□自演乙!! 3 (Re:パチンカスから始める異世界転生)
二次創作です。と言っても自作なので問題ありません。
■あらすじ
パーラーコンチェルトの常連客、蕗石三郎太は、すごいパチンカスであった。
※鰤/牙先生ごめんなさい。
■プロットというか作品スタンスというかそんなの
パチンコ中に異世界転生。そのパチンコ台はアニメ化もされたWEB小説が原作の人気台。
ルート・ハルバリデュスとして生まれ変わった三郎太は、パチンコの演出情報だけを頼りに、異世界を生き抜いていく。
あの人気作(?)『七鍵守護者の英雄譚』を舞台にした異世界ストーリーが今始まる!
都合よくダイジェストを挟みながら。
元ネタ(わりとテソプレ)では、いまいち動かしにくかったルート君を別の人間に演じさせながら。
あわよくば、原作を追い越して第二部とかまでもこっちで進めちゃえ!
ってな感じのコンセプト。
三郎太は大阪弁のおっさん。クズマさんよりもクズ。
書籍化の歳にはナイトアンドマジックみたいにキャラ変させられるでしょうか?
人生のターニングポイントになる瞬間にはパチンコ台のリーチ演出的な状況になり、外れるとRE:ゼロみたいに少し前からやり直しということになる。
原作のストーリーから大きく外れることはないが、多少パラレルワールド的な状況になる。
面倒な事態が起こると、ダイジェストっぽくキングクリムゾンで逃げる。
なんかMFに応募したくなってきた……
(まあ、パチンコという題材を選んだ時点で商業的には負けのような気はするんですけどね)
異世界転生(パチンコ台)世界への異世界転生って珍しくありません?
と思って『パチンコ 異世界』で検索したら(3/4 18:00現在)4作品あったよ。
マイナス34K。現在までの収支。
釘は甘い。
よくまわるが、いかんせん当たらない。
『七鍵守護者の救世譚』
朝一で整理券の列に並びゲットした新台は、この店では昨日導入されたばかり。
全国的にもリリースからまだ数日しかたっていない新台中の新台だ。
ちなみに、『K』というのはパチンカー、やスロッター(パチスロする人)が好んで使う単位。単に1000円を表す。
つまりは、10時からたった数時間で3万4千円負けたことになる。
昨日の勝ち分の12Kなんてあっという間に吸い込まれてしまった。
確率的にはそろそろ当たってもおかしくないが……。
というか、そろそろ来てくれないと資金が尽きる。
浪速のクズパチンカー(いわゆるパチンカス)の俺はヒキニートでこそないが、ギャンブルで金を失わないだけニートの方がましかもしれない社会の底辺層である。
名は、蕗石三郎太。どこぞのWEB小説の主人公と字面は似ているが、俺の両親はコンツェルンなんてものは俺に残してくれなかった。
ただ、雨風を凌げるだけの住まいとわずかな貯蓄を残して早死にしてしまった。
その貯蓄をあっという間に使い切り、遺跡の発掘作業なんていう日雇いのバイトをしながら食いつなぎ、毎夜毎夜飲み歩いている親不孝者が俺だ。
無理やりに共通点を引っ張り出すのなら、俺が良く来るこのパチンコ屋の名前がパーラーコンツェルトというくらい。
流れる銀玉を見ながら考える。
『わりとテンプレ』だったか『テソプレ』だったか。
まだこの台の原作がネットで公開されてここまで人気が出る前に。
一度だけ、始めの数話だけ読んだことがあった。
が、どうにも主人公の煮え切らない性格が好みに合わず読むのを止めてしまったという記憶がある。
学園編でつまずき、冒険者編でエタりかけ。
数年のブランクを経ながらコツコツと連載しているうちに、作者が別の作品で賞を獲ったとか。
そんな風の噂(2ch情報)は聞いていたが。
受賞作がヒットに恵まれず、背水の陣で過去の作品から引っ張ってきたのだこの『七鍵守護者の救世譚』だったという。
それが、またたくまに大ヒット。ついにアニメ化され果てはパチンコ台にまでなってしまった。
人間何があるかわからないもんだ。
昔俺も同じサイトで小説を投稿していたことがある。
残念ながら……というか、当然のごとく……というか。
その作品は数多いライバルたちに埋もれて日の目をみなかったが。
ついたお気に入り読者は最高で2件。それもほんとに読んでくれているのか、続きを愉しみにしてくれているのか疑心暗鬼にかられ、結局3話ほど書いて書くのをやめちまった。
いわゆる読専になったが、あのサイトからも足が遠のいている。
同じ時期に作品を投稿していた人間で、かたや国民的人気(とまではいかないがある程度人気)アニメの原作にまでなった作品もあれば、俺のようにど底辺で終わってしまった人間もいる。
俺に文才があればまた違った人生が後れていたかもしれないが。
カネなし、彼女なし、リア充爆発を日々願うパチンカス。
三十歳も目前に迫っている。
クズの頂点に立ちかねない俺だが、一発逆転の目は諦めていない。
異世界への転生。あるいはトリップ。
人生やりなおし。
それを望んでハローワークにも行ってみた。
道でトラック(あるいはトラクター)に轢かれかけている幼女が居ないか常に注意している。(まあ、おったところで実際に目にしたら足がすくんで動かれへんやろうけど)
だが現実は甘くない。
それでも希望は捨てていない。
今俺が打っているこの台、『CR七鍵守護者の救世譚』には、奇妙な噂が流れている。
プログラム上では組み込まれていないはずのプレミアム演出が存在するというのだ。
その名も冥王討伐スペシャルリーチ。もちろん全回転だ。
全回転リーチというのは3つある画面上の数字(絵柄)が一斉に回った状態でリーチが発生するというもの。
通常は二つの絵柄が先に止まってその絵柄がそろった時に初めてリーチになるのだから、そのプレミア感と期待度は、いわずもがなだろう。
もちろん、プレミアムリーチで当たったからと言って結局は確率変動(次回のオオアタリがほぼ約束される)。
次のアタリで確変(確率変動)を引かなければ、オオアタリ二回分の出玉しかないために金銭的に大逆転が狙えるわけではない。
今日既に負けている3万幾らも取り返せない。
もちろんパチンコで人生を変えるような大金を手にすることは不可能だ。
裏カジノの超一発台でもあれば別だが。
話を戻すと、冥王討伐演出。その全回転リーチ。
噂はされているが、眉唾なのは原作がまだ完結前でそこまで話が進んでいないというのがひとつ。
そして、もうひとつ。その演出を自らの手で引き起こしたものには、異世界への扉が開くという。
隣の台で打っていた客が叫びだしたと思ったら消えていたというつぶやきがここ数日SNSをにぎわしている。
もちろん、頭から信じているわけじゃない。
だが、それを期待してしまっている俺が居る。
無職、職歴といえばバイトのみ。
日々の飲み代にも困る俺にはこの世界に未練なんてこれっぽっちもないのだから。
台の画面に目を戻す。
3つある保留アイコンの中にひとつだけ先読み予告アイコンがあった。
保留や先読みについて詳しくない奴はネットででも調べてくれ。
と置いてきぼりを食らわすのは不親切か?
要はパチンコというのはスタートチャッカーと呼ばれる穴に玉を入れる遊戯だ。
チャッカーに玉が入ればデジタルが回り出す。
回ったデジタルは通常は数百分の一の確率で絵柄が三つそろうのだが、いかんせんその確率は低い。
また、玉が入ってデジタルが回ってというサイクルを一発一発繰り返していたのではテンポも効率も悪い。店の儲けにもつながらない。
だから、機種によって違うが4~8発ぐらいはデジタルを回す権利を溜めておける。それが保留玉という。
1発目が入り、デジタルが回り始め、それが停止するまえにもう一発の玉が入れば保留が1になる。それが画面上で保留アイコンとしてあらわされる。
どうでもいいが、その保留アイコンはリーチやアタリの期待が持てる特殊な絵柄に変わることもある。
それが、いわゆる保留先読み機能だ。
とはいっても、ほとんどはリーチになって煽るだけ煽って置いて結局は外れることが多い。
でも……、この保留アイコン……。
黄色っぽいが……、いつもの黄色と色合いが違うような。
パチンコ界(そしてパチスロ界)でも、共通の色の認識として、青は一番期待度が低く、その次に黄色、緑、赤という順に期待度が上がっていくというお約束がある。
黄色だったら、それほど期待できない(というかほとんどは外れる)が、金色だったら。
ほとんどは鉄板。あるいは激熱。
オオアタリの期待値は6割を軽く超えてくる。機種によってはほぼ100%だ。
そして……、デジタルが回り始める。
ステップアップ演出が始まる。
ステップ1。
ベルさんがなにやら捲し立てる。
これで終わればリーチにすらならないことの方が多い。
ステップ2。
画面に現れたのはプラシ。
ここでやっとリーチが確定。
ステップ3。
アリシアが登場する。
ロングリーチ確定! だがまだ期待はできない。
ステップ4。
ファーチャだ。ちなみにこのステップ4には2パターンある。
ファーチャだけで終わる場合とファシリアまで登場するケース。
前者だと次のステップへ進む可能性も低く、オオアタリの期待度は2~3割程度だろうが、後者の場合はステップ5へ続く公算が高い。
ファシリアが画面に表れてファーチャと言い争いを始める。
そして二人が手を取って……。
えっ? そんな予告は無かったはずだ。
まさか?
画面にはルート・ハルバートのアップがカットインされる。
ルートが登場するのはステップ5の激熱演出だが……!!
この台の演出は冒険篇の序盤までのはずだ。
ファーチャもファシリアもまだ10歳。
ルートの右にはファーチャが、左にはファシリアが。ともに……幼い顔つきではなく、16~17歳ぐらいに成長している。
そして、画面に3列ある絵柄はゆっくりと回り始めた。
111……222……333…………777。
3つの絵柄がそろった状態で……。
画面にうっすらと冥王? らしきもののシルエットが浮かび上がる。
プ……、プレミアム演出……。め、冥王討伐?
まさか、初日で引くなんて……。
そこで意識が途切れた……。
死んだ? 気を失った?
それとも……異世界への……………………?
んなわけあるかいっ!
とこの時はまだそう考えていた。
次話は、ルート(三郎太)が生まれるところです。
えっ? あるの? 次話? ……まさか……ね……