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限界集落に現れる妖艶美魔女いななきの噂

時間は18時を過ぎていた。

森の中は既に暗くなっている。


ただ、この空き地は有一郎のフィールドでもあるので、空間認識は問題ない。


そう思っていると徳馬の周りに七つの不知火のような怪火が浮いていた。


よく見ると、それは葛飾北斎の「百物語」に登場するようなお岩の提灯お化けだった。


提灯お化けが七つ浮かんで、しかも、回っている。

なんだこれは! 

有一郎は霊魂糸縛(れいこんしじょう)を発動して、魂の糸を一体の提灯お化けに投げつけた。


そして、からめとり、振り回した。


七つの内、4体は衝突して燃え上がったが、一体が有一郎に向かって飛んできた。


空間弾烈によって、かろうじて交わしたが、当たれば火だるまになっていただろう。


有一郎は榊原道場で覚えた右回りの空間弾烈によって、徳兎の背後を取ろうと試みたが、敵も呪術者だ。


提灯お化けで防御しながら、反撃のチャンスを伺っている。


一方、あやかの前にも敵が現れていた。

男は真月徳狐(まづきとくこ)と名乗った。


それを聞いたとき、あやかはすぐに悟った。

真月? 本当は「魔付き」でしょう。


妖魔系の呪術師たちでしょう。


「わたしにとってはね」とあやかは言った「術使いはすべて敵なのよ」。


「ここでは、お前に100個ほどの金魚のフンたちの目が注がれているから戦えない。森の空き地に行こう。そこでは、既にオレの兄弟がお前の相方と戦っている」


「分かったわ。その地には結界を張って金魚のフンたちを入らせないようにするから、そこで思う存分戦いましょう」


有一郎にあやかからテレパシーが届いた。


「今から、敵を一人連れてそちらに行くわ」


テレパシーを受けて有一郎は思った。


(あやかは無事だったか。こちらに来るって? これで百人力だ)


再度、あやかからテレパシーがあった。


「邪眼念通を連打して、時間溶解の術を使いなさい」


(おおそうか!)


有一郎は空間弾烈を使って回りながら、邪眼念通を徳兎の頭に撃ち込んだ。


ズン! と実感できない衝撃が徳兎の脳髄を揺らす。


さらに、もう一撃。

徳兎も徳馬と同じ罠に落ちた。


有一郎の動きが緩慢に見える。


(スピードが落ちて来たな。ここが勝負時か)


徳兎は三体の提灯お化けを有一郎めがけて投げつけ、その隙を狙って両手からかめかめ波のような衝撃波を繰り出そうと考えていた。


だが、かめかめ波の態勢に入る動きが、徳兎が考えている以上に鈍かった。


そこで、有一郎はいつもポケットに忍ばせているナイフを下手投げの手裏剣の要領で徳兎に投げつけた。


ナイフは徳兎の頭部を直撃した。


有一郎は脳震盪を起こして倒れた徳兎の元に走り寄り、眉間に黒子魂没滅を撃ち込んだ。


あやかは徳狐と対峙していた。

初めてあやかの戦闘シーンが見られる。


有一郎は人知れず興奮していた。

どんな技を繰り出してくるのか。


徳狐は九尾の狐の幻影を自分の背後に出していた。

九つの尾を持つ化け狐だ。


おそらくだけど、彼は九つの尾を使った攻撃を仕掛けてくるはずだ。


あやかがセーラー服の短いスカートを揺らし、絶対領域をチラ見させて舞うように動いた。


白い肌が氷りのようにきらめいている。


発動された妖術は黄昏時(たそがれどき)にふさわしい逢魔時(おうまがどき)白烈(びゃくれつ)だった。


どこかに白が混じっている鴉は神の使い八咫烏の証である。


あやかはその八咫烏の幻影三百羽を徳狐に撃ち込んだ。


「うおっ」と叫んで徳狐は反射的にクロスした腕で目を覆った。


そこに、あやかが発動させた霊魂糸縛が飛んできた。


粘着質の高い蜘蛛の糸のようなものが飛んできて、徳狐のクロスした腕と頭部を縛りつけた。


徳狐は何も見えない状況に追いやられた。


そこに有一郎が飛び込んできて、がら空きの後頭部に回し蹴りをぶち込んだ。


徳狐は、九尾の狐の呪術を使う間もなく、一言も発する間もなく倒れた。


即座に眉間に黒子魂没滅を撃ち込む。

これでTHE ENDだ。


それにしても、あやかが操る妖術は有一郎のそれとは質が違う。

やはり、本家本元だ。


彼女は、いったい何者なのか。


城北中学で常に噂の種になっていたのが山の中腹にある限界集落に現れる妖艶美魔女いななきだった。


凄い美魔女らしい。

やらしてくれるという話だぜ。


この手の話は年齢に関係なく男は大好きだ。


酸素ボンベを背負ってへぇへぇしながら生きている超高齢者でさえ、この手の話には目の色を変える。


ホルモンに操られた生命体の悲しい習性だけどホルモンの要請に勝てる人は少ない。


ましてや青春、否、性欲真っ盛りの中学生が美魔女伝説に腰をふらつかせないわけがない。


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