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1178 勝手に復活のアヴェンジャー


 ペルソナが、ソフィアードの亡霊たちを昇天させた直後。


 俺の中から邪気が勝手に溢れ出す。


『おいおい! またかよアヴェンジャー!』

「ふははははは! 我が神よ! 我が巫女よ! 此度も我の参戦をお許しくださり、ありがとうございます!」


 許してないから! 邪神も、また同じことやりやがって!


『ええい! 今回は緊急事態だから怒らないけど、普段は勝手に出てくるんじゃないぞ! うるさいし迷惑だからな!』

「ふははははは!」

『笑ってごまかすな!』


 まあ、アヴェンジャーは明らかに邪神の力でさらに強化されているし、戦力には数えられるだろう。


『どうせ、南征公と戦いたいんだろ?』

「おお! さすがのご慧眼!」


 魔力的に繋がってるんだから、何となく分かるんだよ!


「アレは……。アレだけは、許してはおけぬのですよ」


 アンデッドにしては狂っているくらいに明るいアヴェンジャーが、死者らしい昏い目で南征公を睨みつける。腐った目から溢れ出す、黒く粘着質な恨みと呪いの念。


 これが、こいつの本性なのかもしれないな。


『おい、マレフィセントの言うこと聞くんだぞ?』

「おお! 王子の指揮下で今一度戦うことになろうとは! これぞ運命ですな! ふはははは!」


 毒特化型アンデッドなうえ、邪神に強化されているアヴェンジャーには神毒でもなければ効かないだろう。マレフィセントと一緒に戦うには、悪くない存在である。


『消滅しなければ、また復活できるんだ。無理すんなよ?』

「ふはははは! 我が神にそのような優しいお声をかけて頂けるとは! 我、感激でありますぞ!」

『ええい! とにかくいけ!』

「いきますともぉぉぉぉ!」


 突如外に出てきたアヴェンジャーは、大地を駆けると、南征公に襲い掛かった。


 凶悪な火炎が周囲には渦巻いているが、一切の躊躇がない動きだ。


「ふははははは! この豚野郎がぁ!」


 アヴェンジャーは全身を炎に包まれながらも、その拳を南征公に叩き付ける。怒りが振り切っているんだろう。南征公への罵声付きだ。


 突如出現した邪気を放つグールを見て、南征公も目を白黒させているな。


「な、何者だ! 貴様!」

「自分で作れと命じておきながら、もう忘れたのかね!」

「もしや! オンスロートが逃がしたという、ジェノサイド・グールか!」

「ふはははは! その通りぃぃ!」

「なぜこのような……!」

「神のお導きよぉぉぉ!」


 そう叫んだアヴェンジャーは、爆炎や雷撃を食らいながらも無理やり南征公に肉薄した。邪神に力を借りているせいか、体が半分吹き飛んでも瞬時に再生している。


「我らが怨敵よぉぉ! 貴様はここで果てるのだ!」

「ええい! はなれよ!」


 長い爪を使い、南征公に抱き着くアヴェンジャー。南征公が全身に埋め込んだ宝具が発光し、アヴェンジャーをありとあらゆる攻撃が襲う。


 しかし、アヴェンジャーは恐ろしいほどしぶとい。全身がボロボロになっても、南征公を離さなかった。


「無駄無駄ぁ! 我らの執念は、その程度の攻撃では振り払えぬよぉぉ!」

「この死に損ないめが!」

「ふははは! 今は貴様も同じであろうが! この死に損ないめ!」

「儂は、自分の意思でこの肉体になったのだ! ケジメをつけるためにもなぁ! 我自身の手で貴様らを滅して、我が王に詫びねば!」

「豚がブヒブヒないておるなぁ! 生憎と、豚語は解さぬのだよ! ブッヒッヒィィ!」

「ぐぬぅぅ!」


 身を張って南征公の動きを封じようとする姿はかなり悲壮に見えてもおかしくないはずなんだが、アヴェンジャーの性格のせいでやはりコメディっぽく見えてしまった。


 だが、その覚悟は本物だ。


「王子ぃぃぃ! このまま、我ごとやって下され!」


 そう叫んだアヴェンジャーの顔は、誇り高い戦士の顔をしていた。それが分かったのだろう。マレフィセントが、アヴェンジャーの覚悟を無駄にしないために武器を構えた。


「大義です。行きますよ」


 マレフィセントが石の剣を振り被る。神剣開放をする訳ではないようだ。


 安心した。ここでヘルの力を使われたら、クランゼル王国軍まで全滅しかねないのだ。


 それに、だからといって攻撃が弱いわけではない。


「離せ! くそ、なんだこの異常な力は!」

「ふはははは! 我が神によって、我の力は数倍に高まっておる! 逃がさんぞ!」

「死者は大人しく死んでおけ!」

「ふはははは! 貴様もすでに死者であろうが! 我と一緒に逝くがいい!」

「ぶおおぉぉぉぉ!」

「滅びなさい!」


 南征公の叫びが響き渡る中、マレフィセントが放った斬撃がアヴェンジャーごとその巨体を叩き斬る。


 真上から振り下ろされた神剣・ヘルによって、両者の体は一刀両断されていた。


 切断面が黒く染まり、さらに侵食していく。ヘルのもたらす、漆黒の滅びだ。両者の体が、ボロボロと崩れていく。


 そして、アヴェンジャーと南征公は、消滅したのであった。


「……!」

「我々の、勝ちです」


 途中で気絶から回復して見守っていたペルソナが、涙を流している。マレフィセントもどこか寂し気だ。アヴェンジャーのことを悼んでくれているのだろう。


 でもごめんな! アヴェンジャー、俺の中に戻ってきてるんだわ。消滅する寸前、邪神の欠片が回収したらしい。かなり弱っているが、どうせそのうち復活して、ウザい笑い声を上げるだろう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] アヴェンジャーズ(総数一名)がレギュラー入りする日も近い
[一言] ギャグ要員は死なぬ! 何度でも蘇るさ!
[良い点] ごめんなw [一言] 師匠がいつの間にか神扱いになってる。 アヴェンジャー的には師匠と邪神の欠片を同一存在として見てるのかな?
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