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1114 クリムト復活


 倒れたクリムトに慌てて駆け寄ると、右目から大量の血を流していた。眼球には魔法陣のような複雑な紋章が浮かんでいる。


 回復魔術をかけても、治らなかった。邪気による治りにくい傷とも違う。クリムトの肉体が、眼球の状態を異常であると認識していないようだった。クリムトを鑑定しても、状態は正常となっている。


「この目は、魔術では治りません、よ……」


 普通の精霊との契約では、魔力の貸し借りで対等の関係を結ぶ。だが、大精霊ともなれば一筋縄ではいかないらしい。


 今までは、荒れ狂う大精霊を無理矢理封じ込め、仮契約のような状態だった。だからこそ、召喚しても言うことを聞かないし、クリムトに大きな負担がかかっていたのだ。


 それを通常の契約に変更したらしいのだが、大精霊相手に対等の関係など願うことすら烏滸がましかった。


 そこで、右目を捧げることで、なんとか契約にこぎつけたのだという。


「クリムト、へいき?」

「なんとか……。この目は、大精霊との、契約の証ですから」


 クリムトはそう呟き、嬉し気に笑うのだった。彼にとっては、悲観するようなことではないようだ。


 それに、まともな契約に変わったことで、クリムトのステータスが元に戻っているという。それどころか、精霊の加護によって一部が強化されていたらしい。


 確かに、状態を確認するために鑑定した時に、その凄まじいステータスに驚いたのだ。



名称:クリムト  年齢:137歳

種族:ウッドエルフ

職業:大精霊使い

状態:平常

ステータス レベル:67

HP:27/280 MP:1616

腕力:137 体力:139 敏捷:188

知力:859 魔力:933 器用:148

スキル

詠唱短縮:Lv7、鑑定:Lv5、弓術:Lv3、採取:Lv5、樹木魔術:Lv6、気配察知:Lv4、気配遮断:Lv4、精霊魔術:Lv9、大地魔術:Lv6、調合:Lv5、土魔術:LvMax、毒耐性:Lv3、麻痺耐性:Lv4、魔力感知:Lv6、水魔術:Lv5、薬草知識:Lv7、料理:Lv4、視力強化、精霊制御、精霊の恩寵、聴覚強化、分割思考、森の子供

ユニークスキル

風の大精霊の加護、魔力統制

称号

ギルドマスター、アレッサの守護神、土術師、大精霊の友

装備

老桜樹の杖、分体創蛇の鱗服、若風竜翼の外套、月兎の跳靴、身代りの腕輪



 メチャクチャ強かった。


 精霊魔術も以前のように使うことが可能となり、目と引き換えに強大な力を手に入れたと言えるらしい。しかも、エルフにとっては信仰対象にすらなりえる大精霊と、繋がっている状態でもある。


 精霊使いにとって、右目程度で大精霊と契約できるのなら安い物であるようだ。


 気づくと、クリムトの右目から流れる血が止まっていた。眼球に刻まれた傷も塞がっている。ただ、視力は失われてしまったようだ。


 心配だが、クリムトは今までよりも余程元気な様子である。これなら安心だろうと、生存者の救出に向かおうとしたフランをクリムトが呼び止めた。


「フランさん、その剣は大丈夫なのですね?」


 あれだけ邪気を使ったからな、まともな剣ではないと気づかれたのだろう。


「ん。だいじょぶ」

「……ならいいのです」


 納得はしていないようだが、とりあえずフランの言葉を信じてくれたらしい。フランに改めて救助の指示を出すと、自分も精霊魔術を使い始めた。


『とりあえず、ウルシを呼ぼう』

(ん!)


 捕虜をウルスたちに引き渡しながら、フランが大精霊の中から飛んでいった謎の物体について質問する。回収すべきか、放っておいても構わないのか、判断できないからだ。


 ただ、クリムトもあれについてよく分かっていなかった。過去に召喚された際、儀式に使われた魔道具か何かの可能性が高いという。


 大精霊が気にしている様子なので一応回収してほしいと言われた俺たちは、落下した方角へと向かった。すると、怪しい気配を捉える。微かな魔力が、北へ向かって一直線に移動しているのだ。怪し過ぎる。気配を消したうえで上空から追うと、大地を走るアンデッドの姿があった。その手には、細い何かを抱えている。


(ハイドマン)

『やっぱ、まだ残っていたか!』


 ハイドマンが俺たちよりも先に回収していたらしい。ただ、そのせいで俺たちに発見されてしまったというわけだった。自分の気配は消せても、手に持った謎物体の魔力までは消せていないのだ。


 しばらく上空から観察していると、謎の棒をアイテム袋に仕舞おうとしているように見える。しかし、仕舞うことができないでいるようだった。


 アイテム袋に入らない、特殊な魔道具なのか? まあ、大精霊の中にあった物だし、何か秘めた力があるのかもしれない。


 そもそも、ハイドマンが回収しようとしていることからも、その特異性が分かる。下手すると、クリムトをどうこうするよりも、あの謎の棒が最終目的だった可能性すらあるだろう。


(あいつやっつけて、棒取り返す)

『そうだな』


 泳がせて、どこに向かうのか知りたいところだが、この様子だとレイドスまで行ってしまいそうだ。それに、町での救助活動も、クリムトだけでは手が足りないだろう。


 フランもそこまで考え、ここでハイドマンを倒す決断をしたのである。こっちのことはまだ気づかれていないうえ、あちらの戦闘力は低い。転移からの斬撃で、完勝であった。


 足を切断され、倒れ込むハイドマン。


「こむ、すめ……!」

「これが目的だったの?」

「ふん? 何のことだ? 知らん。精霊使いを殺し損ねたので、せめてこれを回収しようと考えただけだ」

「クリムトの暗殺がついでじゃなくて?」

「違うわ! これ以上の問答は不要!」


 そこで自爆装置を作動させようとしたために倒したが、虚言の理で色々と分かったぞ? どうやら、ハイドマンは最初からこの棒のような剣を狙っていたらしい。俺たちに回収されることは確実なので、自爆前に嘘の情報をすり込もうとしたんだろう。


 地面に転がっている謎の棒を鑑定すると、古びた棒剣と表示された。棒剣というのは、刃のない剣状の棒のことである。一見すると鞘に入っている細剣のようにも見えたが、実際は刃自体がなかったのだ。


 しかも、装飾がほとんどない、実用性重視の外見である。棒の部分も、金属の筒としか言いようがない。


 攻撃力は100で、伝導率はD。硬化、修復のスキルが付いていて、頑丈さ重視であるのは間違いないが……。ただ、どうもおかしかった。


 俺たちの渾身の突きを食らったんだぞ? 直撃しなかったとしても、あの勢いで弾き飛ばされたのであれば、相当な衝撃だったはずだ。しかも、かなりの勢いで地面に落下したのである。


 この程度の武器が、無傷でいられるわけがない。というか、修復が不能なレベルで砕けていないとおかしいのだ。


 それとも、性能を犠牲にしてでも、硬化、修復の能力を高めているのだろうか? しかも、次元収納に入らなかった。反発するような力が発生して、どうやっても収納できない。


 表示された情報や、感じられる力に対して、実物の性能が釣り合っていないって言うのかね? そこに、ハイドマンが狙う秘密がありそうだった。


「とりあえずクリムトに届ける」

『そうだな』

レビュー、ありがとうございます。

まさか、人生で初めて読んだ小説がこの作品とは……!

しかも、5年前に高校生? 自分のおっさんさに震えますね!

でも、若い方にも楽しんでいただけているということが分かって、とても嬉しいです。


フランのねんどろいどの発売が決定いたしました。

まだ少し先ですが、すでに予約が始まっているお店もあるようなので、興味がある方はぜひ!


ABEMA様にて、またまた無料視聴キャンペーン中です。

あと3日間は登録不要で全話見放題なので、サッカーの合間にどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 師匠の修理費用として大量の魔石を請求しよう
[一言] 棒剣···アッ(察し)
[一言] ステータス偽装でしょ。 ガルス氏の神眼か神級鍛治師に見てもらうのが手っ取り早そう。 時空魔術で収納できないのは生きてるからなのか。魔術抵抗の意志があるからなのか。道具として謎が多いけどを…
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