表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100京円持って死ぬ男  ―毎日1億円使っても、金が減らない―  作者: 一月三日 五郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/7

第七話 つかの間の休息

 正直に言おう。


 この時点でも、

 俺はまだ、余裕だった。


 体調が悪い?

 疲れている?


 ――まあ、

 そういう時期もあるだろ。


 何せ俺には、

 金がある。


 世界最高峰の医療?

 最先端の設備?

 権威ある医師団?


 全部、用意できる。


 むしろ、

 できないと思うほうが失礼だ。


 俺は、即座に手配した。


 場所は、

 某国にある極秘医療施設。


 表向きは存在しない研究所。

 患者は国家元首クラスか、

 俺みたいな

「金がバグってる人間」だけ。


 白い廊下。

 無音。

 清潔すぎて、

 逆に落ち着かない。


「ようやく本番だな」


 これで全部、終わる。

 そう思っていた。


 検査は、長かった。


 血液。

 画像。

 遺伝子。

 脳。

 臓器。


 ありとあらゆる角度から、

 調べられる。


 その間も、

 俺はずっと考えていた。


 どのくらい金がかかるかを。


 いや、

 払う気は満々だ。


 ただ、

 どれくらい豪快に消えるのか、

 少し楽しみだっただけだ。


 数日後。


 医師団が、

 部屋に入ってきた。


 全員、白衣。

 全員、表情が硬い。


 ……あれ?


 嫌な予感がした。


「結論から、

 お話しします」


 年配の医師が、

 そう切り出す。


 俺は、笑った。


「治るんですよね?」


 即答が、なかった。


 その沈黙で、

 だいたい察してしまった。


「……現時点の医療では、

 根本的な治療は不可能です」


 空気が、落ちた。


「進行は抑えられます。

 症状も、多少は緩和できます。

 ですが――」


 医師は、

 一瞬、言葉を探す。


「余命は、

 おおよそ一年と見ています」


 頭の中が、

 一瞬、真っ白になった。


「……は?」


 思わず、

 声が出る。


「いや、

 ちょっと待て」


 笑おうとしたが、

 口角が、

 うまく上がらない。


「金なら、ある」


 俺は、

 はっきり言った。


「いくらでも払う。

 研究費でも、設備でも、

 病院一つ建ててもいい」


「それでもです」


 医師は、

 首を横に振った。


「金で、どうにかなる段階を、

 すでに超えています」


 ――ああ。


 この感じ。


 今まで、

 一度もなかった感覚だ。


 金が、効かない。


「……ふざけんな」


 低い声が、

 勝手に漏れた。


「ここまで来て、

 それはねぇだろ」


 医師たちは、

 何も言わない。


 慰めも、

 励ましも、

 ここにはなかった。


 あるのは、

 事実だけだ。


「残りの時間、

 できるだけ楽に過ごせるよう、

 全力でサポートはします」


 その言葉が、

 やけに遠く聞こえた。


 施設を出たあと、

 外の空気を吸う。


 いつも通りの空。

 いつも通りの街。


 なのに、

 全部が、

 少しだけ違って見える。


「……一年、か」


 短い。


 金を使い切るには、

 あまりにも。


 その時、

 ようやく一つの事実を理解した。


 俺は、

 時間が足りない。


 金は、余っているのに。


 どう使っても、

 どう足掻いても、

 最後は余る。


 ……最悪だ。


 その夜、

 俺は久しぶりに、

 眠れなかった。


 贅沢なベッドの上で、

 天井を見つめながら思う。


「……どうすりゃいいんだよ」


 答えは、

 まだ出なかった。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

もし「100京円の使い道が気になる」と思ってくださったら、

広告の下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして

応援していただけると、執筆の励みになります!

皆様のブックマークや評価が、新人作家である私にとって一番の支えです。

また次の話でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ