2人の鉄ちゃん、現る
「……ぉぃ、……おい! おい! 鐵夫! 起きろよ!」
「……ん? 何だよ、人が気持ち良く寝てたのに……」
「何言ってんだよ! 電車行っちまったじゃねーか!」
僕が事態を把握するには数十秒かかった。事態を把握すると身の毛がよだつような感触に襲われた。
「まずいっ!!! 今何時?」
「今、22時30分だよ……。 終電も終わっちまった……」
僕を無理矢理起こしてきたのは親友の鉄也。
小学校の頃からの幼馴染で家も近くて、2人とも「鉄道」という共通の趣味があり意気投合して約7年の付き合いになる。
そんな鉄也と僕は昨日から仙台へ来ていた。もちろん電車旅である。
電車好きの僕だったが、昨日からずっと電車に乗り続けていたので乗り疲れてしまい、ほんの一息つこうとホームのベンチに座ったのだが、それがいけなかった……。
時計を見ると1時間も眠ってしまっていた。
今の自分の現在地がどこなのか分からなくなってしまったので、取り敢えず周りを見渡すと駅名表示板があった。
「く ろ い そ」
平仮名でそう書かれていた。
今日中に家に着かなければ明日もまた学校がある。しかし、もう終電は終わってしまった。どうしようもない、それが現実だった。
「なんでもっと早く起こしてくれなかったんだよ!」
「は? 黒磯で降りて貨物見るって言い出したのお前だろ! 俺のせいにするなよ!」
「それは悪かったよ……。でも、僕が寝てる時は何してたのさ!」
「そりゃあ……、撮り鉄してたんだよ」
「……ごめんよ。僕が悪かった」
撮り鉄と乗り鉄。それが僕らの旅の最大の目的だっただけに僕は何も言えなくなってしまった。
「取り敢えず駅から出よう……。駅員が早く出ろってうるさいから」
「うん」
少し不機嫌そうな鉄也からの提案に僕は従うしかなかった。電車が無くなってしまった以上、駅にいても仕方がないので僕らは渋々と駅の改札に向かって歩を進めた。