私の人生
私には彼氏がいる。そばにいてくれるだけで、私は十分幸せだった。
そんな彼が、最近仕事が上手くいってないことはわかっていた。収入が私よりも低くて焦っていることも。
彼にはそのことを伝えず、支えてあげようと思った。最近はプロジェクトも任されて、これが上手く行けば昇進が見える大きなプロジェクトだった。
「ただいまー。」
「おかえり...」
この日はいつもより様子が違った。ちょっとした事で喧嘩して、私も思いっきり酷いことを言って飛び出してきてしまった。
コンビニで甘いものを買って、一緒に食べたら仲直りできるかな。そんなことを考えながら、言い過ぎた自分に反省し涙を止めようと頑張っていた。
車が来るのに気が付かなかった。気づいた時にはもう遅く、轢かれてしまった。
「あれ?ここは...」
病室だった。あの時轢かれたはずなのに、なぜ今軽い怪我しかしていないのか。
「もしかして私超人!?」
医者が来て、色々質問された。
「怪我が軽くてよかった。良い彼氏さんですね、彼がいなかったら確実に死んでいました。」
「え?どういうことですか?」
「気づいていなかったんですね...落ち着いて聞いてください。あなたは違反車両に轢かれました。ですがこの軽傷で済んだのは、彼氏さんがあなたを庇ったからなんです。」
「え?じゃあ今この病院にいますか?すぐに会いたいんですけど...」
医者はメガネをゆっくりと取って、椅子に座り直した。
「彼氏さんは即死でした。」
「は?」
「葬儀は今日の夜執り行われるようです。」
現実が受け止められなかった。あんなに酷いことを言った私を庇って...
病院には無理を言って、退院させてもらった。葬式が終わり、雨の中傘もささず家に向かっていた。
途中で人気の無い路地にあったBARに入った。そこのバーテンダーに過去を見せられて、私の間違いを考えた。過去に戻るカクテルを飲んで、私はまた彼と一緒に過ごすため過去を変えに行った。
彼とは喧嘩もせず、残業終わりに駅へ迎えに来てもらうと、建設途中の建物が壊れて彼が死んだ。
次はエスカレーター側で待っててもらい、事故に巻き込まれないようにした。
「うわっ!やば、誰もいなかったよね?」
「大丈夫、いないから。」
乗り切った、そう思ったのが間違いだった。マンションのエレベーターから、フードを深く被った人がいきなり彼を包丁で刺した。彼を支えようと両腕を伸ばしたが、殺人犯に邪魔された。包丁を目の前に向けられ、フードの中から目が合った。背丈や目の雰囲気から、男であることは間違いない。
「何で、何でこうなるんだよ!」
男はそう叫んで、私の腹に包丁を刺して出ていった。
目を開ける病室に居て、彼は死んでいた。
それから何度もやり直すが、何度やってもその日を彼と生き抜くことはできなかった。