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1172 邪悪の聖女?


「きしししし! 黒雷姫! 俺は、お前が欲しい!」

『はぁぁぁ!?』


 フ、フフフ、フランが欲しいだとおおぉぉぉぉぉぉっ!


 ここ、このロリコン野郎がぁっ! 何言ってやがる!


 そりゃあうちのフランはドチャクソ可愛いし、好きになっちゃうのは分かる! 一目惚れしない奴の方が頭おかしいレベルだ。きっとフランを間近で見て、新しい扉開いちゃったんだろう!


 でも、許さんぞっ! フランが欲しければまず俺を倒せ! というか、敵国所属の邪人野郎なんぞにフランをやれるか! 馬の骨以下じゃねーか!


「?」

「お前こそが、聖女だ! 邪神と繋がる、邪悪の聖女! アヴェンジャーどもが狂ってしまうのも分かる! いや、狂ったんじゃねぇなぁ! 奴らは正しかった! 聖女よっ! きししししししし!」


 巫女の次は聖女かい!


 どうも、惚れた腫れた的な意味での欲しいではなかったらしい。


 邪悪の聖女って……。邪なの? 聖なの? とりあえず、俺が放つ邪気のことを言っているのは分かった。


 すまんフラン! 俺のせいで変な奴らが寄ってきちまう!


「お前は、私に何をさせたい?」

「きししししし! 邪神様へ、俺の祈りを届けろ!」

「?」

「断ってもいいが、力ずくでも連れていくぜぇ! 俺の言いなりに動くようにしてやる! 貴様の持つ、宝具を食う力もクソレアだからなぁ! 俺様が上手に使ってやる!」


 俺の共食いの力も、しっかりと把握されていたか! こいつに知られているということは、レイドスに伝わったってことだろう。厄介だな!


「邪神様ぁぁぁぁ! 俺に、さらなる力をぉぉぉぉ!」


 そう叫んだ瞬間、オンスロートの体が膨張し、肥大化し始めていた。


 着込んでいたローブを内側から引きちぎり、ブクブクと肥大化していくオンスロート。そのまま巨大な人型にでもなるのかと思いきや、出現したのは無数の触手が生えた巨大な肉塊であった。


 目玉のないバックベ〇ード? そんな感じの姿だ。


 それに合わせて、邪気が倍以上に跳ね上がった。邪神から力を授けられたのか? 俺が邪神の欠片に尋ねると、慌てた様子で「違う違う。自分じゃないって」的な感じで否定するのが伝わってくる。


 言葉が分かるわけじゃないんだけど、明らかに否定していた。ということは、この地に他にも邪神の欠片があるんだろう。


 リンフォードのように神域の邪神と繋がった可能性もあるが、この辺に儀式の痕跡がないからな。


「きしゃしゃしゃ! 生きていりゃあいいからなぁ! 手足引きちぎって引きずって行ってやるよぉぉ!」


 触手の1本の先端に、オンスロートの顔が浮き上がっている。キモッ! 夢に見そうな気持ち悪さだな!


『ここは場所が悪い。誘導しよう』

(ん)

「オン!」


 周囲には、未だに人型邪気と戦う兵士が大勢いる。ここで戦っては、被害が出てしまうだろう。


 俺たちはオンスロートを野営地の外に誘導するため、移動を開始したんだが……。


「きしゃしゃしゃ! 戦場の移動は認めねぇよ! ここで殺し合うんだ! 逃げたいんなら構わないぜぇ? 先に、雑魚どもを食って糧にしちまうだけだからよぉぉぉ!」

「あいつ!」

「グルルル!」


 狂っているように見えて、オンスロートは理性的であった。フランを追うことはせずに、周囲の兵士に攻撃をし始めたのだ。


 触手が高速で伸びたかと思うと兵士に絡みつき、そのまま押し潰している。


「みんな! 逃げて!」

『ダメだ。人型邪気に襲われて、冷静に動けていない』


 あれは兵士を混乱させ、この野営地に釘付けにする役割があったのだ。周辺に兵士がいては、フランが本気で戦えないからな。


 悔しいが、フランの力を封じるには最適の方法だろう。


(師匠! 周りの人を先に逃がす!)

『了解。フランはオンスロートの気を引け! ウルシ! 強引にでも、兵士を遠くへ!』

「オン!」


 俺とウルシの魔術で人型邪気を破壊しつつ、フランがオンスロートに斬りかかった。


「はぁぁぁ!」

「ぎいぃぃぃぃい! ししし! いてぇ! いてぇぇぇなぁぁ! まさか、邪人の肉体を手に入れた俺に、これほどの痛みを与えるとはよぉ! それでこそ、聖女だ!」

「うるさい!」

「きしゃしゃしゃ!」


 フランの斬撃には、神属性が込められている。オンスロートも痛がった素振りをしているが、邪気が減った様子はなかった。


 効いてはいるんだろうが、邪気の総量があまりにも多すぎて、減ったように感じられないのだろう。


「ほらほらほらほらぁぁ! 俺をどうにかしなきゃ、雑魚が死んじまうぞぉぉぉ!」

「なら、これ!」

「いぎぃぃいぃぃ!」


 フランが使ったのは浄化魔術だった。神気を込めたことで、邪人に通用するのだ。ダメージ自体は斬撃の方が大きいだろうが、広範囲に影響が及ぶため、オンスロートの触手が一斉に動きを止めていた。


 その間に、俺とウルシは無理やり兵士を避難させる。ウルシは襟首を咥えて遠くへと移動させ、俺はディメンジョン・ゲートへと誘導した。


 念話で声をかけてしまっているが、この状況なら遠くから仲間が叫んでいるとでも思ってくれるだろう。


 逃げることに慣れ始めているのか、援護してやればその撤退は非常に速やかであった。


「やってくれるじゃねぇか! 聖女ぉぉ! ますます、屈服させたときの泣きっ面が楽しみだぜぇ!」

『今度はフランを泣かせるだと? さっきからふざけたことばっか言いやがってぇぇ! 許さん!』

(師匠。落ち着く)


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― 新着の感想 ―
[良い点] かけらちゃん、もう3つ目のじんかくとして確立してるね
[一言] やっぱ師匠ブチギレ案件w
[一言] なんだろ、この師匠の「小学校に娘の姿を見に行ったらクラスの男子に娘が遊びに誘われているところを見たおとうさん」 みたいな反応は。
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