第61話 女の子たちと夏休み? 8月15日~8月20日
Rewriteの発売が楽しみでしょうがなかったのにも関らずうちのPCのビデオカードが2.0以上でなくできないということがわかりました…はぁ…
Rewriteやるためにいくらかけなきゃいけないんだよ…
とりあえず冬なのに怖い話を載せてみました。
ちゃんと読んでね?
夕食を食べ終えた俺たちはだらだら駄弁っていた。
そんなとき会長が唐突にこんなことを言い出した。
「肝試しをやりましょう!」
うわ……またなんかめんどくさそうなイベントが……
「肝試しはちょっと……」
「優里ちゃん怖いの!?」
「そ……そんなこと……!」
「じゃあ決定ね」
しまった……口車に乗せられた……
「(ねえ亮……)」
俺(優里)が話しかけてくる。
「(私お化けとか苦手……)」
「(俺の身体で驚いてなんか変な行動にでたら困るな……)」
「(どうしよう……)」
「とりあえず怖い話でもしましょう!」
勝手に話が進んでいく。
電気を消して真ん中にろうそくを一本だけ置く。
なんか雰囲気でるな……
とりあえず優里(俺)は俺(優里)に抱きついておく。
これでなんも変な行動は起さないだろ……
「優里なにやってるの?」
円が少し怒ったように聞いてくる。
「な……なんでもないわよ……」
「亮君もそれでいいの?」
「まあいいんじゃないか?」
「むぅ……じゃあ私も!」
円が俺(優里)に抱きつく。
「まあはじめましょうか」
「では私から」
そう言って杏奈が声のトーンを落とす。
「実はこれ本当にあった話なんだけど……
最初に気付いたのは散らかった部屋を、僕の彼女が片付けてくれた時だった。
僕は物を片付けるのが苦手で、一人暮らしをしている狭いアパートはごみ袋やら、色々な小物で埋め尽くされていて、結構な状態だったから。
といってもテレビで出てくるほどのゴミ屋敷ってわけでもなくて、ちゃんと足の踏み場はあるし、掃除だってほどほどにはしているつもりだ。
けど、やっぱり男の一人暮らしは散らかってしまうもので。
結果的に時々アパートに来てくれる彼女が片付けてくれている。
その日も同じように彼女が来てくれて、部屋の掃除を始めてくれた。
僕も彼女と反対側の掃除を始めて、本やら小物を要る物どうかを判断したりして、だんだん部屋が片付いてきた時。
彼女がそれに気付いたんだ。
「ねぇ……」
彼女が指差した雑誌やらビデオテープやらで隠れていたコンセントの中から、かなり長い髪の毛が一本、垂れ下がっていた。
「これ誰の髪の毛よ」
僕の友達は男友達ばかりだって事を知ってる彼女は、ぼくを疑いの目で見た。
僕の髪は短いし、でも彼女の髪もこれほど長くない。
けど僕にだって彼女以外の女性を部屋に入れた記憶はなかった。
あまりにも彼女が僕を疑いの目で見るので、僕はコンセントから出ている髪の毛を掴むとスルスルとそれを引き出した。
プツン。
嫌な感触に僕は思わずその手を離した。
まるで、本当に人の頭皮から髪の毛を抜いたような、リアルな感触。
長い髪の毛が掃除された床に異端者のように舞い落ちて、隙間風に揺らめいた。
思わず僕はコンセントの穴を覗き込んだけれど、その先は真っ暗闇で、何一つ見えなかった。
翌日の朝。僕は青ざめていた。
思い出せば昨日はコンセントの事などすっかり忘れて、僕はあの後彼女とカラオケで遊び、そこで飲んだ酒のせいか、僕は帰ってきたとたんに死んだようにだっぷりと眠っていた。
目覚めたときには電車のギリギリの時間、僕は飛び起きると寝ぼけ眼で、大学の準備をしようと放り出してあったカバンを取り上げた。
その時、ちょうど目線に入ってきたコンセント。
真っ暗な二つの穴の一つから長い髪の毛がまた、だらりと力なさげに垂れていたんだ。
昨日引き抜いたはずの髪の毛。
長さから見ても同じ人物のようだった。
まるで何かの触手のようにコンセントから伸びているそれがとても気持ち悪くなり、僕はそれを急いで引き抜いた。
プツリ。
またあのリアルな感触。
「気色悪い……」
僕はそう呟くと、その穴に使っていなかったラジカセのコンセントを押し入れ、引き抜いた髪の毛を窓から捨てると、荷物を持って部屋を後にした。
髪の毛は風に乗って、何処かへ飛んでいった気がした。
それからラジカセが大きかった事もあってか、僕はまたコンセントの事など存在すら忘れて普通の日々を過ごしていた。
部屋はまた散らかりだし、布団の横には漫画が山積みになっていて、また彼女が来ないかな、などと思いながら空いたスペースをホウキで掃くぐらい、ごみ箱はもういっぱいで、僕は集めたゴミをゴミ袋の中に直接捨てた。
あれから一ヶ月は経った時だったろうか。
ついに、それは僕に降りかかった。
<ガ・・・・・ガガ・・・・ガガ・・・ガガガ・・・>
夜中に突然鳴り出した音に、僕の安眠はぷっつりと閉じられた。
「あ・・・・う・・?」
苦しそうな声を上げて電気をつけると、放置していたラジカセからビリビリと何か奇妙な音が流れていた。
山積みになった漫画の更に裏にあったはずのラジカセが見える、変に思ってよく見ると、積んであったはずの本は崩れて、周りにころがっている。
まさか、ラジカセの音で崩れるはずは、とも思ったが……それしか浮かばない。
<ガガ・・ガガガ・・・>
ラジカセはまだ壊れたように妙な音を発していて、僕はその電源ボタンに手をかけ――そして気付いた。
電源は……すでに切れていた。
オフになっているのに、やっぱり壊れてしまったのだろうか。
僕はラジカセを持ち上げようと、両手で両端を掴み力を込めた。
ぬちゃ…といやな感触がして、僕はそのまま……目を見開いた。
ラジカセの裏から伸びたコンセント、そこに人間一人分ほどの髪の毛が絡みついていたんだ。
コンセントのコードにつるのように絡まって、ギチギチに。
目で追うと、それはコンセントの穴の片方から……伸びているようだった。
……しかも、僕は驚いてラジカセを力いっぱい引いてしまったんだ。
ぶ ち ぶ ち ぷ ち ぶ ち
ラジカセに絡まっていた何十万本まの髪の毛が頭皮から引き抜かれる感触がした。
同時に、コンセントの向こうから絶えられないほど絶叫が響いたよ。
コンセントの穴から髪の毛が一斉に抜け落ちて、ドロリとした真っ赤な血が、穴から噴出した時…僕は
悲鳴を上げ、気を失った。
血塗れの部屋。髪が散乱する部屋。僕は部屋を綺麗に掃除すると、荷物をまとめて部屋を出た。
あのコンセントからは、また髪の毛が一本触手のように垂れていた……」
ちょっとまってくれ……
これ俺でも怖いぞ?
ほら優里なんて危ないよ?
もう震えることも忘れちゃってるよ?
詩織なんて涙目じゃん。
「どうだった?」
杏奈が笑顔で聞く。
「最初からずいぶん怖いネタを……」
彰が隣からツッコム。
「じゃあ次は詩織ちゃんあたりいってみる?」
「うぅ……私ですか……?う~ん……じゃあこれなんかどうでしょう?
こんばんは お元気ですか?
ろくな食生活をしていないだろうと
しんぱいしています。
にくだけじゃなく、魚や野菜もとらなきゃ
いけませんよ? この手紙が届いた時、私は
くるまでそちらに向かっている頃でしょう。
よるごはんは、美味しい料理を作ってあげますね。」
「「「??」」」
みんな首をかしげている。
「小説ならではなんだけどな……」
詩織はわかってもらえなかったからか肩を落としている。
ってか小説ならではって言っちゃダメでしょ……
でも小説ならでは……?
普通に口にだしたらわからないけど書いたらわかる?
そういうことか……
詩織が急に怖く見えてきた……
これはPC版じゃなきゃダメだな……
「う~んさっきのはよくわからなかったけど……次佐々木君いってみようか」
「ふっふっふ……お前ら怖がりすぎて夜眠れなくならないようにな?」
彰の自信のすごさにみんなが息を飲む。
「では……『まんじゅうこわい』」
「「「……」」」
これはツッコミいれたほうがいいんだよな?
「彰君それは怖い話じゃないから……」
「そうなのか!?」
「真美さん次いきましょう」
「そうね……なら次は優里ちゃんいってみる?」
まさか俺にあたるとは……
「まあやってみます……
ある村に少年がいました。
母親1人で育てられた少年は母親からたくさんの愛をもらいました。
たった2人で、決して貧しくない幸せな生活。
……しかし少年には悩みがありました。
少年は汗をかかないのです。
夏になっても、走っても、お風呂に浸かっても、サウナに入っても。
そんなある日、少年は赤信号で車道に飛び出しました。
冷や汗でもかくのかな?と思ったのです。
車は少年の前ギリギリで止まりました。
……しかし少年から汗は出ませんでした。
「何かないかな……」
その次の日、少年は万引きをしました。
見つかってしまい、追いかけられました。
必死に逃げ、必死に逃げ、
……それでも汗はかきませんでした。
「あ!」
少年は気づいたのです。
汗をかく方法を……
次の日少年は汗を出す方法を早速家で実行しました。
「やった!汗が出たぞ!」
嬉しさのあまりに次の日は家の裏道でやってみました。
「あれ?汗が出ないや」
そう。出なかったのです。
きっとこれからも続くでしょう。
前日に出たのは汗ではなく涙とも知らずに……」
俺は周りを見てみる。
あれ?泣いてる?
そんなに怖かったか?
「かわいそすぎるよぉ……」
どこからかそんなつぶやきが聞こえる。
「ひっく……とりあえず結衣ちゃんいってみましょう……」
「はいです……うぅ……かわいそすぎる……」
「いつまでひきずってるの!?」
「やってみますよ……
知り合いが高校生の時、先生に聞いた話ということです。
先生といっても、大学を出たばかりの新任の講師だったそうで、比較的歳が近いことと、時々怖い話をしてくれるので生徒に人気があったらしいです。
その先生(Aとします)が高校生の時、クラスの親しい友人B、Cとバレンタインデーの狂言を企んだのだそうです。
舞台となったのは、とある地方小都市の公立の進学校。
時代なのか、地方小都市の進学校ということによるのか、その先生の高校時代、バレンタインデーにチョコレートを貰えるというのは一部のスター的な生徒に限られていました。
だからバレンタインデーといっても、男子も女子もなんとなくワクワクソワソワしつつも、結局何事もなくその日が過ぎ去っていくというのが、その高校での毎年のパターンだったそうです。
A達三人、そんなつまらない状況を打開すべくと思ったのかどうかはわかりませんが、バレンタインデーが近づいたある日、彼らは連れ立って密かにチョコレートを買いに行ったのです。
そう、つまりチョコレートを自分で買って、学校の自分の机に隠し、バレンタインデー当日、
「あれっ! オレの机にチョコレートが! いや?まいったなぁ?」
「おっ! オマエにもか?オレもだよ! いや?まいった。まいった」
「なんだオマエらもかよ。オレも入っててさー。いやーオレ達やっぱもてるんだなぁ?」
ってやるつもりだったわけです。
各自のセリフまであらかじめ考えて、それをやったというのだから笑えます。もちろん単なるウケ狙いです。
いつもつるんでいる馬鹿3人組にだけチョコレートがプレゼントされる
なんてことのないというのは、クラスのみんなにはすぐわかります。
まぁそんなことでもすることで、一年後に迫った大学受験の圧迫をひと時でも忘れ、バレンタインの楽しい気分を少しでも味わいたいというところだったのではないでしょうか。
チョコレートを買ったらAの家で各自ラッピングです。
バレンタインのチョコレートですから、買ったスーパーのレジ袋入りというわけにはいきません。
それぞれ趣向をこらしメッセージまで添えて、もう準備万端。
当日が楽しみです。
前日の放課後、各自さりげなく自分の机にチョコレートを隠せば、あとは明日登校する時間の確認です。
早く来すぎるとみんながいないし、かといって遅すぎるとホームルームが始まってしまうので、お楽しみの時間が短くなってしまいます。
しかし、そこは県下でも有数の進学校の生徒。たちまちベストな時間を計算し、いよいよ明日を待つばかりです。
二月十四日の朝。
三人揃って教室に入ります。
いつも通りのだるそうに手を上げるあいさつ。
密かに想いを寄せている女の子には「あ、俺チョコレート一枚でいいからね」なんて哀しい軽口も忘れずに席に着きます。
セリフはA、B、Cの順と決まっていました。
何気なく何気なく、いつも通りいつも通りとまわりの友人に冗談を言いつつ席に着き、何気なく机の中をさぐります。
大丈夫。指先に触れるラッピングの紙。
Aは、セリフが最初なのでかなりドキドキです。
「うん!? 何だこれ!? あれっ! わっ! オレの机にチョコレートが!! いや?まいったなぁ?」
いっせいに、Aの方をちょっと呆気にとられたように見るクラスのみんな……。ほんの一瞬の沈黙の後、驚きの声が沸き起こります。
「マジかよ!」
「うっそぉぉぉ!」
反応はバッチリです。そして次はBの番。
「なんだよっ! A、オマエにもかよ! いやオレもだよ! いや?まいった。まいった」
Bはそう言って立ち上がり、Aの方に、そしてみんなにチョコレートの包みを見せびらかします。
もう教室中、男子も女子も大騒ぎです。
「えっ何!? チョコレート!? 本当??」
「なんでAとBなんだよ!」
「バーカ! 信じんなよ。AとBだぜ。テメェらでやってるに決まってんじゃん」
どうも早々と見破ったヤツもいるようで、こりゃヤバイとAとBは、Cに視線を走らせます。
なにせ肝心なのはCのセリフなのです。
Cの「いやー、オレ達って、やっぱもてるんだなぁ?」っていう白々しいいかにもなセリフがオチなのです。
ところが……。
その肝心のCが、いつまでたってもそのセリフを言おうとしません。
見れば、席に座ったまま何やらぼうっとしているばかり……。
教室の中に渦巻く歓声の中、もうこうなったらとAはCに声をかけます。
「おい! C! オレとBは机にチョコレートあったけど、オマエは?」
言った瞬間、それってなんかバレバレじゃんって気がついた時は、もう間に合いません。
視界の端には「バカ……」と顔をしかめるBの顔……。
「えっ? ああ、ああ……」
ガタンと席を立ちCが言いました。
「うん……。あっ、いや、えーと……。お、オレも入ってたぜ。いやー、オレ達やっぱもてるんだなぁー……」
それはもうほとんど棒読みに近くって……。
もうクラス中大爆笑。
「さっすが! バカ奴等! やってくれるぜ」
「さっすがー! AクンもBクンもCクンもサイコー! わたし、来年はチョコレートあげちゃうかもー!」
「おい! A! オレんとこにもチョコレートあったんだけど、一応言っといた方がいいかな?」
クラスを沸かせるという目的はまぁ達成できたわけですが、そうは言ってもAもBも納得できるわけありません。
先生が来たこともあり、その場はそこまででしたが、AもBも休み時間になったらCのことをどうしてくれようかと、考えるのはそればかりです。
「てめぇー、ちょっと来いよ!」
休み時間になるなりAとBはCを外に連れ出します。
その様子を見ているクラスのみんなは、もうニヤニヤが止まりません。
三人が教室に出た途端、堪えていたものが大爆笑となって廊下にまでこだまします。
「オマエさ、何やってるわけ?」
「あれじゃ、全然面白くねーじゃんよ!」
Cに詰め寄るAとB。
「悪かったって……。たださ、ちょっと変なことがあってさ……」
「なんだよ。変なことって」
「チョコレートの包みがもうひとつあってさ……」
「…………!?」
Cが言ったことを理解するには、AもBも少し時間が必要でした。
「バッカヤロー! なんだよ! それっ! テメェーだけ本当にチョコレート貰ったってことかよ! ざけんじゃねーよ!」
思わず二人して左右からCに回し蹴りです。
「痛ぇーなバカ! 話、最後まで聞けよ。そのもうひとつのチョコレートっていうのが変なんだよ。それでマジ焦っちまってさ……。朝の一件は確かに悪かったって。でもさ、ホント変なんだって」
実は、この時のCときたら顔色は真っ白。
話し方もいつもと微妙に違っていたのですが、朝のお楽しみの失敗と、
Cだけチョコレート貰ったということに頭に血が上っているAとBには
そこまで気がまわりません。
「変って、何が変なんだよ? チョコレートが腐ってたのかよ!」
「チョコレートが腐るかバーカ! とにかくよ、話をしたら長くなるから昼休みまで待てよ。どういうことなのかオレもゆっくり考えたいんだよ。実はさ……」
「なんだよ?」
その時になって、やっとAとBはCの感じがいつもと違うことに気がついたのです。
「オマエ、そういえば顔色が変だぜ……。なんだよその顔……」
「うん。とにかく昼休みにしようぜ」
昼休みまでの時間は長かったのか? 短かったのか?
三人のチョコレート事件のことは、授業中まで話題になりました。
来る先生、来る先生、必ず最初に言うことは「今日チョコレート貰ったか?」だったからです。
そのたんびクラスは大爆笑。
そして誰かが先生に朝の一件を話し再び大爆笑。
もっともそれくらいで凹むようなA達ではないのですが……。
「これなんだよ」
やっと来た昼休み。
CがAとBを連れてきたのは屋上へと続く階段の踊り場。
床にペタンと座ったAB二人の前に出したものは、三人がスーパーで買ったチョコレートとは似ても似つかないいかにも本命チョコって感じの小箱……。
「スゲー! オレもいつかこんなの貰いてーなー」
「そういう話じゃねーだろ! まずはこのメッセージカード見てくれよ」
Cはそう言ってAとBに二つ折りになったメッセージカードを渡します。
「どれどれ…。えー、『Cぴょんへ』。ハハハー! なんだこれ!?Cぴょんへ。ハハハー! ダメだぁー! 力が抜けるぅー! Cぴょんへって……、Cぴょんって誰だよ? やっぱオマエのことか?は、は、腹痛てー!」
「Cぴょん」がすっかりハマったAとBはしばらく笑いが止まりません。
やっと笑いが収まったAとBですが、よくよく考えてみれば、これはつまり、Cのことを「Cぴょん」などと可愛く呼んでくれる彼女がいるということになります。
「何だよオマエ! 結局自慢かよ!」
詰め寄るAとB。
「だから、話は最後まで聞けよ。このCぴょんなんだけどよ、俺のことCぴょんって呼んだヤツは一人しかいねーんだよ。俺は幼稚園まで、D市に住んでたんだけど、その時近所に住んでいた幼馴染の女の子。その子だけなんだよ」
「てことは何か? その幼馴染の女の子がこの高校にいるってことか?」
確かにD市ならちょっと遠いものの、この高校に通えないこともありません。A達のクラスにもD市から通っている生徒がいたはずです。
「そんなわけねーんだよ。だって、あの子は小学校の時に病気で死んじまったんだから……」
「バーカ。やめろよ。それじゃまるで幽霊じゃねーか……」
「勘弁しろよ。オマエ、幽霊にバレンタインデーもクソもあるかよ!」
Cの話にちょっとゾクッときて、肩をすくめつつAとBが言います。
「お前、そんな話わざわざこんな寒い所で言うなよ。なんだか薄気味悪くなってくるだろ。それでなくっても寒いのによ」
普段は蛍光灯を消している屋上へと通ずる階段の踊り場。
下からの誰かが騒ぐ声が、フィルターでも通しているかのようにはるか遠くに聞こえます。
「誰かさ、やっぱり幼馴染だった他の奴がこの高校にいてさ、そいつが悪戯したんじゃねーの?」
「確かにな。俺もそんなところかなぁーっとは思うんだけどよ、ひっかかるっていうか、変に気味が悪いのがこの住所でさ……」
Cはそう言って、今度は箱の後ろの製造明細を記したシールを指差します。
「E洋菓子店 Y県D市○△1-2-34。なんだよ? この住所がどうしたんだよ?」
「この住所、その子の家の住所なんだよ」
「なんだぁそれ? よくわかんねーよ。どういうことなんだよ?」
チョコレートを製造した店の住所と、亡くなったというCの幼馴染の家が同じ住所ということは、その幼馴染の子の家が最近洋菓子屋を始めて、Cにその子の名でチョコレートを贈ったということなのでしょうか?
いや、そんなことがあるわけもありません。
AもBもなんだか頭がこんがらがってきました。
「この洋菓子屋の住所見た瞬間さ、これってたぶんあの子の家の住所じゃないか? って気がしたんだよ。住所覚えてたわけじゃないけどさ、前のオレんちの住所とほとんど同じだからさ。でさ、さっきの休み時間に、この店に電話かけてみたんだよ」
「おっ。なるほど。それで?」
「電話出たの、その子の親だったのか?」
「いや、彼女の家は確かD市の別の所に引っ越したって聞いたから親が出るわけねーんだ。電話に出たの知らない人だと思うし、何よりこのEって、彼女の家の苗字と違うし……」
「そんなこと言ったって、このEが苗字とはかぎらないだろ?」
「だから、それも聞いたんだって。順番に話しさせろって……」
Cは、その店に客を装って電話をしたのだそうです。
そのチョコレートの商品名を言って、店に買いに行きたいんだけど道順を
教えて欲しいっていう風に。
「以前その辺に住んでいたので、だいたいの土地勘はあるんですけど、この住所だと、たしか以前○○さんが住んでいた家の住所だと思うんですけど……」
と、幼馴染の子の苗字をそれとなく言ってみましたが、相手は「○○さん……? さぁ……?」と言うばかりです。
よくよく考えれば変な電話です。
土地勘があるのなら電話で確認する必要もないわけですから。
「ちょっとお待ちください。主人に代わりますんで」
そう言って、相手は主人だという男性の声に代わります。
「もしもし。○○さんっていうのはよくわからないだけどさ、ウチがここ始める前は牛乳屋さんだったっていうのは聞いたけど、それでわからないかい?」
なにかがガツーンと体を突き抜けました。
幼い頃のことが脳裏に蘇ります。
そう、幼馴染のその子の家に遊びに行っては、おやつに商売物のフルーツ牛乳やヨーグルトをご馳走してもらったことを……。
店先に積み上げられた木製の牛乳ケース。
その木製のケースに染み付いた牛乳の発する匂い。
店に入ると金属製の大きな冷蔵庫があって、幼馴染の子のお父さんがニコニコ笑いながら牛乳をCに手渡ししてくれて……。
その横では、粗末なパイプ椅子に腰掛け、足をブランブランさせながら笑って牛乳を飲んでいる幼馴染のあの子……。
そう、あの子の家は確かに牛乳屋さんでした。
「もしもし、もしもし……」
どのくらいそうしていたのでしょう?
受話器から聞こえる声に、Cは我に返ると、
「あ、はい。あ、そうそう。うん、牛乳屋です。そう牛乳屋さん。わかりました。ありがとうございます」
「どうします? 商品お取り置きしときましょうか?」
「えっ? あ、すみません。今日は学校なんで、また今度……」
「なんだかわかったようなわからない話だなぁ……」
「うん。ただ、チョコレートくれたのがその幼馴染の子だとしてもだぜ、なんで今年なんだよ?」
Cの話を聞き終え、ちょっとため息をつき気味にAとBはそう言います。
「あのさ、こう言って気を悪くしたんなら謝るけどさ、なんかこう気味が悪いっていうより、ちょっと気持ちが悪い話だな……」
そう言うAにCもうなずきます。
「うん。そうなんだよ。どう考えたって変だろ?」
「まぁさ、わかんねーよ。それより、この後何があるのか? それから、来年もまた貰えるのか?」
Bのその呟きに、思わずビクッと背筋を伸ばすC。
「オマエ、やめろよー……」
そのことに今更ながら気がつくC。
そのCの肩にポンっと手を置きAが言いました。
「まぁさ、来年はともかく来月だよ。来月の十四日どうすんだよ?ホワイトデーはよ?」
結局、Cクンのもとに届いたその謎のバレンタインのチョコレート。
後にも先にもそれ1回きりだったそうです。
ところで、心霊ビデオの有名なヤツに、子供が夜に部屋で他愛ないトリック撮影みたいなことをしていると、後ろの大きな窓の端に白い大きな顔が覗くってヤツがあったじゃないですか?
このお話聞いた時、即座に思い出したのがソレ。
妙な悪戯を企んでると、面白がって悪戯好きな何かが寄ってくるってことなんでしょうか……。」
「「「??」」」
「これもどちらかというとなんかいい話に聞こえてくるんだけど?」
「なんか約束でもしたのかな?」
「まあ人によって受ける感性は違いますからね」
結衣がそう言う。
「まあ自分でも『う~ん……みんな怖いと思ってくれるかな?』とか思ったんですが……なのでちゃんとしたのを……」
「かなり昔の話です。まだ娘が四歳ぐらいの小さかった頃、一緒に買い物へ出かけた帰りのことです。
電車に乗って帰っていたのですが、あまり人は乗っていませんでした。
でも、なぜか娘も私も座る気になれず立っていました。
すると、電車が急ブレーキをかけたのです。
ギギギッとブレーキがかかり、二人でふらっとしてしまいました。
でも、すぐに電車が動きだしたので、「怖かったねぇ?」などと話をしていたのです。
すると、立っている前の座席の下あたりから、カラカラカラ……と異音が。
「ん? なんだろう、この音?」
そう思っていると、娘が言いました。
「……女の子が立ってるよ」
「え?」
でも、娘が指差した先は連結部の外。
「まさか? そこは電車の外よ」
「だって、立ってたんだもん」
と、また、カラカラカラカラ……の音。
しばらく黙っていたら電車のアナウンスが響いて……。
「人身事故がありましたので、この電車は車庫に入ります」
「あの子かな?」娘が言うので、私が「しーー」と。
ついてきたら困るから黙っていようねと、現場を見ないように降りました。
まさか、あのカラカラの音は……」
「カラカラの音ってもしかして……」
「……骨?」
そしてみんなとりあえず1回ずつ怖い話をした。
なんで全部紹介しないのかって?
作者がめんどくさがってるからですね。
結局みんな怖くなって肝試しは中止となったとさ。
今回は書くのがすごく大変でした……
冬なのになんでこんなに怖い思いをしなくてはいけないのでしょうね……
詩織のやつは縦読みで『ころしにいくよ』になります。