表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1088/1337

1086 竜殺し達


 同種の中では小型とは言え、他の竜に比べれば十分に大きい。そんな山竜に向かって、ディアスが一気に近寄った。


「グオオオォォォ!」

「召喚の影響かな? やる気だねぇ!」


 最初からこちらを敵だと認識しているのか、山竜は金色の目を細めてディアスを睨みつけている。


 相当な威圧感が叩きつけられているはずだが、ディアスはどこ吹く風だ。一直線に山竜へと駆け寄り、そのまま魔術を放つ。


「はっ!」

「ガァオォ?」


 弱い火魔術だ。まさかこれ程弱い攻撃が飛んでくると思っていなかったのか、山竜がキョトン顔をする。


 そして、すぐに怒りの表情をし始めた。おちょくられたとでも思ったのだろう。


「ガアアァァァ!」

「はははは! 当たらない当たらない!」

「ガアァッ! ガァォォ!」


 山竜がその太い前足をディアス目がけて叩き付けるが、危なげなくひらりと躱してみせる。そして、時には反撃を加えた。


 まあ、竜の幻影を浮かび上がらせて驚かせたり、巨大な音を竜の背後で鳴らすなどのこけおどしばかりだが。


 それでも、初見の山竜は面白いようにひっかかり、その度にディアスへの怒りを募らせているようだった。


 ディアスのタイミングの上手さと、思考誘導、視線誘導スキルのせいだろう。劇的な効果はなくとも、ディアスのような老獪な人間が使えば、竜でさえ翻弄できるらしい。


 5分近く、ディアスは巨大な竜をおちょくり続けただろうか? 一見余裕に思えるが、魔力の減りが危険な領域だ。あと5分は続けられないだろう。


 そんな中、何回攻撃しても当たらないことに業を煮やしたのか、山竜が大きく息を吸い込んだ。


「ルガアアアァァァァァ!」

「残念! それは幻影だ!」


 離れた場所のフランでさえ耳が痛くなるような、凄まじい咆哮が放たれる。山竜はブレスを放たない代わりに、その巨体を生かした破壊力抜群の咆哮を使うらしい。


 山竜の周辺では大地が大きく抉れ、その残骸が何百メートルも吹き飛ばされてくる。爆心地にいたディアスは完全に巻き込まれたように見えたが、それは本体ではなかった。


 幻像魔術で作ったダミーと、いつの間にか入れ替わっていたのである。本人は500メートル以上離れた場所で土の壁を作り、陰に隠れて咆哮をやり過ごしていた。


 俺たちでさえいつの間にと思ったくらいだ、山竜には訳が分からないだろう。


 だが、格下の羽虫にこれだけコケにされ、完全に激怒してしまったようだ。


 突進前の牛のように、前足で地面を数度掻く動作を見せる。実際、それは突進の合図であった。ドゴンドゴンと大地を揺らしながら、ディアス目がけて走りだす。


 山竜は翼がないため空は飛ばないが、四足走行が可能だった。その速度は、恐ろしく速い。というか、100メートル超えの山竜にとって、500メートル程度なんてすぐそこと言える距離だ。


 たった数歩で、ディアスの目の前へと迫っていた。城壁さえ一撃で破壊するというその突進で、ディアスを吹き飛ばそうというのだろう。


 ディアスがやや慌てた様子で逃げ出すが、山竜は驚くほど鋭い曲がりで、ディアスを追っていく。魔力を放出して、上手く巨体を曲がらせたようだ。


 だが、この状況こそがディアスの罠であった。焦っていたのも、演技だったらしい。ディアスがニヤリと底意地の悪そうな笑みを浮かべた直後、大地が弾けて大量の何かが飛び出してくる。


「万糸の縛陣!」

「ガアアアァァ?」


 その場所には、フェルムスが5分かけて準備した糸の陣が隠されていたのだ。その技名通り、万に迫る糸が竜の四肢に絡みつき、その動きを阻害する。


 竜種の中でも、上位のパワーを誇る山竜が相手だ。完全に拘束するのは無理なのだろう。糸があっという間に千切れていく。


 だが、無理やり曲がっている最中に足を絡めとられたのだ。致命的なバランス崩壊である。山竜は体勢を崩して横倒しになり、大地を削りながら転がった。


「ひょひょひょ! 凍えながら苦しむがよい!」


 追撃は、エイワースだ。


 山竜の足先と顔が、氷で覆われていく。顔の氷は、色が赤紫だった。毒も混ざっている特別製の氷なのだろう。


 さらに山竜の足元も凍り付き、まるで氷原のようになっていた。


 顔を毒と氷で塞がれたことで半ばパニックに陥った山竜は、とりあえず起き上がろうと体を起こす。そして、そのまま足を滑らせて再び倒れ込んだ。


「うひゃひゃひゃ! 若い個体は嵌めやすくてよいわ!」


 足元を凍らせた理由が、これか。足先の氷と足元の凍った地面のせいで、山竜はまともに立つことができずにいた。顔の氷によって視界も奪われており、気づけなかったんだろう。


 ならば、まずは顔の氷をどうにかしようと、山竜が足掻き始めるが――。


「嬢ちゃん! 俺が一撃入れた先に、魔石がある! そこにデカいのぶち込め!」

「ん!」


 山竜の隙を逃さず、ガムドが動き始めていた。その手に持つのは今まで使っていたハンマーではなく、先端が尖った殺意満々の巨槌だ。


名称:ドラゴンパニッシャー

攻撃力:1098 保有魔力:500 耐久値:10

魔力伝導率・B+

スキル:鱗貫通、爆発、一点集中、自爆


 めっちゃ強いけど、めっちゃピーキーな能力だな! ドラゴンの鱗さえ貫通するが、一回で壊れちまう使い捨て兵器。しかも、使用者に反動でダメージが入るらしい。


 頑丈なガムドじゃなければ使いこなせない、尖り過ぎた武器である。


「どおおおおおりゃああぁぁぁ!」


 魔道具を使って大きく跳び上がったガムドが、山竜の首の付け根にドラゴンパニッシャーを叩き付けた。


アニメまであと2日!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 舌が珍味なのに毒漬けにしちゃったら、フェルムスが怒りそう。
[良い点] 完全に竜相手に翻弄しまくってる爺さん4人。 若いころなら「竜狩りに行こうぜ!」のノリで軽く狩りにいってたんだろうな・・・。 [一言] 使い捨ての自爆武器とかいうロマン兵器。 魔石を吸収する…
[良い点] 何とも作業的な竜攻略……『廃人』って単語が頭に思い浮かびましたが、ここは出遅れじゃなくて転剣でしたね。 ロマン武器の威力の程と、ドラゴンの魔石から得られる収益の程が見られる明日を楽しみにし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ