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1198 覚悟と神気


(師匠)

『ああ、聞こえる』


 集中すると、確実にその声が耳に入る。


「お姉ちゃん! がんばれー!」

「負けるなー!」

「がんばれー!」

「やっちゃえー!」


 それは、子供たちの声援だった。魔力が乗っているわけでも、特殊な力を秘めているわけでもない。ただの、真剣で誠実な応援だ。


 しかし、その声が、フランに力を与える。


 フランの目に、力が宿る。その身から迸る黒雷が勢いを得て、俺を握り締める手が力を取り戻す。


「絶対に、村にはいかせないっ!」


 その言葉には、フランの断固たる決意が宿っていた。


 そして、叫ぶフランの全身を、魔力とは違う力が包み込む。


 より強く、より神々しい力。


 それは、見紛うことなき神気だった。神秘的な青白い光を放つ神気が、フランから立ち上っている。


 いや、これはもう、噴き上がっていると言って良いだろう。最初は陽炎のようにユラユラと見えていた神気が、今や間欠泉のように烈しく天に上っている。


 あれだけ俺たちを無視していた超人兵たちの視線が、一斉にこちらを向いた気がした。それほどに、今のフランは強烈な存在感を放っている。


 やつらを突き動かす本能が、フランを無視できないのだろう。


 扱い方を間違えれば、自身に牙をむく神属性の魔力だが、フランは驚くほどに自然体であった。


 無理なく、神気を当たり前のように身に纏っている。全精力をかけて制御しているというわけではない。痛みや肉体への負荷を我慢している様子もない。


 神気が体に馴染み、フランの肉体の損傷が癒えていくのが分かった。


 今のフランにとって、神気を操り制御することが当たり前なのである。なんというか、神気がフランを一段上の存在に押し上げた。そんな感じだ。



「……いく!」


 フランが、黒雷転動を使用する。


 これもまた、驚くほどにスムーズだった。溜めも集中もほぼゼロ。今のフランにとっては、少し本気でジャンプするくらいの労力だろう。


 フランが移動したのは、村を背に、超人兵たちの前に立ち塞がる位置だ。


「ここは、通せんぼ!」


 フランが両手の平を前方に突き出すように腕を掲げると、神気が一層輝きを放つ。


 直後、戦場を無数の黒雷が荒れ狂っていた。空も地面も、等しく黒雷に蹂躙され、超人兵たちを打ち砕く。


 黒雷招来? いや、違う。フランの閃華迅雷が解けていない。


『す、すごいじゃないかフラン! 黒雷をあんな風に操れるなんて!』

(ん。これが、黒天虎の、本当の力。なんか、わかった)


 ただ力が増しただけではなく、自身の能力をより深く理解できたようだ。


 存在が高みに上ったことで、スキルを使いこなせるようになったらしい。


 ともかく、今のフランは圧倒的な存在感に相応しい、圧倒的な強さを持っていた。


「今度は、こう!」

『おおおお!』


 黒雷の塊が無数に打ち出されたかと思うと、急加速して飛行タイプの超人兵に襲い掛かる。


 全ての黒雷球は、外れることなく超人兵に命中し、葬り去っていた。俺すら超えるほどの、制御力だ。


 しかも、あれだけの攻撃を放っておいて、フランの魔力はほとんど減っていないように思える。神気によって消耗するどころか、神気を取り込んで力に変えているのだろう。


 これが、神気を使いこなすってことなのか? 人には過ぎた力であるせいで、使えば必ず自滅をもたらす。


 ずっと、そう思ってきた。


 だが、完璧に使いこなせれば、凄まじい力を与えてくれるのだろう。


(神様の力、感じる)

『神様……獣蟲の神の加護か!』

(ん!)


 なるほど! 加護が、力を貸してくれているのか!


 俺も加護を持っているから、分かる。確かに、加護の力を引き出すことができたら、神気の制御力は高まるだろう。


 ただ、今のフランは俺の想像以上に、獣蟲の神の加護を使いこなしているらしかった。


 これが、真に加護を使いこなすと言える領域なんだろう。今までの俺なんか、加護の力を少し借りているにすぎなかったらしい。


 命を懸けてでも守るという覚悟と決意。そこに、皆を守るための力が欲しいという、祈りにも似た強い想い。加護の力を引き出す条件は、十分なのかもしれない。


(師匠。あいつらを、やっつける!)

『おう!』


 フランの意思に反応し、黒雷が周囲で弾けて荒れ狂う。放たれる神気が空気を揺らし、まるで咆哮のようだった。


 そこにいるのは、黒い獣だ。


 圧倒的に強く、圧倒的に勝利する、捕食者である。


 理性がないはずの超人兵たちが、動揺したように見えた。


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― 新着の感想 ―
[一言] またなんか称号得たのかな?
[一言] 唐突な覚醒は好きじゃないんですが、何らかの条件を満たしたことで神獣化に近づいたってことでいいんですかね? 神気をリスクなしで完全に扱えるようになると神に近づいていくって認識なので、いつかフラ…
[一言] 997 心臓 で「神属性を使うことで、(中略)スキルが一段深くなる」と説明されていたことを合わせれば、今のフランは極限的な戦闘行為と獣蟲の神の加護との相乗効果によって本来過酷な修行によって到…
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