□自演乙!! 5 (Re:パチンカスから始める異世界転生転生 #02)
『異世界転生』世界への転生なのでタイトルが
『Re:パチンカスから始める異世界転生転生』に変わりました。
依頼がぱったり来なくなったので、やっぱり連載が始まったっ!
『思っていた転生とは勝手が違って参った。』
どういうわけだか、一度読んだだけのWEB小説。『七鍵守護者の救世譚』の転生後の初めの一文が頭に浮かぶ。
そりゃ、思ってたのとは違うわな。
テンプレ転生ものにもいろんなスタートがあるんだから。
物心つきだしてから、前世の記憶がよみがえるものから、生まれた瞬間から記憶があるもの。
ふと気が付いたら母乳を吸っていたとかいうのもインパクト的には十分だ。
どちらかというと母乳スタートが良かったんだが。
それも出来れば若くてきれいな母親で。
『七鍵~』の場合は確か胎児スタートだったはずだ。胎内で退屈な時間を相当過ごす。
体を動かすのもままならない。呼吸というものと無縁の不思議な経験。
俺も原作に倣って、ぼんやりと思考が出来るようになったときに自分が胎児であることを悟った。どう考えても胎内にいるもん。
転生するという予感をもって始まったからそういう風に思えたけれど。
トラックに轢かれて……とかトラクターで……とかだったらここが死後の世界だと思ってしまっただろう。
それくらいに温かくて心地よい。
原作主人公は、戦闘能力に秀でて現実世界でも魔法が使えた設定だから、胎内で魔力の使用をすべきか否かみたいな葛藤も抱いていたようだったけれど。
俺としては、ごくごく普通のパチンカス。
たまに喧嘩に巻き込まれるぐらいで魔法の魔の字も知らない。
ただ、退屈に、生まれ出るのを待っていた。
そして無事に生まれた。久しぶりの眩しい光。
お約束の尻尾の生えた侍女のいないという硬派な世界観で、母乳を吸うことも叶わず。哺乳瓶からミルクを与えられて、世話をされて育っていく。
自由に体が動かないのがいまいましい。だが、ここで体中の細胞――この世界の万物は精霊という物質で出来ているらしいのだがまあ似たようなもんだろう――を制御するための努力を惜しまないことで、将来的に優れた身体能力を持つ人間に育って行けるだろう。
出来る限りバタバタと手足を動かす。後は眠気に任せて寝るだけの生活。
やがて、視力も徐々に成長し、ぼんやりと異世界の言葉がわかり始める。
原作の知識が多少なりともあったことも大きいかも知れない。
俺は平民でも貴族でもないのだ。ハルバリデュス王国の王子として生まれたはずだ。
だから、突然連れ出され、大勢の人の前で。
その大勢の人達が万歳万歳と叫ぶのを聞いても驚かなかった。
それはなんというか規定事項なのだから。
俺はトール王子として生まれ、ルートとして成長していく。
俺の転生譚はまだまだ始まったばかりだ。
元の世界には帰れるんだろうか?
俺が座っていたパチンコ台(はまり台)はもう別の誰かが打っているんだろうか?
そしてオオアタリを引いているんだろうか?
何故だかそんなどうでもいいことばかり考えていた。
続くかどうかは神のみぞしるっ!