1107 暴れる者たち
「はは、豚が人を支配するとか、お笑いだよな?」
兵士長が、国への不満をぶっちゃける。
レイドス王国で洗脳教育が行われていることは間違いないが、全員がそれに従順というわけではないらしい。
「それに、最近うちの国で暴れてる奴らがいてな」
「暴れてる?」
「ああ。貴族の屋敷を襲って食料を奪っては、貧民街とかでばら撒くんだ。正直迷惑なんだが、話してみると面白い奴らでな……。そいつらが、クランゼル王国から来たらしい」
「どんな人?」
「半蟲人ばかりで構成された傭兵団だって言ってな。それと、なんか強い冒険者の爺さんが一緒だって話だ」
おい、それって……。
(ナイトハルトたち?)
『多分な』
どうやら、ナイトハルトもデミトリスも、レイドス王国内で好き勝手やっているらしい。
詳しく話を聞くと、やっていることは無茶苦茶だ。
強欲な貴族やその配下を襲うと言ったが、そのやり方がかなり強引なのだ。屋敷を正面から襲って警備兵を全員気絶させたり、演習中の部隊を襲って物資を奪ったりすることもあるようだ。
また、奴隷の解放運動のようなこともやっており、解放するために貴族を殺すような過激な行動すら取るという。
無理やり奴隷にされた昔の仲間を解放するため、所有権を手放さない登録者を殺しているんだろうな。
ナイトハルトたちは、捕らえられた昔の仲間を助けるためにクランゼル王国を裏切るほどの覚悟があるんだ。武力行使くらいは躊躇わないだろう。
フランの身に置き換えれば、闇奴隷にされた黒猫族を助けるためにだったらその程度はやるはずである。
貧民街で施しをしているというデミトリスは――よく分からん。あの爺さんなら、思い付きで何だって仕出かしそうなのだ。
ただ、ナイトハルトたちもデミトリスも、真面目に働いている者の命を奪うことはほとんどなく、この兵士長は2度ほど戦ったこともあるらしい。
「どっちも瞬殺されたがな。いや、殺されていないんだから、瞬気絶か?」
蟷螂人の男に意識を奪われ、逃げられたという。どう考えてもナイトハルトだろう。
食料強奪は老人が先頭に立っているということから、デミトリスが主導してるっぽいか? 悪徳貴族への制裁がデミトリスで、奴隷解放はナイトハルトと、部隊を分けているのかもしれない。
さらに捕虜たちから南征公の情報を得ようとしたんだが、彼らはそこまで詳しい情報を持ってはいなかった。本当に、捨て駒扱いだったんだろう。
内情と言っても、民の暮らしなどが分かった程度だ。アレッサを襲ったアンデッドについても、彼らは知らなかった。
ただ、近頃の南征公の領地ではアンデッドが様々な場面で用いられており、死霊術師も数が多いという。数千を超えるアンデッドを召喚できる者は多くないが、それでも2人は思い当たる人間がいるらしい。
「1人は、黒骸と呼ばれるアンデッドを使う部隊の人間だ。特にその第1席であるネームレスと言う魔術師は、かなりの腕前だと聞いたことがある」
レイドスの国内でも、黒骸兵団が死霊だけで構成された部隊であるとは周知されていないようだ。ネームレスも、死霊魔術を使う人間だと思われているらしい。
「もう1人は?」
「最近名を聞かぬが、オンスロートと呼ばれる魔術師が非常に有名だった。珍しい死霊魔術師というだけではなく、凄腕ともなれば自然と名が広まるからな」
「そいつは、今どうしてる?」
「分からない。去年から、急に姿が見えなくなったんだ……。ただ、黒い噂の絶えない人物で、復讐者に殺されたとか、国に雇われて汚れ仕事をしているとか、色々と言われていたな」
「黒い噂って?」
「アンデッドの配下を増やすために人を殺しているという噂や、邪神の信奉者だという噂もある。ああ、後は、実は怪物が人の皮を被っているとかいう噂もあったな」
要は、素行が悪すぎてあることないこと吹聴されるような人物ってことらしい。
『とりあえず、こいつらをアレッサに護送するか』
「ん。おい、今からお前らを町につれてく。痛いのが嫌なら逆らうな」
フラン! それじゃあまるでこっちが悪もんよ!
その後、俺たちは斥候も回収し、大地魔術師たちも縛り上げていく。斬った手足はちゃんと繋げたよ?
最大化したウルシの背に乗せて、一気にアレッサまで輸送した。悲鳴が聞こえたが、フランは無視である。ちょっと内情を喋ってもらったくらいで、レイドスへの敵愾心は消えないんだろう。
それでも、落ちないように気を使っていることから、この兵士たちへの悪感情は薄まったのかもしれない。
道中で、考える。
アレッサを囲んでいたあのアンデッドの軍団は、どこから湧いて出たのか? 大勢の死霊術師が結集して呼び出したとは思えない。国境を突破してくるのも一苦労だからだ。
では、高位の術者が1人でやった? それも変だ。大群ではあっても、町を落とせるレベルの戦力ではなかった。言ってしまえば、無駄攻めなのだ。
国境の戦力を少しでもクランゼル国内へ戻す目論見があったのかとも思ったが、それにも足りていなかった気がする。
今回捕らえた魔術師たちと連携をする様子もなく、本当に意味が分からないのだ。
そんな風に悩んでいると、アレッサが見えてくる。アンデッドが再び湧いてくるような様子はないし、少しは穏やかさを取り戻したかな?
俺がそう考えた直後であった。
ドン!
凄まじい衝撃音と共に、アレッサの町の貴族街の中心から、光の柱が立ち昇る。そして、同時に発生した衝撃波が、周辺の屋敷を吹き飛ばした。
ABEMA様にて、再び転剣見放題が始まりました。
プレミア会員じゃなくても無料で視聴できますので、この機会に是非!
レビューを複数いただきました。
1週間で読破! アニメ視聴からすぐ読破しちゃいましたという感想なんかも結構いただきます。
皆さま無理し過ぎですねwww
ギャグっぽいところを褒めて頂けることが珍しいので、嬉しいです。
ハイファンタジーで1番面白いとか、最高の誉め言葉頂きました!
戦闘シーンに力を入れていることは確かですが、それ以外の部分も手を抜いているわけじゃないので、そこが面白いと言っていただけると頑張ってよかったなと思えます。
フランに伴侶ができちゃったら、師匠はどうなっちゃうんですかねwww
アニメ後に読み始めて、既に2周とは! 凄いです!
イザリオがお気に入りですか。
私も書いていて楽しいキャラなんですが、映像化は……。
妄想で楽しんでいただくのがいいかもしれませんね。




