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116 クランゼル3大祭り


「では、最終確認です。予選開始は12時から、料理ギルドを出発するのは10時。2時間で露店を開く場所を決めてください。港湾地区、商業地区、一般居住地区であればどこでも構いません。ただし、敷地の所有者などに断られた場合は、場所を移してください。また、12時より前に販売を開始することは認められません。違反した場合は失格となるのでご注意を」


 そして、2次予選参加者たちはそれぞれの屋台を引いて町へと散っていった。俺たちの屋台はコルベルトが引いている。早速雇って良かったと思ったよ。最初はウルシに引かせるつもりだったが、ちょっとばかし悪目立ちするかもしれんしね。


 因みに、売り子3人娘とフランはお揃いのメイド服を着ている。これもコルベルトが調達してきた物だ。


「昨日食べさせてもらったカレーパンは美味かった! まじで! だが、それだけで予選を勝ち抜けるかどうかわからないからな」


 他の参加者たちも売り子には綺麗所を揃えているらしい。可愛い女の子が売ってたら売り上げが伸びるのは、どこの世界も一緒なんだな。


 防御力は皆無だが、可愛いので許す!


「それに、私とコルベルトさんで色々と売り方を考えていますから。フランさんは、ドーンと大船に乗ったつもりでいてくださいよ」

「私も売り子頑張るよー」

「私の色香で男どもを引き寄せる」


 まあ、やる気があって良かった。どうも、昨日食べさせてやったカレーパンとカレーライス、他の食事が衝撃だったらしい。予選突破したらさらに豪華な食事を食わせてやると伝えたら、メチャクチャやる気を見せていた。


 販売場所の候補に向かっている途中、後をついてくる奴らが居たので、妨害か何かかとも思ったが、どうやら普通にお客さんらしい。目当ての屋台に付いて行って、予選開始と同時に並んで買うんだとか。


 その数は次第に増え、俺達にぞろぞろと付いてくる人数は50人を超えている。初参加の俺たちはこれくらいで済んでいるが、有名な参加者は200人くらいを引き連れているらしい。


 ちょっと、このコンテストを舐めてたかもな。


「凄い人数」

「はっはっは、バルボラの3月祭は、クランゼル王国3大祭りの1つだぞ? その祭中に行われる様々なイベントの中でも、奉納の儀式、吟遊詩人コンテストと合わせて、料理コンテストは有名なイベントだからな。このくらいで驚いてちゃ、身が持たんぞ」

「3大祭りって、他には?」

「王都の新年祭、ウルムットのダンジョン祭だ」

「新年祭はバルボラの月宴祭と似てますねー」


 奉納の儀式に、立ち並ぶ露店。違うのは細かいイベントの内容と、国王の挨拶くらいらしい。だが、ダンジョン祭は想像が出来んな。


「ダンジョン祭は血沸き肉躍り骨砕ける冒険者の祭り」


 え? なにその物騒な祭り。


「まあ、リディアの言う通り、かなり激しい祭りなのは確かですね」

「何をするの?」

「ダンジョン祭なんて名前が付いているが、内実は武闘大会だからな」

「クランゼルでー、一番冒険者の数が多い町で行われる、武闘大会よー」

「Lv20以下だけが参加できるルーキーの部。3人以上のパーティが対象のパーティの部。誰でも参加可能な無差別の部の3つがあるな」


 武闘大会ね。そりゃあ面白そうだ。参加するにしても、しないにしても、行ってみる価値はあるんじゃないか?


「いつあるの?」

「4月の末。1ヶ月後だな。ウルムットでダンジョンが攻略された日を記念して行われるんだ」


 時期もちょうどいい。これは良い話を聞いたな。この後はウルムットに行くつもりだし。


 そんな話をしていたら、すぐに目的地に着いた。


「よし、到着だ」


 まあ、今はコンテストに集中するか。


 俺たちがやってきたのは、料理ギルドなどが立ち並ぶ大広場だ。とりあえず人が多くて、行列を作れそうな場所に来たのである。


 すでに100人近い行列が出来てるけどね。住人の皆さんもルールを分かっている様で、12時前に売れと言ってくる客は1人もいない。


 俺達は広場北側にある時計塔の前に陣取った。そして、フランの次元収納からカレーパンを取り出し、陳列していく。1つ10ゴルドの看板も掲げ、油を入れた鍋もコンロに設置した。


「これ、凄いですねー。フランさんが考えたんですかー?」

「師匠」

「おお、さすがお師匠さん。こんな物にまで精通しているとは」

「商人も似た奴を持ってるけど。こんなに大きくて、全部の硬貨が使えるのは初めて見ましたよ。露店で使う用にわざわざ設計したんですか?」

「ん。そう」

「魔剣少女の師匠は多才ですね」

「ん。師匠は凄い」


 売り子たちが口々に褒めているのは、俺が用意したレジがわりの木製のコインカウンターだ。地球でもあったコインカウンターを木で再現しただけだが、これが結構珍しいらしい。硬貨ごとに溝の大きさを合わせて、メモリまで付けたからな。ジュディスは商人の娘だけあり、かなり食いついていた。


 使い勝手も問題ないようで、さらなるスピードアップが期待できるだろう。3つのレジで、大量販売を行うのが俺の立てた作戦だしな。


 あらかた準備も終わり、フランたちは一旦昼食をとるため、屋台から少し離れた場所に腰を下ろした。もしかしたら、この後は休む余裕なんてなくなるかもしれないし。


「じゃあ、これがお昼ご飯」

「待ってました!」

「これの為に依頼を受けたと言っても過言ではありませんからね」

「朝食もすばらしかったわー」

「あのタマゴサンド……じゅる」


 簡単に作った特製タマゴサンドが好評だったので、昼もサンドイッチにした。タマゴサンド以外に、焼き豚、鳥の照り焼き、マグロカツを用意してみたんだが……。


「うめーー!」

「あ、取らないでよリディア! フランさんも!」

「ふふのふ」

「弱肉強食」

「じゃあ、これもらいー」

「ああ! マイアまで!」

「このジュースも濃いな!」


 それは昼食と言う名の戦場だった。50個も用意したサンドイッチが、5人の胃袋にアッと言う間におさまってしまった。むしろ足りないくらいだ。


 この後売り子をしてもらうのに、仲が悪くなったりしないよな?


 因みに屋台は料理ギルドの監視員が見てくれている。不正がないか監視するための職員は、全ての屋台に1人ずついるらしい。あとは売れた量などを集計し、事前に申請した素材を誤魔化していないかなどを監視するのだ。懐柔しようとしたり、騙そうとしたりしたら即失格なんだとか。監視員さんにもサンドイッチを渡そうとしたら、断られてしまった。


「うめー! でも、屋台の商品はこれよりうまいんだよな!」

「私たちが買い占めたいくらいです」


 コルベルトとリディアがわざとらしく叫ぶ。するとその言葉を聞いた見物人の何人かが、行列に並びに走っていった。もう100人は優に越えたな。こりゃあ忙しくなりそうだぜ。

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