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1073 フィリアースの理由


「僕はもう、助からん……かふっ」


 右向きに地面に横たわるフルトが、大量の血を吐き出す。ブネの顕現が解除されて人の姿に戻っても、背中のナイフはそのままだ。


「フルト! マキシマムヒール!」


 フランがフルトに治癒魔術を使うが、傷はほとんど治らない。ナイフからフルトに流れ込む呪詛が、回復を阻害しているようだ。


 しかし、フランは治癒を止めようとはしなかった。何度もマキシマムヒールを使う。


「もう、無理だ……フラン」

「無理じゃない!」


 フルトは驚くほど穏やかな顔だが、生命力と魔力が恐ろしい勢いで減少していく。


 鑑定するとフルトは、呪詛汚染という状態になっていた。初めて見るが、どう見ても穏やかな状態ではない。ナイフに付与された悪魔殺しという能力といい、どう考えてもフィリアースの悪魔使いを狙っているとしか思えない武器である。


 俺たちは解呪や解毒も試したが、効果はなかった。神属性を込めると僅かに効くのだが、完全解呪には至らない。術を使っている間、呪詛が流れ込む速度が半減するだけだ。


 フルトの生命力と魔力は、減り続けていた。


 悪魔殺しとか言っていたから、そのせいなのか? フルトの中から、命が零れ落ちていく。


「マキシマムヒール!」

「フラン、聞いてくれ」

「喋っちゃ、ダメ!」

「いいんだ……聞いてほしい」

「……ん」


 フルトが無理を押して、事情を語り出す。苦しそうだが、フランはもう止めようとしないし、フルトも止めるつもりはなさそうだった。


 そうして分かったことは、フィリアースもまたレイドスから攻撃を受けているということだった。


 ただ、武力による直接的な侵攻ではなく、大規模な儀式による呪詛魔術が使用されているという。大地を走る龍脈と呼ばれる魔力の流れを利用し、フィリアースの特定地域では生物が力を失うような呪いが蔓延しているそうだ。


 人は活力を失い、畑の実りは失われつつある。まだ初期段階だが、その被害は相当なものであるらしい。このまま放置すれば、国が傾く恐れがあった。


「その起点が、この村……だ」

「起点?」

「ああ……あれ、を……」


 フルトがブルブルと震える腕を何とか動かし、広場の中心を指さす。そこには、巨大な魔石が安置されている。


「あれが、人から力を、吸い……呪詛の術式を維持、している……」


 フルトたちが設置したものではなく、レイドスが設置した魔石だったのか!


 つまり、レイドス王国はここを制圧し、村人を生きた魔力電池として呪詛を発動した。だが、それを何らかの方法で察知したフィリアースに襲撃され、村の支配を奪われてしまったということか。


 最初はクランゼルの仕業だと思っていたようで、魔石を解析したことでレイドスの仕掛けたものだと分かったらしい。レイウスがクランゼルと聞いて襲い掛かってきたのも、そのせいだろう。クランゼルが敵だと考えていたのだ。


 それに、フルトたちがいたことも、レイウスが暴走気味にフランの排除に走った原因の一つであると思う。理由がどうあれ、王族が国境を侵しているというのを隠したかったのだ。


 フィリアース王国の外聞を守るためなら、冒険者1人の命くらいと考えても不思議ではなかった。


「フラン。逃げろ」

「?」


 息も絶え絶えのフルトが、フランの手を握りながら告げる。


「呪詛が、完全発動、する」

「完全発動したら、どうなる?」

「我が国も、この村も、ただでは……」


 フルトたちは呪詛の完全発動を阻止するため、悪魔の力で魔石を破壊しようと試みたらしい。しかし、彼らの力でも魔石には傷ひとつ付けることができなかった。


 さらに、村人と魔石は魔術的に繋がってしまっており、引き離しても魔力が流れ込むのは止められないという。


 広場に集めて逃亡されないように拘束していることから、どれだけ離れていてもいいってわけじゃないんだろう。ただ、村を出るくらいでは、魔石から逃れることはできないのだと思われた。


 フルトの口ぶりでは、もう間もなく発動するのだろう。村人を逃がす時間など、もうなさそうだ。


(師匠)

『だよなぁ』


 フランが、ただ逃げるわけがない。


 魔石へと向かって歩き出すと、その前で右手をかざした。だが、何も起こらない。


「む?」

『やっぱり収納できないか』


 どかせばいいと考え、次元収納を試したが無理だった。


「ふぬ!」

『どりゃああぁ!』

「……無理」

『だな』


 フランと俺で力を合わせて持ち上げようとしたが、ビクともしない。単に持ち上げられないほど重いということではなく、この場所に魔術的に固定されているようだった。


「なら……はぁ!」


 フランが魔石に対し、上段から斬撃を叩き付けた。それなりに鋭い一撃だ。しかし、魔石には傷一つ付かない。魔術だけではなく、物理攻撃にも高い防御力を誇るようだった。


 この感触、実は覚えがある。


『湖で、ゼライセが大魔獣を復活させるために設置していた魔石兵器を覚えているか?』

(ん。硬かった)

『あれと同じものだと思う。少なくとも、かなり近い方法で強化されているっぽい』


 魔力の流れが非常に似通っているし、匂いが同じだった。いや、俺は鼻がないんだけどさ。なんというか、加工者が同じ気がするのだ。


 俺の勘でしかないが、これにもゼライセが関わっている気がした。魔剣ゼライセが新たに作ったのか、死ぬ前にゼライセが作っていったのかまでは分からないが。


 ともかく、普通の方法でこれを破壊することは相当難しいだろう。まあ、俺たち以外だったら、だけどね。


 なんせ、俺たちは一度破壊に成功しているのだ。


(レイドス王国の思う通りにさせない)

『おう! ここには、魔石の天敵である俺がいるからな!』

「ん!」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] スタート地点はこの村..." "出発点?"  ハルトは震える腕をなんとか動かし、広場の中心を指差す。そこには巨大な魔石が祀られている。 "あれは人の力を吸い取る...呪いの魔法を維持し…
[気になる点] なんかこの話のタイトルの「ー」だけ罫線?になってる気がする……
[気になる点] 馬鹿なの?最初から話せよ。
2022/09/28 17:43 退会済み
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