第1話 女の子たちがやってきた?
顔も普通。
性格も普通。
……だと思う。
恋愛経験は一切なし。
そんななにもかもが普通な俺、『上園亮』の唯一普通じゃないところといえば親が旅好きで家に帰ってこないということ。
どうやって稼いでるのかは知らないが毎月生活費が送られてくるから金銭面では苦労していなかった。
問題は生活面だった。
親が出ていったのが中1の頃。
あの頃は本当に辛かった。
1ヶ月の金の振り分け、家事などまったくできなかった。
そして高2になった今でも飯はコンビニに頼ってしまっている。
そんな生活をおくっていた4月のある日……
両親が死んだ。
原因は病死。
なんの病気で死んだのかはわからない。
とにかく親父たちには一言言たいことがある。
「ざまあみろ」
俺を放っておくから天罰がくだったんだよ。
……まあ死んだからって生活が変わるわけではないが……
俺を引き取ってくれるって言う親戚もいたが迷惑はかけたくないから断った。
葬式が終わり俺は家のソファーに座ってボーッとしていた。
親父達が死んで残ったのは多額の保険金。
これだけあれば金銭面は苦労しないはずだ。
「親父たちが死んでもどうせ生活は変わらないしな~」
そんなことを言っていた時だった。
ピンポーン
「ん?誰だ?うちに用事なんて……新聞はお断りだぞ?」
そんなことを言いながらインターホンに取り付けられているカメラの画面を見る。
「……誰?」
画面を見るとそこには知らない女の子が3人……
『本当にここで合ってるの?』
茶色がかった黒い髪をポニーテールにした女の子がカメラを覗きこみながら言う。
『う~ん……私に言われてもね~結衣どう思う?』
他の2人より一回り小さい女の子が言う。
この子は栗毛色の長い髪の毛をそのままおろしている。
この子は歳下っぽいな……
『なんで私に聞きますかね……』
今度は眼鏡をかけ、胸がすごいことになっている結衣と呼ばれる人が言う。
この人も黒くて長い髪の毛をおろしている。
『それよりも……応答がないんだけど』
『留守かな~』
『お葬式の時はいましたよ?』
葬式のことを知ってる?
じゃあ親族?
いや、こんな子達はいなかった。
とりあえず応答するか……
「はい」
『出るのが遅い!!』
いきなりポニーテールの人が言ってくる。
ってか第一声から『出るのが遅い』って言われるとは思わなかった……
「どちら様ですか?」
『ええっと……あの…』
小さな女の子がもじもじする。
『とりあえず中に入れてもらえませんか?』
眼鏡をかけた巨にゅ……げふん……眼鏡をかけた女の人が言ってくる。
いきなり知らない人を家に入れろって言われても……
『あなたのお父様から伝言を預かっています』
「親父から?」
俺はそれを聞いて家のドアを開ける。
「あんた出るのが遅いのよ!!」
いきなりポニーテールの人にそう言われる。
「それが初対面の人に言う言葉か?」
「おっと……ごめんなさい。私は沢田優里。よろしくね亮」
俺の名前を知ってるってことは親父と知り合いってことは本当なんだろうな……
「私は塚本円っ!よろしくね!亮君!」
今度は小さい子が自己紹介をする。
「私は駒崎結衣です。結衣って呼んでくださいね亮さん」
「あっ!私も下の名前で呼んで!」
「私は別に下の名前じゃなくてもいいけどあんたがどうしてもって言うなら呼んだっていいわよ!」
ツンデレ?
「と……とりあえず上がれば?」
「「「おじゃまします!」」」
そして3人は家に入ってくる。
俺はリビングに通す。
「で?親父からの伝言って?」
俺は早速気になっていたことを聞く。
「これをどうぞ」
結衣が俺に一枚のDVDを渡してくる。
俺はそれをDVDプレイヤーに入れる。
画面に親父が映しだされる。
『なあ母さんネクタイ曲がってないかな?』
『ちょっとあなた!始まってるわよ!?』
『え!?待って!!撮り直し!!』
そこで一回画面が暗くなる。
「なあ……見なくてもいい?」
「だ……だめですよぉ!」
結衣が慌てて言う。
次に映しだされたのはかっこいいと思ってつけたのかサングラスをかけた親父……
「本当に見なきゃだめ?」
「亮君!」
「はい……」
『おほん……最愛なる我が息子よ』
その息子を放置しといてよくそんなこと言えるな……
『きっとお前がこれを見るときには父さん達は死んでるだろう。そこで息子に頼みがある』
死んだのに頼みかよ……
『そこに女の子が3人いるだろう?その子達を預かってほしいんだ。事情はその子達が話すまでは聞かないでやってくれ。みんないい子だからよろしくね。じゃあまたね~』
親父は笑顔で手を振る。
そして映像は終わる。
死んだんだからまたもなにもないだろ……
それよりも……急に来た女をうちに居候させろと?そうゆうことなのか?
なんであんな親父の頼みを聞かなきゃいけないんだよ。
ここは丁重にお断りを……
「あの……3人共帰ってもらっても……」
「亮……だめなの……?」
「亮君……私達もうここしかないの……」
「無理なことを言ってるのはわかります!でも……!もうここしかないんです!!」
彼女達は涙目で言ってくる。
いきなりそう言われても……
「俺は君たちのことよく知らないし……」
「私は知ってる……!あなたのお父さんからたくさん聞いたから!!」
「私も!」
「私もです!」
他人から見ればこんな女の子と同棲するなんておいしいイベントを逃しちゃいけないんだろうけど言われてる本人からしたら正直迷惑だ……
でも……
彼女達は本気だ。
その気持ちはすごく伝わってくる。
事情があると親父は言っていた。
彼女達は帰る場所はもうここしかないとも言っていた。
そんな子達を俺は放っておくのか……?
それじゃ親父と一緒じゃねえか……!!
あんなやつと一緒になるくらいなら……俺は彼女達と共に暮らす道を選ぶ。
「事情はよくわからないけど……すこしの間なら……」
そう言った瞬間彼女達の顔が一気に明るくなる。
「ありがとう!亮君!」
いかなり円が飛び付いてくる。
「わっ!!」
俺は飛び付かれた衝撃で後ろに倒れる。
「ちょっと!円なにやってるのよ!」
「そうですよ!円がやるなら私も!」
いきなり結衣も俺に抱きついてくる。
そんなことされるとあなたの胸が……!胸がぁぁぁぁ!!
俺は鼻血が出そうになるのをなんとかこらえる。
それから俺と彼女達との同棲生活が始まった。