第1話 日常と異常
こんにちは。
とりあえず、4話くらいまで投稿して、そこから続きを書いていきたいと思ってます。
そこまでストックないので……
教師が授業を始めた。
つまらない授業だ。逆に面白い授業が何かがわかんないや。
僕は後ろから二番目の窓側だ。透桃はその隣に座っている。
僕の学力については『平均より少し上』程度で苦手でも得意でもない。特徴がなんともないのだ。
ノートとかもちゃんと取ってるし、なんの問題もない。これには理由がある。
横の透桃だ。透桃は本当に世話がやける奴で、全然ノートを取ろうとかしないのだ。これは彼女の『めんどくさい精神』からだろう。だから僕のノートをいつも見せてあげている。
透桃は「ごめんね〜いつもありがとね〜」とかる〜く感謝はしてくるが髪ボッサボサのダッサダサの透桃に言われてもなんとも思わない。というかもう少し感謝しろ。なんで僕の周りは僕がやって当たり前とばかり思ってるんだろう。そういうところもつまらないのだ。
「…?」
何かを感じた気がした。
気のせいだろうか。ま、どうでもいい。
ふと右の透桃を見ると熱心にノートを取っている…のではなく、熱心に絵を描いているようだ。いつもの光景だ。
絵を描くことは、透桃の趣味の一つだ。小学生時代とかで描いてた記憶はないのだが、オタクの道を歩みだした中学時代から絵を描きだした。
特に誰にも習ったわけでもなく、最初からうまかったわけではなかったのだが、今は相当な画力になっていてここは透桃に感心する。ものすごい顔で集中して描いている。
…ものすごい顔っていうのは真顔だ。
顔文字で(・_・)とか('-')で表すそのままのような顔をしている。
透桃は『これが私の戦いだ…』とか厨二臭い事を言っていた。
しかし、なんともその腕前は凄い。シャーペン一本でなんでそこまで描けるんだろう。アニメキャラと思われる女の子を軽いタッチで描いていた。
そういえば、なんで絵を描きだしたのかも、オタクになったかと同じようによく分からない。特に美術系統が好きなわけでもなかった気がするのだが…
あ、もう一つ僕が授業中にする事がある。
これも透桃のためだが、授業中、絶対に教師という存在は教室を回る。まわりだしたら透桃に合図を出すというものだ。
と、言っても咳払いするだけなんだけどね。
それを聞くとすぐに透桃はノートを写し始める。
これでいつも先生にバレないようにしてあげている。前は先生が来たらすぐにバレていた。それで透桃が『おねがいぃい…来そうになったら教えてくれぇ〜…』と泣きついてきた。
やらなきゃいい話じゃねえかよと突っ込んだのだが、他にも内職してるやつはいるし、透桃の事だから説得しても無駄だろうと判断して仕方なくやっている。これも一応感謝はしてくれてるらしい。
キーンコーンカーンコーン…
あ、チャイムがなった。トイレを済ませておこう。
「…」
和音はトイレに向かっているが、先程から違和感を感じていた。
前から視線を感じることはあったのだが、それにしても…
タッタッタッタ…
今は体育の授業だ。こんな春に持久走をやらされている。
男女混合で走っているが、僕は運動神経も平均より少し上くらいだ。
なんて特徴がない人間なんだか。
体育の授業となると脚光を浴びるのは透桃だ。陸上部とかと普通にいい勝負をするのだから。
あんなにやる気なさげに、本気で走ってなさそうなのに。
本気出したらどうなるんだろ。
てか本気出せよ…
僕は集団に紛れてゴールした。悪くない。
ずっと前にゴールしていた透桃が「和音ぇ…お前男だろ?私より速く走れ…」
「無茶を言うなよ、お前陸上部以外で一位のくせに。」
苦笑してしまう。本当に無茶苦茶なやつだ。
昔はもっと本格的にやってたんだから、その運動神経生かせばいいのに。
体育が終わったらいつもする事がある。透桃の服装を整える事だ。
言っての通り、ダサダサでファッションなど全く気にしない奴なので、だらしない格好をしてくる。それを整えるのが日課だ。「ブラウスちゃんと来てきてよ…」「うー…」
なんかこういうのすると周りに見られるから嫌なんだけどなぁ。
男が女の服いじったら色々ダメだろ…
一応、俺だって男なんだから、そういう思考だってあるんだぞといつも思う。こいつに興奮なんかはしないけど。
———そんな二人を見つめる影が一つあった。
ガタンゴトン…
学校が終わって下校中だ。
いつもなら準急に乗って帰るのだが、「眠いから普通にしてくれないか?すまん。」と透桃が言い出したので、各駅停車の普通に乗ってゆっくり25分くらいかけて戻っている。
透桃はコテッと寝てしまった。
気持ち良さそうに寝ている。昨日は寝てないんだろうなと思った。
「んんっ…」
コテっと僕の肩に頭が乗っかった。
なんだこの漫画にありそうなベタな展開は。なんで全然ドキドキしないんだろ。つまらん。
そんなことをしていたら最寄りの守森駅についた。
透桃を起こして電車をおりる。
「今日も行くのか?」
「うむ、”リガシエ”いこ。お菓子を食いながらあそこで喋るのは落ち着くじゃん。」
「はいはい。」
前にも言ったと思うが”リガシエ”はカフェ リガロ デル シエロ の事だ。
母が勤めているのだが、うちの母は結構気を使ってくれているらしくいないのだ。
あと、人もあんまりこない隠れ家的喫茶店なので、居心地がいいのだ。
駅から家までは5分とかからないのだが、その
少し路地に入った所にリガシエがある。
カランカラン…軽く扉のベルがなる。俺のベルではない。
「…なんだろうねぇ…いつの間にかお兄ちゃんに素直になれなくなって…なんか引っ込みつかなくなっちゃったって言うか…」
中に鈴音がいた。何か喋っているようだが聞こえなかった。
鈴音もたまに来るらしい。最近見てなかったんだけどね。
「あら、いらっしゃい。ちょっと遅かったんじゃないの?」
そう微笑みながら話してきたのがここ”リガシエ”のオーナーさんの紅月空さんだ。好とほぼ同い年で昔からお世話になっている。これまた、自由な人だ。
「うわぁああ!?お兄ちゃん!?」
めちゃくちゃ驚いてこっちを見てきていた鈴音。
「透桃が寝たいって言い出して各駅で帰ってたんでね。」
「…もう帰ってると思ってたのにぃ…」
鈴音がなんか言ってるが何も聞こえなかった。
“リガシエ”のメニューを開く。
普通の喫茶店っていうのは、コーヒーをメインに、アメリカンコーヒーとか、カフェオレとか、キリマンジャロとかで、食べ物はサンドイッチとか、フレンチトーストとかが通常なのだが、空さんも自由な人なので、そのメニューの加えて、普通の食べ物もある。
カレーライス、カレーうどん、冷やしぶっかけうどん、ビビンバ、カツ丼…
なんだこれって感じなのだが。
非常に自由なメニューだ。
お菓子も置いててくれていて、子供の時からずっと変わらない。
お菓子をつまみながら、雑談をする。
「そういえば、さっき描いていた絵ができたよ!」
自慢げに絵を見せてくる透桃。
めちゃくちゃ綺麗で上手い。やはり、透桃が好きなアニメのキャラだった。
「さすがだなぁ…まぁ授業中に描いたやつだけどな。」
「なっ…なんだ!暇な時間の有効活用!!」
「お前は描くほうがメインになってるじゃないか…ちゃんと授業受けてくれ。」
鈴音がひょこっと顔を出してきて、
「お兄ちゃんだって、前、思いっきり宿題やってたから人のこと言えないじゃん。」
「あっ…」
「あらあら、上手いじゃないのさすがねぇ…えらいえらい。」
空さんが透桃をよしよししている。
この優しい微笑み。これが僕らを安心させてくれているのかもしれない。
「あ、お母さんから伝言ね。」
空さんからメモをもらう。
『買い物ごめんだけど行ってくださいね。 よしみ』
下に買うものが並んでいた。
仕事が忙しいからこういうことはよくある。
「よし、じゃあ行ってくるわ。」
「あら、早いのね。行ってらっしゃい〜」
「気をつけてねー」
2人に軽く送られながら、僕はリガシエを出た。
和音は、さっさと書いてあるもの入れていく。
「…??」
また視線を感じた。やっぱりおかしいなと思いながらレジへと向かい、買い物を済ませた。
買い物を終えると、その視線の事を考えていた。
前から感じたことはあったが今日は多すぎる。なんなんだろうと考えていた。
「…!」
まただ。なんなんだろう。
そう考えていたその時。
信号は赤だった。
和音はドンッと何か硬いものに当たり、体が吹っ飛ぶ感覚を最後に記憶を失った。
トラックに轢かれてしまったのだ。
どこのアニメだよ…
あ〜つまらない人生だったなぁ…
そう思いながら、眼を閉じた。
ここまでは序章って感じでしょうか。
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