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【続編】婚約破棄されたら、なぜか各国の王子から求婚が殺到しました!? ~反逆者呼ばわりされた令嬢、実は各国の恩人でした!!!~

作者: しろ
掲載日:2026/07/29

 三人の王子が言い争う声で、大講堂はすっかり収拾がつかなくなっていた。わたくしが仲裁の言葉を挟もうとした、その矢先――


「――待たれよ!!!」


 四度目の扉が、これ以上ないほど盛大な音を立てて開かれた。


「ノルデンス王国、第四王子フェリクスだ! 噂を聞いて馳せ参じた!」


「……あら。あなたには覚えがないようだけれど? 恩義もなく殴り込んでいらしたのね」


 わたくしが率直な感想を述べると、フェリクスは胸を張って堂々と頷いた。


「ハッハー!! その通り! 恩義など知らぬが、面白そうな話を聞いたら黙っていられぬ性分でな!」


「随分と正直でいらっしゃること」


「クラリス嬢、単刀直入に申し上げよう! 私と結婚してくれないか!」


 会場が一瞬、完全な沈黙に包まれた。カイン、ダミアン、リアムの三人が、揃って呆気に取られた顔をしている。


「――あの、殿下.......順番というものがございますのよ.......?」


「順番など知らぬ! 気になったら即行動、これが我が国の家訓だ!」


「家訓に婚姻の話まで含まれておりますの?」


「含まれる! しかし、私は乗馬も剣術も得意だ、が恋文は書いたことがないんだ! どう口説けばいいかぜひ教えてほしい!」


「求婚しながら口説き方を尋ねるのは、順序が随分と逆さまでしてよ.....?」


 わたくしが呆れながら指摘すると、カインが額を押さえてため息をついた。


「フェリクス殿、貴殿は状況を分かっているのか? 我々はそれぞれ、クラリス嬢に受けた恩があってこの場にいるのだが.......」


「恩などなくとも、気持ちがあれば十分だろう!」


「理屈は分かるがいささか唐突すぎるようなーー」


「唐突さこそ我が武器だ!」


「その武器、鞘に収める気は.....?」


「ハッハー!! 随分と面白いことを聞くな? 答えはもちろん、なしだ! 迷っている暇があれば行動する、それが我が家の教えだ!」


 胸を張って言い放つフェリクスに、わたくしはとうとう笑いを堪えきれなくなった。断罪の場から求婚合戦になり、今度はマイペースな乱入者まで加わって、収拾のつく気配が一向にない。


「ちなみに、フェリクス殿下。求婚の前に、まずはご自身の国について、少しはご紹介いただけまして?」


「おお、良い質問だ! ノルデンスは馬と酒が自慢の国でな、私も三日三晩馬に乗り続けたことがある!」


「それは殿方として、あまり魅力的な説明になっていないですわね......」


「なっていないのか? てっきり体力自慢は好印象だと思っていたのだが」


「体力よりも、まずは常識をお持ちかどうかの方が気になりますわ」


 歯に衣着せぬ物言いに、周囲からくすくすと笑い声が漏れる。フェリクスは特に気にした様子もなく、むしろ楽しそうに頷いていた。


 ---


「皆様、少し落ち着いてくださいませ。このままでは埒が明きませんもの」


 わたくしが扇を鳴らして注意を引くと、ようやく四人が口を噤んだ。


「まず、恩義があろうとなかろうと、求婚は等しく一つの意思表示ですわ。フェリクス殿下のなさりようは礼儀を欠いておりますけれど、勢いだけは評価して差し上げます」


「おお、寛大な判断、感謝する!」


「評価しただけで、了承したわけではございませんことよ?」


「うっ……なるほど、道は険しいらしいな......」


 素直に肩を落とすフェリクスの様子に、リアムがくつくつと笑い始めた。


「フェリクス殿、貴殿の姿勢はいっそ清々しい。少なくとも、駆け引きを知らぬ分、裏表がないのは分かったぞ」


「褒められている気がしないが、悪い気もしないな!」


 朗らかに笑うフェリクスを前に、これまで格式張った言葉を並べていたカインやダミアンまでもが、少しずつ肩の力を抜いていくのが分かった。妙な男だが、場の空気を和らげる才能だけは本物らしい。


「そういえば、フェリクス殿下。恩義もなくいらしたということは、噂だけを頼りにここまでいらしたのかしら?」


「その通りだ! 隣国で『反逆罪で断罪された令嬢の裏に、三カ国の恩人という真実があった』という話を耳にしてな、いても立ってもいられず馬を飛ばしてきた!」


「それは随分と気の早いことですこと」


「“善は急げ、恋も急げ!”、が我が家訓でな!!」


「先ほどの家訓とは微妙に内容が違う気がいたしますけれど」


「細かいことは気にするな!」


 堂々と開き直るフェリクスに、わたくしはとうとう扇で口元を覆いながら笑ってしまった。


 ---


 そんな騒がしいやり取りの最中、蚊帳の外に追いやられていたアルフレッドが、ふらりと前に進み出た。


「く、クラリス。少し頭を冷やして考えたのだが、やはり私たちの婚約、なかったことにしようというのは早計だったのではないかとーーー」


「……殿下、それは復縁を望んでいらっしゃるという意味でして?」


「そ、その通りだ.....! 改めて、婚約を続けてほしい.....!」


 図々しいにもほどがある発言に、会場が再びざわめいた。真っ先に反応したのはカインである。


「アルフレッド殿、証拠もなく断罪しておいて都合が悪くなった途端に復縁とは、いささか虫が良すぎるのではないか?」


「わたしも同意見だ。恩人を反逆者呼ばわりした男に、易々と譲る気は毛頭ない」


 ダミアンまでもが冷ややかに切り捨てる。


「そうだそうだ! クラリス嬢があまりにも美しいがために、是非とも嫁として迎入れたいのはわかる。だが、私だってお前みたいな往生際の悪い男に負けるつもりはないぞ!」


 なぜかフェリクスまで便乗して声を張り上げるので、わたくしは思わず吹き出してしまった。


「殿下、恥の上塗りはそのくらいになさいませ。皆様が仰る通り、証拠もなく切り捨てておいて、旗色が悪くなった途端の前言撤回など、都合が良すぎますわ」


「そ、それは……」


「それに、今この状況で復縁を申し出るということは、殿下ご自身、わたくしを国際情勢のために利用したいだけなのではなくて?」


 図星を突かれたらしいアルフレッドは、みるみる顔を青くして黙り込んだ。国王への報告一つで、彼の立場がさらに悪化することは想像に難くない。


「殿下、そもそも先ほどまで反逆者と罵っていた相手に、掌を返して求婚まがいの発言をなさるとは、我が国であれば失笑どころでは済みませんぞ」


 カインが追い打ちをかけると、ダミアンも重ねて頷いた。


「一貫性のない振る舞いは、国の代表としても致命的だ。この場にいる誰もが、殿下の判断力を疑う結果になっただろうな」


「そ、そこまで言わずとも……!」


「言わせているのは殿下ご自身の行動ですわよ?」


 わたくしが淡々と付け加えると、アルフレッドは反論の余地もなく肩を落とした。


「あら、殿下は蚊帳の外がお似合いのようですわね」


 にこりと微笑んでやると、四人の王子たちがそろって満足げに頷いた。奇妙な連帯感である。


 ---


「――というわけで、求婚のお返事は、今しばらくお待ちいただきますわ。皆様それぞれの誠意を、じっくり拝見させていただきますもの」


 わたくしがそう締めくくると、四人は揃って深々と一礼した。


「クラリス嬢、首を長くして待たせていただこう」


「私も、次にお会いする時までには贈り物の一つでも用意しておこう」


「私は、今度こそ正式な恋文というものを書いてみせる! 誰か代筆を頼めないものだろうか.....?」


「それでは誠意が半分になりますわよ? フェリクス殿下........」


「た、確かに! よし、やっぱり自分で書こう!」


 素直に前言を撤回するフェリクスに、周囲から温かい笑いが漏れた。誠に憎めない男である。


 意気込む三人を横目に、リアムだけが静かに微笑んでいた。


「私は、焦らず貴女のペースに合わせよう。それが一番、貴女らしい選び方だと思うのでね?」


 思いがけず落ち着いた言葉に、わたくしは少しだけ驚いて彼を見つめた。


「あら、案外女性の扱い方がお上手でいらっしゃるのね?」


「褒め言葉として受け取っておこう」


「その余裕、いつまで保てるか楽しみですわ」


「貴女に試される分には、悪くない気分だ」


 穏やかに笑うリアムに、わたくしはふっと肩の力を抜いた。四者四様の求婚者たちを前にして、これほど賑やかな夜を過ごすことになるとは、断罪される前には想像もしていなかった。


 夜会の喧騒がまだ収まらない中、わたくしは小さく息をついた。断罪から始まった夜は、四カ国を巻き込む騒動へと発展し、いよいよ収拾のつかない様相を呈している。


 ――もっとも、こんなにも賑やかな日々は、悪くないと思い始めている自分がいることも、否定はできなかった。


 そしてこの騒動が、まだ見ぬ第五、第六の求婚者を呼び寄せることになるとは、この時のわたくしは、まだ知る由もなかったのである......

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


 もし少しでもニヤッとしたり、続きが気になったりしていただけましたら評価ポイントとブックマークをいただけると、次の話を書く一番の励みになります!


「フェリクスのキャラ好き」「アルフレッドをもっと追い詰めて」などの感想コメントもお待ちしております!


第五、第六の求婚者が誰になるのか、そしてクラリスが最終的に誰を選ぶのか、まだまだ書きたいことがございます。よろしければ作者フォローもしていただけると幸いです!


それでは、また次のお話でお会いしましょう!!!

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