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見合いの日
長雨が止み晴れた空に寒風が吹く11月の事
とある地方の商家で見合いが行われた
千賀は晴れ着に袖を通し、席に着いた
小ぶりの饅頭菊があしらわれた鶸色の振袖から魚子黄の半襟が覗く…燻銀の菊があしらわれた紫黒色の帯から唐紅の帯揚げに茶気鼠の帯締め
持ち物の中で1番お洒落な着物を用意し臨んだ
真向かいの席には紋付袴が見えるが、千賀は緊張のあまり顔を上げる事が出来ず己の膝を見つめていた
両家の両親の談笑する声を聞きつつ、首が疲れてきたので顔を上げると、其処にはガタイの良い散切り頭が着座していた
やがて両親達が退室し、千賀はガタイの良い散切り頭もとい六蔵を庭へ案内した
元士族の跡取息子で、生糸の生産と販売を営む父を支え県内から東京まで行き来していると言う
行商の道中での体験談に聞き入るうちに時間が過ぎ、六蔵は両親に付き従って帰って行った
あれよあれよと話が進み、あっという間に結婚の日取りが決められた




