病棟AB
病棟AB
AB病棟4階。暗い廊下。リノリウムの床は非常灯を鈍く反射する。
オレンジ色の廊下はぼやけた緑を受け、気味の悪い色を周囲に見せる。
そしてそれがいくら気味悪くとも、この廊下を歩く人間は、一人しかいない。
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9号室に灯りがともる。
「ちぃちゃんちぃちゃん遊びましょ?」
呼びかける先に、人はいない。
「なんだ、まだ4時ね」
時計は4時を差し、止まったまま。
「それじゃあひとりであそびましょう」
ベッドを下りた少女は、スリッパに足を通す。
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エレベーターの表示がともる。
扉が開きエサを待つ。
もちろん中に、人はいない。
「なんだ、もう4時ね」
時計は4時を差し、止まったまま。
「あの子はそろそろ眠るころ?」
銀色持った少女は、箱の中へと足を踏みだす。
-=- -=-
ふわふわ散ってく
白い闇の中に奥に
転がる青い炎は
また一回り小さくなった
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ひゅるひらり流れる
緑の廊下に咲いた
黄色く白い花は
栄養だけ撒いて落ちた
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9号室の空気がゆれる。
「ちぃちゃんちぃちゃんどうしたの?」
呼びかける先に人はいない。
「そろそろご飯のじかんね」
机は花が枯れ、止まったまま。
「いいこにするけどにんじん嫌い」
フォークを投げた少女は、オレンジから目をそむける。
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向かいのベッドのシーツがたわむ。
モップが滑りエサを喰う。
もちろん中に、ヒトはいない。
「そろそろご飯もおわりね」
机は銀色が寝、止まったまま。
「魚は嫌いじゃないけどじゃあね」
真っ白染まる少女は、オレンジへと目を向ける。
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ぽつぽつ死んでく
黒い霧の中に奥に
倒れる赤い氷は
また一つ部屋を埋めた
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しゃあしゅるり流れる
緑の横で延びた
黄色くピンクの滝は
岩の上舐めて埋めた
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どろどろ消えてく
暗い暗い中に奥に
歩める少女は笑う
また一つ部屋を消した
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ざんばらり弾ける
真っ赤なカーテン走る
黄色と黒のバーコード
病棟ABには響く
はい次の方をどうぞ
ハチさんの病棟305号室を聞いて