表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1073/1337

1071 フランvsブネ

 悠長に悪魔を倒していられないと判断した俺は、自身の飾り紐を変形させ、フルトへ向かって伸ばした。本体を捕えて、黙らせる!


 サティアには、ウルシが向かっていた。


(師匠!)

『殺しはしない!』

(……ごめん)


 フランも、自分が煮え切らないことが歯がゆいのだろう。だが、俺は嬉しくさえあった。友達だから斬りたくない、戦いたくないというのは、人として当然の感情だ。


 戦闘という面だけを見れば弱くなったと言えるのかもしれないが、俺は間違いなく成長だと思う。


 それに、こういう時の相棒だ。


『フランができないことは、俺がやればいい。逆に、俺がやれないことは、フランが助けてくれ』

(ん。わかった)


 フランはコクリと頷くと、そのままブネに斬りかかった。悪魔の動きを封じて、俺を援護してくれるつもりなんだろう。


「みんな、できるだけ離れて!」


 フランの言葉を聞いた村人たちが、自力でこの場を離れ始めた。ただ、広場は木の防壁で囲まれているし、男たちは足も拘束されている。遠くへ行くことは無理だろう。それでも、少し離れてくれるだけで戦いやすくなるのだ。


 すでに剣神化は解けているし、俺も神気操作、邪気征服は使っていない。だが、フランはブネを圧倒していた。


 鎌を回避し、見えない念動を斬り裂き、悪魔の巨体を切り刻む。こいつも再生阻害が効かないのですぐ再生されてしまうが、足を再生中はさすがに動けない。まるで格下に指導をしてやるように、余裕を感じさせる。


 そして、悪魔の援護がないまま、俺の鋼糸がフルトへと殺到していた。


「くっ! くそ!」


 逃げようとするが、フルト自身のステータスは大したことがない。以前よりもレベルは上がっているが、下級冒険者とどっこいってところだろう。


 能力も、悪魔を操作するためのスキルに偏っているしな。俺の鋼糸がフルトの四肢に絡みつき、その動きを封じる。


 ブネはなんとかフルトを助けに向かいたいようだが、フランがそれを許さない。獣蟲の神の加護を使い、時おり神属性を纏った攻撃を繰り出してみせる。


 やはり、神属性なら悪魔にも通用するようだ。再生されない傷が、ブネに残っている。


 その結果、ブネは迂闊に隙を見せられなくなっていた。背を見せた瞬間、再生不可能な一撃を急所にぶち込まれるかもしれないからな。


『眠っとけ!』

「ぐがあぁぁ!」


 俺は、フルトを鋼糸で雁字搦めにしつつ、電撃を叩き込む。麻痺させて動きを封じるつもりだった。


 だが、フルトは麻痺しない。よく見ると、フルトの体の周囲に、黒い魔力が溢れだしていた。悪魔騎士の様に、自身に悪魔を憑依させているらしい。


 ブネ以外にも、悪魔を従えていたようだ。悪魔は種族特性として、魔法防御、状態異常耐性を高いレベルで備えている。その力を得たことで、俺の雷鳴魔術を防いでいるのだろう。出力を上げるか? だが、やり過ぎると殺してしまうかもしれない。


 ウルシの方も同じようで、なかなか拘束できずにいるようだ。暗黒魔術が無効化されてしまっている。


 ただ、ロノウェのことも封じていた。なんと、毒霧を食っているのだ。毒無効と捕食同化スキルが合わさることで、毒霧化したロノウェを食うことができているらしい。そのせいで迂闊に毒霧化できず、触手で攻撃している姿が見えた。だが、物理でのやり合いなら、ウルシが有利である。


 あれなら、俺はこちらに集中できそうだ。


『これでどうだ!』


 俺は魔力強奪、魔力吸収スキルを全力で使用した。これで、悪魔の魔力を吸い尽くして倒す。


 フルトの魔力が急激に減少していくのが分かった。俺に吸われているだけではなく、電撃への防御にも相当力を割いているからな。このままいけば、魔力枯渇でフルトの意識を奪えるかもしれない。


 だが、フルトもタダではやられなかった。このままでは何もせずに捕らえられると悟ったのだろう。

 

「我が、魔力を、捧ぐ……! 憑依せよぉぉ! ブネェェェェェ! ぐがああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

『これは……!』

「ウオォォオォ!」


 ブネの姿が消え去ったかと思うと、フルトの容姿が激変した。肌は褐色に染まり、髪は色を失ったかのように白く変色する。目は金に変化し、その腕や顔には赤い不可思議な文様が浮かび上がっていた。


 フルトの姿が影の中へと沈み込み、少し離れた場所に出現する。影転移だ。


「はぁはぁ……フラン、やるな! だが、負けられない! そう! 負けられないのだぁ!」


 フルトが咆哮を上げながら、突っ込んでくる。その速さは、今までのフルトでは考えられぬほどの速度が出ていた。


 その勢いのまま、右手の鎌の柄を叩き付けてくる。ブネの持っていた漆黒の鎌と同じものだろう。フルトのサイズになっているため、非常に小さい。しかし、その威力は、今の方が強かった。


 召喚されている状態よりも、フルトに憑依している状態の方が強いようだ。


「うおおおおおぉぉ!」

「むぅ!」

『念動の威力も上がってやがるな! だが、防げんほどじゃない。こっちは俺に任せろ!』

(ん!)

「馬鹿な……」


 フルトが驚いている。ブネを憑依状態にすれば、勝てると思っていたのだろう。だが、甘い。フルトたちと出会った頃のフランなら、確かに負けていたかもしれない。


 しかし、ゴルディシアで地獄を見た今の俺たちには、届かないぜ! フランには、未だに傷ひとつ付いていないのだ。


 このまま手足をぶった切って無力化してしまおうと思ったんだが、背後で異変が起きていた。


「キャイン!」


 ウルシが無数の触手に弾き飛ばされ、宙を舞う。


 サティアが、ロノウェと融合を果たしていた。最初が『召喚』で、フルトの状態が『憑依』。そして、最初の悪魔騎士や今のサティアの状態が、『顕現』なのだろう。


「あはははは! 我に逆らう駄獣がぁ! このまま剥製にしてくれようか!」

「グルル……」


 サティアではなく、ロノウェの言葉がその口から放たれていた。


転剣のコミカライズ最新話が公開されています。

原作とあわせてこちらもよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 石を吸収する剣があるのに、なぜ魔法石に照明を使うのですか?
[一言] 細かいことですけど ただ、ロノウェのことも封じていた。なんと、毒霧を食っているのだ。毒無効と捕食吸収スキルが合わさることで、毒霧化したロノウェを食うことができているらしい。 これ恐らく捕…
[一言] ウルシを駄犬呼ばわりした悪魔はとりあえず泣かす、話はそれからだ(笑)。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ