表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1194/1337

1192 超人兵


 遭遇した兵士たちは、まともに話を聞ける状態とは思えなかった。


「うがあああああ!」


 獣のように叫び、フランに跳びかかってくる。武芸のレベルは低いが、ステータスは相当高いだろう。


 速さも相当なものだし、槍が叩きつけられた地面がベコリと陥没しているのだ。


 暴走状態で、リミッターが外れているのか?


 攻撃しても中々意識を失わず、最後は深い落とし穴に落とした。登ってこようとしても、叩き落して閉じ込める。


『おい! 俺は正義の騎士グレイ! お前たちは、何者だ!』

「がああああ!」

「うおおおおお!」


 やはり、話が通じない。


 だが、疑問が1つ。


 こいつら、明らかに3人1組で巡回をしてたよな。理性がない状態で、そんな行動できるか? どう考えても、何者かに操られているだろう。


 スキルを使って、男たちを調べる。すると、色々なことが分かった。


 まず、この男たちは超人という種族となり、実験体という称号を持っていた。どうも、レイドスの研究の被験体であるらしい。


 しかし、その実験は失敗し、ステータスが上昇する代わりに理性を失ったのだろう。状態が支配となっているので、何者かに支配されていることは間違いない。


 理性が薄い分、支配はしやすそうだ。


 このまま放置では逃げ出すかもしれないし、ここで仕留めておくしかないだろう。俺は飾り紐を糸化して、穴の底の兵士たちに巻きつけた。ついでに、村に来る途中で手に入れたスキルも試しておく。


 収納で密かに回収しておいたトンネルバグの魔石や、道中の数体の魔獣から、補強粘液、艶消し、甲殻棘化というスキルをゲットしていたのである。


 補強粘液は速乾性で、掘った穴を補強するための液体を分泌するスキルだ。糸から粘液を生み出せば、拘束力が増すだろう。


 艶消しは、甲殻の艶を消して光らないようにするスキルらしい。昼間だとあまり意味ないけど、夜なら糸をより目立たなくさせることができそうだった。


 甲殻棘化は、その名の通り殻を棘のようにとがらせるスキルである。糸を棘状に変化させるのが、少しやりやすくなったのだ。


 まあ、意外と使えそうなスキルばかりだったな。棘化させた糸で超人兵に止めを刺し、俺たちはこの後の動きを相談する。


『うーん。村には、こいつらを操っていた上位者がいるか?』

(潜入する?)

『そうだな。この兵士たちくらいの相手なら、隠れていけそうだしな』

(ん)

『ウルシの鼻も頼りにしてるからな』

(オン!)


 魔術とスキルで気配と存在感を消し去り、壁を飛び越えて侵入する。


 気づかれてはいないだろう。兵士たちの動きに変化がないのだ。


(村の人、いない)

『ああ、全員殺されたのか?』


 家の中をのぞいても、誰もいない。兵士たちが暴れたようで様々なものが散乱しているが、そこに人の気配はなかった。


『うん? あそこにいる兵士。いや、兵士か? 明らかに装備が違うぞ』

(確かに)


 広場に集まっている兵士の端の方に、少人数だが違和感があるものたちがいる。どうやら、指揮官であるようだ。


 少しだけ豪華な鎧を着こみ、数人で話し合っている。


 明らかに、自分の意識を持っている。暢気な様子で会話をしているあいつらと、理性を奪われただ整列しているだけの兵士たちの対比は、吐き気がするほどの気色悪さを感じさせた。


 フランも怒りを感じたらしい。


(あいつらやっつけて、話を聞き出す)

『俺もそうしたい気持ちは同じだが、もう少し待て』


 奴らの会話を聞きたいのだ。


 フランにもう少し近寄ってもらい、魔術で声を拾おうとする。


 兵士たちは気づいていない。だが、相手の戦力はこれだけではなかったのだ。


「そこにナニか潜んでいるぞっ!」

『見つかった!』


 小屋の中から、大きな叫び声が聞こえた。俺たちのことを見ずして、発見しているのは間違いないだろう。


 同時に、ピーッという甲高い笛の音のようなものが聞こえた。音に魔力が乗っていたのが分かる。すると、兵士たちが一斉にこちらを見たではないか。


 笛の音で兵士を操っているのか?


 ともかく、今の俺たちを発見するような相手がいる部隊と、その場の勢いで戦闘に入るのは危険すぎる。


『フラン! 脱出する! 村に情報を持ち帰るぞ!』

(わかった)


 え? 逃げるって言いながら、そっちは――。


「うぉぉぉ! は、離せぇ!」


 指揮官の襟首掴んで、引きずっとるぅぅ!


「ぎゃあぁぁ! 足が!」

「うるさい!」


 足の痛みに悲鳴を上げる敵指揮官を、風の結界で遮音して黙らせる。


 フランは未だに暴れる指揮官を引きずりながら、兵士たちの間をすり抜けて、見事村の外へと脱出することに成功していた。


 兵士が驚くほどの速度で追ってくるのが見えるが、フランやウルシには勝てない。数分ほどで、完全に包囲網を抜けたようだった。


『既に発見されたとはいえ、力技で敵を攫ってくるとは……』

(ふふん)


 ドヤ顔のフラン可愛い。


 違った。現実逃避は止めよう。とりあえず、ずっと引きずってきた指揮官は、足がちょっとまずい感じになっている。


 途中で靴が脱げて、地面で踵が削れて血だらけだ。しかも、右は折れているだろう。どこかで岩にぶつけた時に大きな悲鳴が聞こえたが、多分あの時かな?


 すでに叫ぶ気力もなくし、フランにされるがままである。いや、時おり悲鳴を上げているが、風魔術で声が遮断されているだけか。


 転移とダッシュで村から完全に離脱したことを確認し、俺たちは足を止めた。


 ヒールを軽くかけてから、男を地面に投げ出す。骨はまだ治っていないので、逃げ出すことはできないだろう。今も地面に足を打ち付けた痛みで、悶絶してるしな。


『さて、手早く尋問をしちまうか』

(ん!)


 フランの気配の変化が感じられたのだろう。


「ひ、ひぃ!」


 男は、恐怖による悲鳴を上げていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 一気読み派なので更新貯めしたあとに改めて1話からを一気読みして楽しめ直せました アニメ化の前くらいから貯めてたので今回アニメ化視聴後初めての読み直しだったのですが、アニメを見たことで更に…
[一言] 師匠の予想を超えたフランのアドリブ力 こういうのも成長したと言えるのか。それとも元々あった資質なのか。
[良い点] 読んでて一瞬何が起きたか分からなくなったが、拉致ってたのかよwwww [一言] 次回! 君は生き残ることが出来るか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ