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1149 高ランク冒険者たち


「模擬戦する?」


 フランはドーレのことも気になったらしい。また、模擬戦を申し入れている。いや、半ばおねだりって感じだが。


 しかし、こちらにも断られてしまった。


「あなたとの模擬戦はとても疲れそうだから、ごめんなさいね?」

「ん」

「物分かりが良い子も好きよ?」


 フランも、あまり残念そうでもない。断られることは最初から分かっていたんだろう。


 激戦を戦い抜いたことで、まだ興奮が収まり切っていないのかもしれない。とりあえず、模擬戦と口に出してしまったようだ。


「本当にごめんなさいねぇ。私も、模擬戦に興味があるのだけれど……。こんなお婆ちゃんでも、ジャンくんの護衛だから」

「わかった。無理言ってごめんなさい」

「いいのよぉ。あなたみたいな歳の子はね? わがままを言うのが仕事みたいなものなんだから」


 ドーレは楽し気に笑っている。本当に気に入られたようだった。


 ジャンたちと情報交換をしていると、今度はフォールンドやドナドロンドたちが近づいてくる。会議が終わったらしい。


「おお! サイサンス殿! ドーレ殿! お久しぶりですな!」

「お久しぶりねドナドロンドくん。大きくなったわねぇ」

「いやいやドーレよ。数年でそう変わらんじゃろうよ。誰に対しても大きくなったというのをやめんか」

「あらぁ? そうかしら? 大きくなったと思うんだけど」

「ううん? 言われてみると、確かにデカくなったかの? ていうか、マジでデカくなっとるー!」

「はっはっは! つい先日変異に至りまして! タッパも角も大きくなりましたな!」


 ドナドロンドは変異したことで、かなり様変わりしたからな。知り合いが見れば驚くのは当然だろう。


「フォールンドくんは、変わりはない?」

「百剣は変わらんじゃろ」

「ああ」

「うふふふ。恥ずかしがり屋さんなのも相変わらずね」

「これは無愛想っていうんじゃ。百剣といい黒雷姫といい、最近の若いもんは人生楽しめてるんか?」

「サイサンスは楽しみ過ぎだと思うけど? ギルドから聞いているわよ? カジノと、女の子にお酌してもらえるお店に入り浸ってるんでしょう?」

「かっかっか! 人生楽しんだもん勝ちじゃ! まだまだ遊び足りんわい!」


 呆れた口調のドーレに対して、サイサンスが胸を張って言い返す。この爺さん、ハッチャケ過ぎじゃね?


 だが、すぐにドナドロンドやフォールンドの視線に気づいたようだ。昔なじみのドーレに対しては素で問題なくても、若者たちにはいい恰好をしたいんだろう。


「む、無論鍛錬も重要じゃぞ? だが、それが目的の人生なんぞ、まっぴらごめんじゃろ? デミトリスみたいにはなりたくないもんじゃて」

「あの人はちょっと変だからぁ」


 元ランクAから見ても、デミトリスは変人だったらしい。


 そんな風に冒険者同士で交流していると、マレフィセントたちも合流してくる。すると、周囲に人が集まってくるのが分かった。ほとんどが冒険者たちだ。


 こちらに興味があるんだろうが、一定以上の距離から近づいてこない。


「す、すげー面子だぞ」

「あの子供は?」

「ばか! ありゃあ黒雷姫だよ! 今一番ランクAに近いって言われてる!」

「そ、そうなのか! 言われてみるとオーラがある気がする!」


 考えてみれば、普通の冒険者じゃおいそれと近づけない面子だったな。


 ランクA冒険者である『百剣』のフォールンドと、『黒子』のマレフィセント。その相棒の『白紙』のペルソナ。元ランクA冒険者の『嵐槍』のサイサンスに、『死の舞姫』ドーレ。ランクBでありながら戦時はランクA扱いとなる『皆殺』のジャンに、ランクB冒険者『黒雷姫』フラン。そして、異名はないが、多くの冒険者に慕われ、戦場では謎の強化能力で大活躍したドナドロンド。


 この丘陵地帯にいる冒険者の頂点が一堂に会していた。


 さすがに、ここで会議の内容について話すことはできそうもないな。ドナドロンドの案内で天幕へと場所を移すと、改めて今後の動きが説明された。


 当然だが、茶や菓子はない。まあ、フランが全員にお茶と菓子類を振舞っているけどね。戦場で贅沢だけど、そこは重要な会議ということで目を瞑ってもらいましょう。


 ドーレなんかメチャクチャ喜んで、フランをずっとナデナデしていたし、士気も多少は上がったのだ。


 ポリポリと菓子を齧る音が響く天幕の中で、ドナドロンドの説明が終わる。


「ふははは! では、我らは東に戻り、そちらを落とす役目ということだな?」

「その通りだ。やはり、ラージヒルを落とすには、多大な犠牲を払う必要があるという結論に至ってな」


 元々はラージヒルを攻略するための作戦を話し合っていたはずなんだが、無理という結論に達したらしい。


 こちらの被害も馬鹿にならないし、ラージヒルの市民にも大きな犠牲が出る。それでは落とす意味がないと考えたのだろう。


 新たな戦略としては、大軍でラージヒルを攻めると見せかけて敵の主力の目を惹きつけ、少数精鋭で東の砦を攻略するという作戦になっていた。


 フラン、ジャン、サイサンス、ドーレ、マレフィセント、ペルソナは東に移動。フォールンド、ドナドロンドは冒険者を率いてラージヒルを攻める役だ。


 赤騎士が出た時に、強者が1人もいないと蹂躙される恐れがあるからね。


 特にフランは、東の冒険者たちを率いる役割になっていた。ジャンはアンデッドの指揮をせねばならないし、サイサンスたちはその護衛。マレフィセントは、相手の強者に備えて温存ということになったからだ。


『フラン。大丈夫か? 指揮官なんて、できるか?』

(ふふん。だいじょぶ。任せて)


 うーむ。自信満々なんだけど、本当に大丈夫かねぇ。

少々体調を崩しており、今週はお休みさせていただこうと思います。次回更新は2/27予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] この中でも(一応は)格下の部類になるフランに指揮官を任せるのは…と思ったけど誰が見ても指揮官に向いてないフォールンド、自分裏方っすから!と逃げるマレフィセント、自分護衛っすから!と逃げるサイ…
[気になる点]  ミレニア砦は調査しに行かなくて良いのだろうか?  地下に邪気の研究施設がある事はアヴェンジャーの証言から確定しているし、邪気関連の施設を何箇所も領内に設けるとは思えないから、多分オン…
[一言] 体を大切にして下さいね。お大事に。
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