表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1195/1337

1193 超人の出所


 尋問が始まったが、既に心が折れていたようで全体的に非常にスムーズだった。


 時折嘘を混ぜ込んでいたが、何度か指摘してやるとその後はただ質問に答えるだけだったな。


 そうして情報を聞き出した結果、様々なことを知ることができた。


 こいつらはこの辺の村を襲い、生贄を集めていたらしい。詳しいことは分かっていなかったが、とにかくこの辺の人間を皆殺しにしろと言われていたそうだ。


 そして、重大な事実がもう1つ。この軍勢は、東からやってきたという。


 こいつら、本当に東征公の配下だったのだ。なんで味方であるはずの南征公の領地を侵略するのか聞いたが、その目的は知らないらしい。上位者からの命令だから、従っているだけだった。


 ただ、東征公は元々狂人などと言われており、いつか内乱を起こすのではと噂されていたという。そのため、現場指揮官たちはよく解らないまま、命令に従っていた。


 まあ、上辺だけの関係で、実際は相手の領地を虎視眈々と狙っていたってことなのだろう。


 これって、完全に内乱に突入しているよな?


 東征公はベリオス王国と戦っているはずだが、そちらとは現在は膠着状態であるようだ。なんと、浮遊島を落下させて、相手の動きを封じたという話も聞けた。


『あの浮遊島には天龍も棲んでいた。どうやって落下なんてさせたんだ?』

「か、核と呼ばれるものを、破壊したと……。どうやったかまでは知りません!」


 天龍に見つからずに内部まで潜入して、核を破壊した? それとも、外から大規模攻撃を放った? どちらにせよ、簡単なことではないだろう。


 そして、ベリオス王国の混乱も、想像以上のものであるに違いない。これで、東征公はベリオス王国を気にせず、こちらに力を注ぎ込むことができるはずだ。


 厄介だな。


 さらに尋問を進めると、こいつらのこの後の予定も知ることができた。


(この後、西に行くって)

『ああ。村がヤバイ』


 他にも部隊があり、そちらも西を目指して移動を始めているらしい。村に戻って、避難を促さないと。


 そして、最大の爆弾が投下される。


『クランゼルの鞭使いの冒険者? アマンダのことか?』

「な、名前は知りません! ただ、その冒険者を超人将軍が退けたという報告が入ってきたのは事実です!」


 東征公の軍勢と戦っていたクランゼル王国軍に、アマンダが参加していたのは知っている。中々情報は入ってこなかったが、敗走したという連絡はなかったはずだ。


 実際、アマンダによってレイドス側には相当な被害が出ていたらしい。だが、超人将軍と呼ばれる存在が出陣し、アマンダを退けたという。


 この、退けたっていう表現が微妙なんだよな。


 殺したでも、倒したでも、捕らえたでもなく、退けた。アマンダがどんな状態なのかも、よく分からない。


 こいつらを率いている超人将軍とかいうやつが、かなり強いってことは間違いなさそうだが。対策を練っていったとは言え、アマンダに1体で勝利したらしいからな。ランクA冒険者並なのは確かである。


 東征公の切り札であるのだろう。


 また、理性を失った兵士たちは、東征公の実験の産物らしい。超人計画という、人体改造手術や薬、魔道具を使って人を強化することを目的とした狂気の実験だ。


 犯罪者や志願者、奴隷を対象にして何年も実験を行ってきたという。ただ、思うように成果は上がらず、失敗作の兵士たちのような存在が大量に生み出されていた。


 というか、理性を失う代わりに強化されることに着目し、それを操る方向での研究も進められていたそうだ。


 そして、そちらはある程度成功していた。


 さきほど聞こえた、笛の音だ。音に魔力を乗せて命令を全体に伝え、従わせることができるのである。


 俺たちが捕まえた指揮官のさらに上位者、軍団長と呼ばれる超人たちが所持しているそうだ。先ほど俺たちの存在を看破したのも、その軍団長であった。


「軍団長は、風狼というコードネームで呼ばれる、超人の一人だ……」


 軍団長は4人存在し、全員が超人の成功例であった。その1人である風狼は、狼系獣人のような姿の小男であるらしい。


 人体実験により、エメラルド・ウルフの因子を融合され、その力を得ているそうだ。


 戦闘力は超人たちの中で最も低いが、風を操る能力のお陰で索敵と笛の使用に優れ、最も人数が多い軍団を任されている。


 なんと、風狼軍団の超人兵は、総勢で2万を超えていた。


 この周辺に散らばっているという。どれだけの人間を弄び、犠牲にしたというのか……。


(アマンダ、だいじょぶかな?)


 フランが心配そうに呟く。


 彼女の状態がどうなっているか分からないが、何事もなく無事というわけではあるまい。


 アマンダたちがいた部隊は、ベリオスと連携して東へと備えている部隊だった。東に取り残されていれば、周囲を超人兵士たちに囲まれているかもしれないのだ。


 アマンダが戦線離脱したうえにベリオスの助力がなくなれば、相当危険な状況だろう。


 まだ無事なのか? 連絡がないのは、すでに壊滅したから?


『ともかく、こいつを連れて、村に戻ろう。避難しないと』

(ん!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 超人将軍と言うのが子供の強化兵だった場合アマンダじゃ勝てないから撤退するしか無いとかそういう事かな?
[気になる点]  東の軍勢が生贄確保のために南の領地内を襲っていた事が確定したわけだけど、東の領地内はどうなっているのだろうね?  東の領地内で生贄を賄い切れなかったから、丁度公爵が死んで混乱中の南に…
[気になる点] ファナティクスのスキルに超人化とかあったからそれを人為的に使えるようにしたのが超人かな?能力的に潜在能力解放に近い感じだったけど、2万相手はやばいな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ