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1177 南征公の挑発


 俺たちだけではなく、マレフィセントたちと南征公の戦いも、より激しさを増していた。


「頭が高いぞぉぉぉ!」


 南征公は、まさに全身宝具という感じだ。


 そのメタボ腹には、ロボが使っていたような火炎放射装置が埋め込まれ、背中には雷撃発生装置。右腕からは冷気が放たれ、左腕にはカーマインフレイムの量産品のような銃を持つ。目から光線が発射されたかと思うと、肩口から鋼糸が飛び出し、マレフィセントを拘束しようと蠢いた。


 どれも、赤騎士の宝具ほどの能力ではないんだが、とにかく多彩である。


 しかも、南征公はアンデッド化していても、戦い方は非常に理性的だった。無理には攻めないし、マレフィセントの誘いには乗らない。そして、防御用の宝具も充実しており、このままでは長期戦になりそうだった。


 まあ、マレフィセントが神剣を開放すれば瞬殺なんだろうが……。ここまでの戦いで消耗が大きすぎて、使えないのだろう。


 普通に戦っていても、動きに精彩がないからな。明らかに無理をしているのだ。


 しかし、マレフィセントは様々な能力を駆使して、戦い続ける。俺たちが知らないスキルを大量に持っている仮面の男は、変幻自在の戦い方で南征公を翻弄し続けていた。


「ちょこまかしおってぇ!」

「ほらほら、こちらですよ。情けない。それでも公爵なのですか? ただの豚ではなく?」

「ぶおおおぉぉぉぉぉ!」

「ああ! やはり豚だったのですね! 醜い鳴き声だ!」


 挑発して、動きを誘導しようとしているらしい。しかし、南征公はどれだけ激高しようとも、焦って動きを変えることはなかった。


 それどころか、南征公も挑発をしかけてくる。


「亡者どもよ! 出でよ! 生者を弄んでやれい!」

「オオオォォ!」

「クルシィィィ!」


 出現したのは、揃いの鎧を着こんだスケルトンたちだ。普通のスケルトンである。マレフィセントを相手にすれば、壁にすらならないだろう。


 だが、マレフィセントの動きが明らかに鈍った。


「その、鎧は……」

「オオオオォォオォジィィ」

「タアァスケテェ!」


 どうやら、マレフィセントの故国の鎧を着こんでいるようだ。やることが陰湿だぜ!


「ぶはははは! 掘り起こせば、いくらでも素体は手に入るからなぁ! 元々が我らにあっさりと滅ぼされた惰弱な国の死者ども故、壁くらいにしか使えんがなぁ!」


 そう叫んだ南征公が、スケルトンをグシャッと叩き潰す。この挑発方法は、マレフィセントにクリティカルヒットであった。


「レイドスのクソどもがぁぁぁぁ!」


 マレフィセントが激高する。


 頭部の角を明滅させながら、スケルトンたちへと突っ込んだ。自身の手で眠らせてやろうというのだろう。あえて、全てのスケルトンを燃やしていく。


「ぶははははは! 随分と怒っておるなぁ! ほれほれ!」

「貴様ぁぁ!」


 次々と呼び出されるスケルトンと、それを燃やして回るマレフィセント。だが、次の瞬間。マレフィセントが大きく後ろに跳んでいた。


 腕が大きく切り裂かれているではないか。スケルトンたちの中に、強い個体が紛れていたらしい。しかも、傷が再生しない。


「ぶっはっはっは! 悪魔殺しの効果はどうだ? 痛いか?」


 レイドス側に、マレフィセントが憤怒の悪魔に支配されかけているという情報が流れていたらしい。


 挑発して怒らせ、隙を作って悪魔殺しで一刺し。全て、南征公の掌の上だ。


「マレフィセントッ!」


 悪魔殺しで刺されたマレフィセントは、明らかに大きなダメージを負っている。大丈夫なのか? マレフィセントの発する生命力が、明らかに減ったのだ。


 その時、ペルソナが動いた。


「るーらーらー」

「なっ! ペルソナ! おやめなさい!」

「らー」


 ペルソナの歌だ! マレフィセントが止めようとするが、涙を流しながらペルソナは歌い続けた。ほんの数秒の奇跡。それだけで、戦況があっさりと変わる。


「なんだこれはぁぁ!」


 南征公の操るスケルトンたちが一斉に消え、周囲に温かい光が満ちた。


「王子……お幸せに……」

「ありがとう……」

「ソフィアードに、光あれ……」


 怨念に囚われていた魂の欠片が、天に昇っていく。幸せそうに笑いながら。同時に、マレフィセントの顔色が少し良くなっていた。


 回復も同時に行ったらしい。


 だが、それでめでたしではない。マレフィセントがかつての部下を呆然と見送る中、ペルソナが倒れたのだ。


「ペルソナ!」


 意識がない。死んではいないようだが……。あれは、大丈夫か?


 その直後、俺の中で憤る者がいた。憤るだけではなく、自力で外に出てきやがった。


『おいおい! またかよアヴェンジャー!』

「ふははははは! 我が神よ! 我が巫女よ! 此度も我の参戦をお許しくださり、ありがとうございます!」


 許してないから! お前が勝手に出てきただけだから! ていうか邪神の欠片、実はさっきからこそこそ何かやってんだろ! 俺だけでこれだけ完璧に邪気が操れるわけないし! バレてるからな!


5月のどこかで1週間ほどお休みをいただこうと思っています。ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] かけらちゃん、新聞紙(べちょべちょにして)くわえてきた大型わんこだったりする?
[一言] 邪神事戦神は元は女性神だろうから一種のハーレム説も間違いでは無いかな? 戦神は多分人類種の怨念等が溜まり過ぎて変化した可能性も有り得るかも知れない。
[良い点] 邪神ちゃん全然反省してないw
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