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1087 山竜の最期


 山竜の首の付け根目がけて、ガムドのドラゴンパニッシャーが振り下ろされる。


「どおおおおおりゃああぁぁぁ!」


 ゴウン!


 山竜の咆哮並みの爆音が響き渡り、ガムドが打ち上げ花火のように吹き飛ばされるのが見える。ドワーフ製の鎧が砕けて、ボロボロだ。あのまま地面に叩き付けられれば、さすがのガムドでもヤバいんじゃないか?


 助けるべきかどうか迷ったが、ディアスが走っていくのが見えた。これが初めてのことではないのだろうし、あっちはディアスに任せておけば何とかなるだろう。


 対する山竜も、酷い状態だ。


 首の付け根に深いクレーターが穿たれ、鱗と肉はおろか、骨まで抉れてしまっている。いくら生命力の高い竜とはいえ、笑って済ませられるダメージではないだろう。


「魔石、感じる!」

『おう! 再生する前に、ドカンとやってやれ!』

「ん!」


 大地に横倒しとなって呻く山竜に止めを刺すべく、フランが空を駆け下り、そのまま突貫した。


「ギョオオォォォ!」


 だが、山竜も、完全に無力化されているわけではない。力を振り絞って顔をこちらに向けると、咆哮を放ってきた。


 不可視の衝撃波がフランを襲う。だが、何かしてくることは、予想済みだ。


『どりゃああああ!』


 風魔術をぶつけて衝撃波を相殺しつつ、障壁を厚くして山竜の咆哮を突き抜けた。


『フラン! やれぇ!』

「ん! たぁぁぁ!」


 フランが渾身の突きを繰り出す。同時に俺は、その刀身を大きく伸ばしていた。


 強い魔力を内包した硬い肉を貫き、俺の刃は魔石を確かに捉える。俺の中に、大量の魔力が流れ込んでいた。


『とったぞぉぉぉぉぉ!』

「ギャアアアアアアアァァァァァッァッ!」


 間近で断末魔の咆哮に晒されたフランは、大きく弾き飛ばされてしまう。障壁を張っていたお陰でダメージは少ないが、油断していなくてよかったぜ。


 俺自身は、神属性と邪気征服の併用のせいで、かなり耐久値が減っている。耐久値の回復は遅々として進まない。併用は切り札として運用しないと、いつか痛い目を見るかもな。


 ただ、フランに声をかけるよりも先に、とんでもないことが起きていた。


《自己進化の効果が発動しました。自己進化ポイント100獲得》

『は?』


 ついさっき自己進化したばかりだぞ? つまり、この山竜1匹で、1000以上の魔石値だったってことか! さすが竜種だな!


 自己進化レベルはついに20に達している。


 やった! フラン! また自己進化したぞ!


 そう叫んだつもりだったのだが、俺の声はフランへは届かなかった。その前に、俺の精神は見覚えのある場所へと喚ばれていたのだ。


 精神世界なのか神域なのかは分からんが、フェンリルさんと対面する時に出現する白い空間だ。


 上下左右も分からない、無限に白だけが続くその空間で、俺はゆったりと揺蕩っている。もう慣れたもんなので、慌てたりはしない。


 どうせ向こうに戻った時は時間が経過してないしな。この興奮をすぐにでもフランと分かち合えないのは残念だが。


「よう。師匠」

『その声、フェンリルさん? 目覚めたのか?』

「起こされたってほうが正しいな」


 白い空間に、黒いナニかが現れる。それは、黒い狼だ。ウルシによく似ているが、より精悍で神々しい姿だ。


 そして、デカい。この場所でサイズなんて意味があるのかは分からんが、とにかくデカかった。今の俺は生前の姿であるが、眼球だけでも俺より大きい。


 足先から頭頂部までで、400~500メートルくらいはあるんじゃなかろうか?


 恐ろしさは微塵も感じない。突然現れたというのに、驚きすらなかった。この相手が、味方――いや、自分の半身であると理解できているからだろう。


 ただ、次に出現した方々には、驚かずにはいられなかったが。


 人とは思えぬほどに美しい、3人の女性。それは、銀月の女神、混沌の女神、冥府の女神であった。


「お久しぶりですね」

『は、はい』


 どういうことだ? 今まで、自己進化した時に、女神様が現れるなんてことなかった。確かに、区切りというか、きりのいい20というレベルではあるが……。


「おめでとう。あなたはやり遂げました」

『はい? えっと、やり遂げる?』

「はい。此度の成長により、我が眷属と、邪神の魂の分離がなされたのです。あなたには、深い感謝を」

「つまり、あなたは使命をやり遂げたっていう訳。よくやったわ!」

「この短期間で成すとは思っておらんかったぞ。よくぞここまで頑張ったのう」


 使命! そうそう使命ね! いや、忘れてないよ? ただ、ちょっと思い出すのに時間がかかっただけで!


「師匠……。まあ、いいが」

『フェンリルさん! 本当に忘れてたわけじゃないから! 日常になり過ぎて、意識してなかっただけなんよ!』

「ふははは! 分かってるさ! なんせ、ずっと見てたんだぞ? むしろ、頑張ってくれて、感謝しかない」

『な、ならいいけど』


 確かに、『絶対に使命を達成するぞ!』とは思っていなかった。でも、一緒に旅をしてきたフェンリルさんには元気になってほしいと、そう願っていたことは本当なのだ。


「それでは、使命を達成したあなたには、約束通り報酬を与えます」

『報酬……。え? 報酬って……』


 俺が使命を果たした場合に与えられる報酬って、確か――。


「あなたの魂を地球の輪廻に戻します」

「しかも、すこーしだけ力を与えてね」

「来世、お主は才能と幸運に恵まれた人生を送ることであろう」


アニメまであと1日!

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― 新着の感想 ―
ただの道具としていろんな使い手に渡るような感じだったら褒美になったろうけど、、ね
[一言] ・・・・・・え? いや、フランウルシを筆頭に、 大きく関わった連中は主人公が消えたら荒れるか鬱になるだろうから、 なんらかの対策があるんだろうけど (神なんだからそこまで考えなしってことはな…
[気になる点] ""魂を地球のサイクルに還す" "そして、ほんの少しの力を授ける" "来世では才能と幸運に恵まれた人生を送るのだ" それはご褒美というより罰のようなものだ!…
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