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100京円持って死ぬ男  ―毎日1億円使っても、金が減らない―  作者: 一月三日 五郎


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第二話 そうだ、国を買おう

 俺は、本気だった。


 100京円を減らすには、

 もう個人の消費レベルでは話にならない。


 だから――

 国を買う。


 会社じゃない。

 国だ。


 思いつきではない。

 ちゃんと考えた結果である。


 まず条件を整理した。


 ・小さい

 ・財政難

 ・国民が少ない

 ・交渉が成立しそう


 理想的だ。


 国土を買い取り、

 借金を肩代わりし、

 インフラを整え、

 国民には十分すぎる補償金を出す。


 誰も損をしない。

 むしろ全員幸せ。


 完璧な計画だった。


 俺はすぐに専門家を集めた。

 弁護士、経済学者、外交官。

 とにかく「国の話ができそうな人」を片っ端から呼んだ。


 会議室で、俺は言った。


「国を、買いたい」


 一瞬で空気が死んだ。


「……失礼ですが」

「はい」

「“支配”ではなく?」

「違う。購入だ」


 全員が、微妙な顔をした。


「前例がありません」

「じゃあ作ろう」

「国際法的に……」

「金は払う」

「そういう問題ではありません」


 おかしい。


 金を払うと言っているだけなのに、

 誰も前向きにならない。


 試しに、具体的な数字を出した。


「国家予算の十年分を一括で」

「……」

「国民一人あたりに億単位の補償金を」

「……」


 沈黙が、重い。


「それ、買収というより……」

「侵略に近いですね」


 侵略?


 戦車も出していない。

 兵も送っていない。

 ただの現金一括払いだ。


 だが現実は甘くなかった。


 いくつかの国に打診した結果、

 返ってきた答えは、ほぼ同じだった。


「主権は売り物ではない」

「国民感情が許さない」

「他国が黙っていない」


 しまいには、

 国連から問い合わせが来た。


「あなたは、何がしたいのですか?」


 正直に答えた。


「金を減らしたい」


 しばらくして、

 非常に丁寧な文面で、こう返ってきた。


「別の方法を検討してください」


 こうして、

 俺の国家購入計画は頓挫した。


 ――が、問題はそれだけではなかった。


 交渉の過程で、

 なぜか俺の投資先が増えた。


 専門家への依頼。

 調査費用。

 国際会議への出資。


 気づけば、

 資産は――


 増えていた。


「……なんで?」


 減らすために動いたのに、

 増える。


 意味がわからない。


 夜、豪邸のソファに沈み込み、

 俺は天井を見つめた。


 国は無理。

 人がいる場所もダメ。


 誰にも文句を言われず、

 好き勝手できて、

 とんでもなく金がかかる場所。


 ――人のいない場所。


 ふと、答えが浮かんだ。


「……海底か」


 誰も住んでいない。

 主権もない。

 苦情も来ない。


 しかも、

 めちゃくちゃ金がかかりそうだ。


 俺は立ち上がり、

 即座に電話をかけた。


「次は、海底に都市を作る」


 電話の向こうで、

 相手が黙り込む気配がした。


 ――よし。


 今度こそ、

 ちゃんと金を減らしてやる。


 たぶん。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

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