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1070 ブネとロノウェ


「フラン。見なかったことにして、退いてくれないか?」

「あなたと戦いたくありません。お願いです」

「……村の人たちを、何で殺す?」

「それは――」

「王子! 問答をしている時間などありませんぞ! 小娘! レイウスはどうした! 先ほどまで戦っていたのは貴様だろう?」

「風の悪魔なら、倒した」

「ぬぅぅ。悪魔を下賜されたての小童とはいえ、空ではそれなりに強いはず……。貴様の存在は、我が国のためにはならん! 排除する!」


 悪魔騎士が叫び、槍を構える。そして、ブネとロノウェも、身構えて戦闘態勢に移行していた。三体の悪魔に囲まれた状況だ。だが、フランに気圧された様子は全くない。


「フラン。投降しろ!」

「お願い!」

「……それで、村の人たち殺すのは諦める?」

「それは、できない」

「なら断る」


 フランがフルトの言葉を拒否した瞬間、悪魔騎士が魔術の詠唱を開始する。フルトとサティアはまだ戸惑っているが、悪魔は動き出していた。


「殺す!」

(ここで戦ったら、村の人がたくさん死ぬ。だから、戦いになる前に、勝つ!)

『了解! ウルシは王子たちの悪魔を!』

(ガル!)

「閃華迅雷、剣神化、黒雷神爪!」


 フランはスキルを使用しながら一気に前に出た。フランの体から黒い稲妻が溢れ出し、その肉体が残像を残すほどの加速を見せる。今のフランには、周囲が止まって見えるだろう。


 俺も、一瞬に最大をかけるため、全力を注ぐ。


『大魔法使い、神気操作、邪気征服……!』


 俺の内側から、魔力と邪気が湧き上がる。邪気にも、大分慣れてきたな。以前のように寒気に襲われることもなく、俺は引き出した力を混ぜ合わせ、刀身へと纏わせた。


 神気と邪気、黒雷が混ざり合い、何とも言えぬ禍々しい力が俺を包み込む。刃が削られ、刀身がすり減っていく感覚が確かにあった。


 実際、耐久値は凄まじい勢いで減少している。だが、強い。それは間違いなかった。


 悪魔騎士の放った火炎魔術も、一振りで弾け飛ぶ。火花のように舞い散る炎の残滓を掻き分けながら、フランが悪魔騎士へと肉薄した。


「それは――」

「はぁぁ!」


 突如としてフランから吹き上がったとんでもない力に、悪魔騎士が目を見開いて呻く。それでも反応して槍を突き出してくるのはさすがだが、そんな咄嗟の攻撃が当たるはずもない。


 悪魔騎士が槍を突き出すのとほぼ同時に、その体が袈裟掛けに斬られていた。


 フランがその脇を神速で通り抜けてから数瞬、遅れて悪魔騎士の体がズルリとズレて上半身が地面へ落ちる。


「油断、すべきでは、なか……」

「テワズ!」


 悪魔の力を解放される前に、倒す。これが悪魔騎士必勝法だろう。まあ、素の状態でも十分強い悪魔騎士を、瞬殺するだけの攻撃力が必要になるがな。


 これでもう、話し合いの道は断たれただろう。悪魔騎士の名前を呼んで呆然としている王子を尻目に、フランは足を止めることなく次の目標へと走った。


 狙うのは王子たちの本体ではなく、彼らの使役する悪魔だ。


(まずはこっち!)

『ロノウェって方だな!』

(ん!)


 フランが斬りかかったのは、手近にいた女性型悪魔、ロノウェであった。


 ウルシは牽制として、フルトとサティアに向けて弱い死毒魔術を放っている。それを、ブネは自らの体を盾として防いだが、ロノウェはその場を動かず腕を長い触手に変形させて防いでいた。


 それを見て、放置して厄介なのはロノウェであると判断したのだろう。


 その神速であっという間に懐に入ると、俺をその脚部へと叩き込む。背が高すぎて、胴体も届かないのだ。


 必殺の斬撃によってロノウェの足が切断され、その体が――。


『なに?』

「けほっ」


 斬れてない! 体が煙状に変化したことで、すり抜けただけだ! しかも、フランの顔に紫の斑点が浮かび上がっていた。


 毒である。ロノウェはその肉体を毒霧に変化させることが可能であるらしい。道中のレイドス兵を殺した毒は、ロノウェのものだったのだろう。


 恐ろしいのは、フランの状態異常耐性を突破したうえで、猛毒を与えてきたという点だ。フランはほんの僅かしかロノウェの毒を吸ってはいないはずである。


 それでこの威力とは……。まあ、毒がくると分かっていれば、対策はできる。操毒スキルで俺が吸収してしまってもいいし、治癒魔術で簡単に治すことも可能だ。フランだけは、であるが。


 もしロノウェが毒を使って村人を虐殺しようとすれば、回復が間に合うか怪しい。ますますもって、ロノウェを先に仕留めなくてはならなくなったのだ。


 ただ、その前に一つ、試してみないとならないことがある。俺は雷鳴魔術をできる限り収束させ、放った。


 狙ったのは、広場の中央にある魔石だ。明らかに、何か意味がありそうだしな。竜相手でさえダメージを与えられるほどの雷の弾丸が、魔石を直撃する。


 だが、何も起こらなかった。あの魔石。ただ硬いだけではなく魔術的な防壁で守られているようだ。まさか、微動だにすらしないとは思わなかった。


「無駄だ。壊せぬ」

「フルト! サティア! 何があった?」

「……フラン、もう1度聞く。退いては、くれぬか?」

「退かない」

「……サティアは毒を使え! 僕がフランを抑えている内に!」

「わかりましたわ!」


 フルトとブネがフランを引きつけ、ロノウェの毒で人々を殺す作戦だ。何があっても村人たちを全滅させなくてはならないという、断固たる決意を感じる。


「くっ! させない!」

「フオオオォォォォォ!」


 フランが数度斬撃を放つが、ロノウェは既にその全身を毒霧と化していた。


『ならこうだ!』

「フオォアァァァォォッ!」


 毒霧になっている最中、火炎魔術や雷鳴魔術への耐性が低下しているらしい。周辺の霧を焼き焦がすと、ロノウェが再び姿を現して悲鳴を上げた。


「ブネ! やれ!」

『フラン! うしろだぁ!』

「ウオオォオォォ!」


 ブネの姿が消え、フランの背後に現れる。影転移だ。その巨体が振るう大鎌の柄を何とか弾いたフランだったが、すぐに背後へと吹き飛ばされてしまう。


『念動? 気を付けろ! かなり強い!』

(わかった!)


 ブネはかなり強力な念動を使えるらしい。俺が気づいて念動をぶつけたんだが、弱めることしかできなかった。


「うぎぃぃぃ……」

「あああぁ……」


 まずい! ロノウェの毒が村人を! 咄嗟に解毒魔術をばら撒いたが、何とか間に合ったらしい。


「もう解毒したというの?」


 フランが一瞬で解毒魔術を使ったと思い、サティアが驚愕しているな。ただ、このままではいずれ村人に被害が出る。こうなれば仕方がない!


『ウルシ! サティア本人を攻撃しろ! 殺すなよ! 俺がフルトをやる!』

(オン!)


 速攻で片づけるには、本体を黙らせるしかないのだ。


アニメの放映まで約1ヶ月となりました。

OPが『岸田教団&THE明星ロケッツ』さん。EDが『黒崎真音』さんという超豪華布陣です。

公開中のPV第2弾で少しだけ聞くことができるので、ぜひ再生してみてください。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 石を吸収する剣があるのに、なぜ魔法石に照明を使うのですか?
[気になる点]  魔石についてはレイドスとフィリアースどちらが持ち込んだものかで、村人を害す理由が大分変りそうだなぁ。師匠の集束カンナカムイでもビクともしない魔術防御とは一体魔力の源泉はどこからなのか…
[一言] 自国の民を犠牲に切り札を切るならまだしも他国の民を犠牲にしようという外道に落ちたならどんな理由があろうと未遂だろうと国に捕まれば処断されるな…… 出来れば今回の一撃でまとめて3体まとめて屠…
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