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1115 ハイドマン排除


 謎の棒剣をクリムトに渡した俺たちは、そのまま人命救助に取り掛かった。クリムトや騎士団が動いているが、救助の手なんて多ければ多いほどいい。


 被害のあった地区を回り、生きている人間を救い出していった。ギリギリ助けられた者も多い。また、被害者の数は思ったよりも少なかった。


 元々、アシュトナー侯爵の配下だった者たちが多く捕らえられていて、貴族街に人が少なかったということと、残っている者たちも地下に逃げ込んでいたおかげである。


 救助が一段落つけば、今度は敵への対処だ。実は、クリムトからアレッサに潜む敵の捜索と討伐を頼まれたのである。


 いや、捜索はほぼクリムト任せで、俺たちは殲滅すればよかった。


 ハイドマンによって攻撃された際、大精霊はその魔力をしっかりと覚えていたらしい。そして、同質の魔力を秘めた存在が複数、アレッサに隠れていることを探り出したのだ。


 アイテム回収役以外にも、さらに多くのハイドマンがいたとは……。1匹見たら10匹いると思え的なやつなのかな?


 クリムトはその場から動かず、一瞬でアレッサ中に隠れ潜むハイドマンを見つけてしまうのだから、大精霊の索敵能力は凄まじい。


 大精霊にとって町一つ程度の範囲、足元くらいの感覚だそうだ。


 結果、俺たちは精霊の先導に従って3体のハイドマンを排除していた。


 どうやら、ハイドマンは、自身の精神を分割して複数のアンデッドに入れ込み、それらを同時に操作する能力を持っているらしい。


 同一存在なので記憶や能力は共有しているが、宿る素体や分割した際の大きさで、強さやスキルが変化するようだった。


 恐ろしいのは、そこまで相手の本質を見通してしまう大精霊の眼力だろう。大精霊の情報収集能力とクリムトの分析力、鑑定があれば、相手のことを丸裸にしてしまえるのだ。


 それでも、棒剣の正体は分からなかったが。


 ハイドマンが口を割るはずもないし、大精霊からも詳しい情報は語られなかった。


 まだ契約したばかりで大精霊との意思疎通が完全ではなく、気にかけている理由が不鮮明であるそうだ。交信するだけでも消耗が重く、長時間の意思疎通ができないのだろう。


 ただ、精霊たちが妙に気にかけており、大精霊がクリムトから無理矢理取り上げるようにして回収してしまったという。


 精霊が気にかけるような何かが秘められており、滅んだ国はそれを利用して大精霊を呼び出したのかもな。


 結局は、よく分からんという結論にしかならなかった。クリムトと大精霊が保管してくれているのであれば、一番安全だろう。


 ハイドマンがまた襲ってこようにも、今のクリムトはランクAに相応しい力を取り戻したのである。俺やフランが奇襲したって、倒せるかどうか分からないのだ。


 一番の収穫は、フランの精霊魔術のレベルが上がったことであろう。風の大精霊やマールとの交信が、精霊魔術の訓練になっていたようだ。


 もう1つの収穫は、ハイドマンたちが持っていたアイテム袋だろう。


 ハイドマンたちが所持していたアイテム袋は、かなり上位の術者が契約をかけていたようで開けるのに苦労した。まあ、時間をかけてこじ開けたけどね!


 中に入っていたものはすべて同じで、アレッサの詳細な地図と、2つの魔道具だ。


 1つはクリムトを刺した短剣。魔力吸収能力に加え、邪気が込められていた。効果を発動させるとその邪気が一気に放出され、十秒間だけ邪気の刃が生み出される作りである。


 邪気によって魔術や障壁を乱すことで、かなりの貫通力を得ることが可能なのだろう。クリムトは顔をしかめているが、俺にとっては興味深いアイテムだ。


 邪神の欠片から供給される邪気を障壁ではなく、相手の防御を崩すためにも使えるってことだからな。ただ、そんなに頻繁に使うわけにはいかないだろう。


 邪気は、忌み嫌われる力なのだ。ここぞという時の、奥の手にしておかねば。そう考えると、最近の俺は頻繁に邪気を使い過ぎだったかもしれん。獣蟲の神様は、契約や許諾があれば邪神の欠片から力を借りてもいい的なことを言っていたけど、もう少し自重しよう。今回はクリムトだったからいいけど、下手な奴に目撃されたら面倒なことになるのだ。


 そして、アイテム袋に入っていたもう1つの魔道具が、人を捜すための羅針盤のような魔道具である。


 かなり限定された能力しか持たないらしく、なんとクリムトの居場所を探すことに特化していた。全部の針がクリムトを指していたから、間違いないだろう。


 かなり執拗に、クリムトを狙っていたらしい。謎の棒剣を隠し持っているだけではなく、アレッサ攻略のための最大の壁の1人でもあったからな。


 クリムトを排除しつつ大精霊を暴走させることができれば、一石三鳥にも四鳥にもなるのである。専用の魔道具くらい作り上げる価値があると考えたのだろう。


「アマンダ、だいじょぶかな?」

『うーむ。レイドスからしたら、クリムト並に邪魔だろうからなぁ……』


 ジャンに関しては、ネームレスという死霊術師殺しのアンデッドが生み出された。ならば、アマンダには? フランが心配するのも無理はなかった。


 ただ、同様のことをクリムトに伝えると、笑いながら大丈夫だと言い切る。


「確かにアマンダ君は攻めるよりも、拠点を守る方が得意な人ですが……。今回の戦争中は無敵なので、大丈夫ですよ」

「戦争中は無敵?」

「無敵は言い過ぎですが、アマンダ君なら大丈夫です」


 何か、あるらしい。ただの精神論ではなく、能力的に強化されているってことなようだ。詳しく言わないのは、アマンダの個人情報であるからだろう。


「それよりも、ご自分のことを心配してください。あなただって、もう充分有名な冒険者ですよ?」

「? そう?」


 言われてみりゃ、そうなんだよな。色々な場所で活躍しているし、ウルムットの武闘大会では優勝もしている。バルボラでは艦隊潰しなんて呼ばれ始めているらしい。もう立派な有名人なのだ!


 結果的にレイドス王国の陰謀を潰したこともあるので、目を付けられてもおかしくはない。今後は、今まで以上に周辺に気を付けよう。


アニメイトタイムス様にて転剣のキャスト、スタッフさんのインタビュー記事が掲載されています。

現在は第4弾まで読むことができますので、よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ハイドマン一人にあの短剣が一つ……作るのに100人は犠牲にする短剣……一体、何人犠牲にしているんだ…… ハイドマンの本体からスキルテイカーしたらやはり中の人格さんたちを実体化できるん…
[良い点] 切り札の筈が、敵の一撃で瀕死になったばかりのクリムトが、アマンダは大丈夫と言い切る。 これは、少なくとも交戦状態のアマンダに、圧倒的な何かがあるからこそでしょうね。 例えば、子供の守護者…
[良い点] ストーリーが進むのは楽しいのですが、どうしても未完成の部分を思い出してしまうのです。 [気になる点] キアラを殺した犯人はゼロズリード/ゼノスリード/ゼロシードという名前なのか?フランか誰…
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