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1094 護送

 

 今度こそアレッサへ――そう考えていたフランなんだが、ロッカースで新たな依頼を受けてしまっていた。


 内容がデリクとサティアの護送だったので、断れなかったのである。


 騎士や兵士がロッカースに集まってきてはいたんだが、戦力的には心もとない。そこで、異名持ちのランクBであるフランに、白羽の矢が立ったのだ。


 普通なら王女の護衛に冒険者を頼ることなんてありえないんだろうが、領主代理がギルマスなうえ、クランゼルは冒険者の地位が高い。特に異名持ちともなれば、下手な騎士などよりも余程信用があるらしい。


 ウルシの輸送力もあるし、サティアとも知り合いともなれば、フラン以上の適任者もいないのだろう。


 アレッサの戦況が以前に比べてさらに有利になっているというのも、フランがこの依頼を受けた理由の1つである。


 北に展開するレイドス軍は、奇襲が失敗した情報を得て及び腰になっているようだ。本来はクランゼル王国を挟撃する予定だったのに、海上戦力も奇襲戦力も、壊滅してしまったしな。


 バルボラとダーズに損害は与えたが、それだけでは北の戦況にはあまり意味はない。自分たちだけで攻めるか、それとも退くのか、迷っているのかもしれなかった。


 すでにアレッサに集まったクランゼル軍の一部は、レイドス内へと踏み込むところまで進んでいる。それでもレイドス側は様子見を繰り返し、小規模な衝突が国境近辺で散発的に行われているだけだった。


 これなら、フランがアレッサに急ぐ必要はないだろう。


 むしろ、デリクとサティアを王都に連れていくことが、レイドスを追い詰めることになるかもしれない。大局的に見れば、それがアレッサへの援護になるのだ。まあ、これは、俺がフランに教えたことだけどさ。


「フランさん。よろしくお願いいたしますね」

「ん」


 サティアの背後に立つ下級悪魔が、拘束具で雁字搦めにされたデリクを抱えている。全身に巻かれた鎖は、魔道具だ。力を奪い、逃走を阻止するためのアイテムである。


 それ以外にも、目隠しや猿轡などが付けられていた。しかも、手足は失われたままだ。これは、癒す代わりに情報を喋れと交渉するために、あえてそのままにしているらしい。


 そんな酷い姿のデリクを背景に、和気あいあいとしゃべる少女2人。気になんないのか? スゲーな2人とも。出立を見送る冒険者や兵士は、結構ザワザワしてるのに。


「ウルシもよろしくね」

「オン!」


 大勢に見守られての出発となったが、そこから王都までの道のりは本当に快適であった。襲撃なども警戒していたんだが、さすがに空を往くウルシをどうこうできなかったらしい。


 むしろ、王都に着いてからの方が、危険かもしれなかった。


 王都からやや離れた場所で、準備を行う。巨大なままのウルシが出現したら、王都が大混乱になるからね。


 とは言え、ウルシが小さくなるだけなので、問題はない。フランは空中跳躍、サティアはロノウェに抱えられ、デリクは悪魔が担いでいるのだ。


 そのまま進むと、王都の門の前に数人の騎士が待っていた。正確な到着時間なんて分からないはずなのに……。デリクとサティアを移送する話が出てから、ずっと待機してたのか? 途中で寄り道とかしないでよかった。


「サティア様ですね?」

「はい。よろしくお願いいたします」

「はっ! それと、護衛のフラン殿と、その男が……」

「ん。レイドス王国の工作員」


 騎士たちの厳しい視線が、デリクに注がれる。戦争中であることで、レイドス人への感情がかなり悪くなっているのだろう。


「その男は、こちらへ」

「わかりました」


 デリクは、騎士たちが運んできた巨大な金属の箱へと入れられる。2メートル四方の大きな箱だ。


 魔法金属でできているうえ、魔術で強度を上昇させているのが分かった。しかも軽量化の術がかけられているらしく、騎士が2人で悠々と担げている。


 鉄の檻よりも、より相手を逃がしたくない場合に使うらしい。魔術やスキルがある世界では、これくらいやらなくては逃亡の恐れがあるってことなのだろう。


 その後、デリクは騎士たち10人ほどで運ばれていき、フランはサティアと共に馬車へと乗せられた。そりゃあ、王族を歩かせられんよな。


 向かう先は、当然ながら王城だ。


 サティアの護衛として振舞えばいいかと思ったけど、フランは貴重な証言者でもある。おまけ扱いではなかった。


 2人揃って王城の応接間のような場所へと通され、歓待を受ける。フランがお茶菓子を大量に腹へと収めた後、ようやく偉そうな人がやってきた。


 というか、偉い人だ。そこにいたのはベイルリーズ伯爵であった。ベルメリアの父親であり、王都を守る騎士団の団長であった人物である。娘が王都で暴れた責任を取って、何らかの処分を受けていたはずなんだが……。


 どうやら、未だに騎士団で高い地位にあるらしい。もしくは短期間で返り咲いたのかな?


「お初にお目にかかります。近衛騎士団所属、シドレ・ベイルリーズと申します。王女殿下の歓待、及び重要参考人の聴取を担当いたします」


 近衛騎士団所属! 団長じゃなくなっても、やはり重用されているようだ。


 フランとも面識があるし、こちらとしてもやりやすい。クランゼル王国側も、それを理解してベイルリーズ伯爵をこの役目に据えたのだろう。


 実際、そこからは非常にスムーズに話が進んでいた。


 サティアの口からフィリアースのやろうとしたことが語られ、フランがその時の状況や、その後にデリクから得た情報を語る。


「サティア殿下。我が国は、此度のことでフィリアース王国に対し賠償や謝罪を求めるつもりはございません」

「ですが、私たちは!」

「あなたがたが行おうとした証拠もございませんし、この時期にフィリアース王国と仲違いをする気もないのです。むしろ、友好を深めたい」


 つまり、全部不問にするから、フィリアース王国との仲を取り持てってことなんだろう。今のクランゼル王国にしたら、それが最も有難いはずだ。


 同盟相手を失う代わりに多少の金銭やら物資を得たところで、レイドス王国相手に確実に優位に立てるわけじゃないしな。


 サティアは罰を与えて欲しかったのかもしれないが、それは誰も得をしない選択だ。王族とは言え、まだ子供のサティアには納得しかねるようだけどね。


 道中で聞いたが、サティアもフルトも、悪魔と深い契約を交わすことで精神的に同化している部分があるらしい。それ故フィリアースの王族は、精神的な成熟が早いと言われるという。まあ、フランと比べたら一目瞭然だろう。


 それでも、完全に大人になった訳でもなければ、知識などが急に増える訳でもない。それ故、どこかちぐはぐな感じがするらしかった。大人っぽさと子供っぽさが同居しているって感じなのだ。


「今まで、フィリアース王国と明確な軍事同盟を組むことは避けてまいりました。ですが、今回は互いの結びつきをより強固なものにしたいと考えております」

「……わかりました。私にできることであれば、尽力させていただきます」


 レイドスを刺激しないように、浅い協力関係だったらしい。それを、サティアを間に挟んで、同盟まで持っていこうと考えたようだ。


 まあ、どちらの国にとっても、悪い話じゃないんじゃなかろうか?

アニメの毎話放送後、公式twitterにてその回のサイン入り台本をプレゼントするキャンペーンが行われております。

偽アカウントにお気を付けつつ、ぜひご応募ください。第1話の分に、まだ間に合う筈ですので。


もう、DVD、Blu-rayの予約が始まってるみたいですね。早いwww

各巻に30Pの書下ろし短編が付く予定ですので、よろしくお願いいたします。


ABC放送さんでの放送時間が、特別編成で変更になるようです。そちらでご視聴の方は、お気を付けください。

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― 新着の感想 ―
メテルマームの件って実話は微妙ですよね。 フィリアースに呪詛攻撃を仕掛けたのはクランゼルの村だから管理責任が発生すると思います。逆にレイドスに占領された土地をフィリアースが奪い取っただけ。人道的な問題…
[気になる点] シードランの王女達はバルボラに残留? それとも先に護送済みなのかな?
[良い点] すみません。 それでなくとも酔っ払いの長文なのに、書き忘れが…… アレッサのギルマスが反対する。 これは、国にとっては良い材料でもありますよね。 既存のランクA,Bだけだと危なっかしいの…
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