-do-ai-
ある都会のホテルにて俺はある人にこう言われた。
「馬鹿な真似はやめろ、目を覚ませ」
俺は即答だった。
「嫌だね、俺はありのままの恋愛をするんだ」
と強気で告げた。
「……そうか。けど俺を巻き添えにしないでくれ、もう既婚者なんだ、俺は」
「…巻き込まないよ、東也さんは……、…多分…」
数週間後。
「夜、英語の予習してたんだなー」
「当たり前」
俺は静橋夜。ごく普通の中学男子。だが中身は違う。
誰にも言えない俺だけの秘密がある。
自分はバイセクシャルだ。
バイセクシャルとは男も女も、男女問わず愛せる人間だ。
そんな事をこの友人が聞いたら絶望するかもしれない。
俺にとって唯一の幼なじみだった。
「夜ったらついこないだまで英語苦手だったのに、急にどうしたんだよ」
赤咲時馬、夜の幼なじみ。
「あ」
不意に教室の壁にかけられた時計を見る。
「ごめん、俺ちょっと行かなくちゃならないんだ」
と言い残し、教室を出て走り出す。
「えっ、ちょっ…、また今日もかよ!?」
小走りで時馬が追いかけてくる。
「悪い!本当に行かなくちゃ駄目なんだよ!」
階段を駆けおり、上履きから靴に履き替え、ダッシュで向かった。
前行った、あのホテルだ。
あの人と約束していた。
俺が誘った。ちょっと話したい事がある、って。
ホテルに着き、ルームキーをインフォメーションで受けとり、部屋へ向かった。
鍵が掛けてある。
よかった、間に合ったんだ、とホッと胸を撫で下ろす。
と、安心している場合ではない。
こんな所、学校の一人にでも見つかったらどうなるだろうか。
急いでポケットからルームキーを手にとり、ドアを開け、鍵を閉める。
「……ふう」
ベッドに体を寝かせ、しばらくくつろいでいた。
するとドアのノックが部屋に鳴り響いた。
「はいはい」
ベッドから体を起こし、ドアの穴から外を覗く。
……東也さん。
俺は鍵を開けた。
「悪い、遅れた」
「いいよ、上がって」
東也さんはごく普通のサラリーマンだ。
凄く頭が良く、夜も最近苦手な英語を教えてもらっていた。
東也さんと夜は、ベッドの横の椅子に腰掛けた。
「それで話はなんだ?」
「あの」
と言った途端、プルルルと電子音がなった。