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1046 優雅な船旅?

前話をいつもと違う時間に更新してしまいましたので、まだお読みでない方はそちらからお願いいたします。


 ゴルディシア出航の翌日。


 フランは早速甲板で寛いでいた。ウルシを丁度いいサイズに変形させ、長椅子代わりに寝そべる。ウルシも、フランを乗せてジッとするのが得意になってきたのだ。


 フランはその状態でフルーツジュースを取り出して、ストローでチューチュー吸う。至福の表情だ。因みに、ストローはプラスチックそっくりな素材が使われている。魔獣素材があるおかげで、意外と地球と変わらないレベルのアイテムが存在しているんだよね。


 ゴルディシア大陸であったことを報告するため、ちゃんと書面にしてほしいと言われているんだが……。まあ、船旅はまだ続くし、報告書を書くのは明日以降で間に合うだろう。


「いい風」

「オン」


 船足が速い大型船であるため、甲板にはちょうどいい強さの風が常に吹いている。ウルシの長い毛がファッサーっと撫でつけられ、強風ポメラニアン並みに毛が舞い踊っていた。


 そこに全身を埋めるフランは、本当に気持ちよさげだ。巨大なモフモフ生物に埋もれて、ジュースを飲みながらダラダラとする。


 時折くしゃみが出てしまうのが難点だが、そこに目を瞑れば全子供たちの夢が詰まっているだろう。


(師匠)

『なんだ?』

(パンケーキ食べたい)

『こ、ここでか?』

(ん。ダメ?)


 さらに子供の夢を積んできたか!


 ゴルディシアでは激戦続きだったし、この程度のお願い可愛いもんだ。俺は収納からパンケーキを取り出すと、フランに手渡してやった。


 決して、フランのおねだりの可愛さにやられたわけじゃないぞ?


(ふおぉ。クリームメガ盛り!)

『ふっふっふ。クリームの中にはお楽しみが隠れてるぞ!』

(お楽しみ?)


 カットフルーツが入ってるだけだが、こういうお遊びが喜ばれるのである。実際、クリームをつつくフランは楽しそうだ。


「果物!」

『お、見つけたか』

「もぐもぐ。おいしい」


 フォークで刺した果物を高々と掲げ、そのまま口に放り込むフラン。口の周りがクリームでベッタベタだ。あと、ウルシの毛も。


「クゥン」

『フラン、ウルシの毛がクリームで凄いことになってるんだけど』

「ん?」


 あーあー、フランが動くたびにクリームが余計に……。しかも風で飛び散って、結構な範囲に白い斑点が付いてしまっている。


 普通に拭くだけじゃ落ちないだろうな。確実に丸洗いが必要だ。


「……海にドボンすれば落ちる」

「クゥン!」

『海水だと後で毛がバリバリになるから! 水魔術で洗ってやろう。な? ほら、小型化すればすぐに洗い終わるし!』

「わかった。ウルシ、ちっちゃくなる」

「オン!」


 ウルシが小型化した場合、装備品にはサイズ調整機能が備わっているが、汚れはそのままである。絡みついた大量のクリームや、毛の奥に絡まったホコリなどは普通に残ったままだ。


 つまり俺たちの目の前で、白いクリームと黒い汚れが全身に張り付いた、超汚い小型犬が爆誕したのであった。


 周辺には、小さな小石なんかも散らばる。地面の上だと意識しないんだけど、甲板だとウルシから落ちる汚れがメチャクチャ目立つな。


 ゴルディシア大陸でも簡易的なお風呂にはしっかり入ってたんだけど、この巨体だしね。ちょっと動けばすぐに汚れてしまうのだ。


 ウルシがボトムレスシャドウを使用して、周囲のゴミを即消し去る。なるほど、この術にこんな使い方が。


「じゃ、洗うよ?」

「オン!」

「ザババー」


 そうやってウルシを綺麗にしていると、フランの動きが不意に止まった。首だけを動かし、海の方を見つめる。ただ、水は出したままだから、ウルシが凄いことになってるよ?


「ガボッ……ガボボ!」

「魔獣くる」

「ゲヘゲバ!」


 そろそろ水を止めたげて! 魔獣がきたのは俺も分かってるから!


 強制滝行から解放されて、ブルブルと体を震わせて水を飛ばしているウルシ。フランはちゃっかり距離を取って、船べりから海面を見下ろしている。


『くるぞ』

「ん!」


 海面へと浮かんできたのは、直径2メートルほどの巨大なウニであった。名前はジャンピング・シーアーチン。跳躍、針生成、吸血というスキルがある。


 飛びかかって刺さったら、そのまま血を吸って殺すということなんだろう。


 あの魔石、ほしいな。異世界転生サバイバルもので定番の、吸血スキルで肉の血抜きができるじゃないか!


 甲板で船員が動き出すが、その時にはすでにフランが飛び出していた。


 ジャンピング・シーアーチンの魔力を捕捉し、その居場所を探る。全部で20匹くらいの群かな?


『フラン。雷鳴魔術じゃなくて、氷雪魔術で倒そう』

(なんで? 雷の方が、簡単)


 激戦を潜り抜けてきた経験により、雷鳴魔術が水を伝って周囲にもダメージを与えるということをしっかり理解しているのだろう。フランが首を傾げる。


 だが、使えない重大な理由があるのだ。


『熱を与えると、身が劣化するかもしれん』

(あれ、食べれる?)

『ああ。ウニだし、美味いみたいだぞ』

(! 分かった、氷雪魔術で倒す!)


 今晩の食卓には、ウニ尽くしが並びそうだな。苦手な人がいるけど、フランは――。


「ウニ……食べたことない。じゅるり」


 フランなら大丈夫だな。


次回は11日更新とさせてください。その後は通常通りに戻せる予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 吸血のスキルHP回復的な需要かと思いきや料理の下拵え的な意味だったw しかし、モンスターの襲撃があったのに空気は日常ってのがこの世界の物騒さとフランたちの成長が忍ばれる
[良い点] ウルシwwww
[良い点] あー日常って素敵 癒される
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