらかと言えば悪人寄りで、自分の欲望に素直なうえ、人体実験とかが大好きな研究者気質である。それでいて、元ランクAに相応しい実力者なのだ。


 うん、再確認したらやっぱりエイワースだけはないんじゃないかって気がしてきた。まあ、来てしまったものは、もうどうしようもないんだが。


 俺たちで監視しつつ、薬師として働かせるしかないだろう。


 村人たちも、エイワースとの距離を測りかねているらしい。明らかに変人なのは分かるが、貴重な薬師でもあるのだ。邪険にすることもないが、即受け入れるというのも難しく、なんとなくよそよそしい感じであった。


 それでも物怖じしないのが、子供たちである。エイワースに纏わり付き、色々と質問をぶつけたりしていた。


 勿論、フランやウルシがしっかりと監視しているけどね。


 エイワースも子供は嫌いではないらしい。というか、こいつにとって自分以外は全員モルモットだから、子供だ大人だと特に気にしないんだろう。


 体が丈夫になる薬とか言うのを飲ませようとしたから止めたが、普通に健康にいいドリンクだった。紛らわしい!


 ただ、エイワースがいると、開拓が非常に進むことは間違いない。この老人は非常に知識が豊富で、食材や素材に関しても詳しかったのである。


 さらに、魔獣を寄せないための薬の作製や、病人の診察まで、何でもこなすのである。


 エイワースという異物にも皆が慣れ始めた頃、村に新たな闖入者が現れていた。


 最初に気付いたのは、周辺を巡回していた赤騎士たちだ。30人近い大所帯が、開拓村へと向かってきているというのである。


 帰還した赤騎士の情報をもとに俺たちが偵察に出たが、間違いなく冒険者であった。戻って報告すると、シビュラが首を捻っている。


「フラン。ペリドットから何か聞いちゃいるかい?」

「知らない」

「クリッカ?」

「報告はありません」


 ということは、クランゼル王国が派遣した冒険者ではないということだろう。


 ただ、男性たちの足取りは迷いがなく、明らかにこの村を目指していた。ウルシを監視に残してきたが、そろそろ村に到着してもおかしくはないだろう。


「どする?」

「どうするったって、村に入れる訳にはいかんだろう?」

「我らとしても許可できません」


 村にいる暗部のまとめ役、ホワイトという壮年男性が意見を言う。村に滞在させては、レイドス人の情報が外に漏れるかもしれない。クランゼル王国としては、未承認の冒険者など絶対に村に入れたくなかった。


 たとえ荒事に発展したとしても、入村はさせられないのだ。


 とりあえず、フランとエイワース、ホワイトが応対し、追い返すことになった。フランはランクA冒険者だし、エイワースは元ランクA。同業に対しての影響力は大きいのだ。


 村の前で待っていると、俺たちが見た集団がこちらへとやってくるのが木々の間から見えた。だが、明らかに数が減っている。10人ほど足りないだろう。


 気配を探ると、村の後方へと回ろうとしているのが分かる。別動隊を分けた? 何のために?


 ともかく、迷った結果偶然村にやってきたという訳ではなさそうだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 上的に厄介事には厄介者をぶつけんだよ!とでも言うべきエイワース派遣
[一言] 少なくとも、現時点では敵対する意志ありと見なせるね。 でなければ二手に分かれて挟み込むような行動は取らないだろうし。
[一言] きな臭い連中がやってきたぁ。レイドスで冒険者絡みか…… 狙いは赤騎士?やっかいな案件になりそう?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ