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骸骨貴婦人ラ・カトリーナ殺害される

(灼熱魂魄弾? なんだそれは)


「今までは全て幻影的妖術攻撃だったけど、これは実弾よ」

「実弾ってエネルギー弾ってこと?」


「そうよ。発動するのは凄く疲れるけど、これしか方法はないわ」


「よし、あやかちゃんに任せる。とりあえず、糸を放って上空に舞い上がろう」


二人は同時に霊魂糸縛を発動させ、骸骨貴婦人をからめとった。


そして、そのまま空間弾烈を始動させ、(くう)を削りながら上空に舞い上がった。


あやかが五感ではとらえられない光の玉を骸骨貴婦人の頭頂部に撃ちこんだ。


骸骨貴婦人は一瞬ふらついたが、目立った外傷はない。

しかし、邪眼念通を介してよくみると妖怪の幽体の頭部に微かな亀裂が生じている。


(これか!)有一郎は着地した後、すぐさま空間弾烈で加速をつけて足のかかとで思い切り、骸骨貴婦人の頭を蹴り上げた。


あやかは、再度、灼熱魂魄弾を撃ち込んだ。


威力は、エネルギー充填の関係で7割減ぐらいに抑えられていたが、それでも骸骨貴婦人はゆらめいた。


邪眼念通で透視すると完全に幽体の頭部が分裂しかけていた。

人間でいえば、複雑骨折の様相を呈していた。


こうなってしまうと、平衡感覚が保てなくなる。


そして、骸骨貴婦人はよろよろとよろめき始め、遂には、崩れ落ちてしまった。


それは妖怪が死んだことを意味している。


(僕たちが妖怪を殺した? あり得ない、信じられない。しかし、これは現実だ)

有一郎は(どうすんだよこれ……)と呟いていた。


これで、これまであやかが実弾を使用してこなかったことの理由が分かる。


これは立派な殺人罪になるからである。

否、肉を殺すより魂を殺す方が罪は重い。


なんてこった! これで僕も殺人の共犯者として地獄送りになるだろう。


それじゃ、鵺に吞み込まれたのと同じではないか! なんてこった! 


髑髏夜叉は骸骨貴婦人が倒れたのを見て、「なんだと!」と叫んでいた。


そりゃ、叫ぶわな。

僕だって、あやかちゃんがこんな風に倒れたら、大絶叫している自信はある。


髑髏夜叉は「おのれ、おのれ」と怒りをアツユに向けたが、(そんなこと知ったことか)とばかりにアツユの馬の足に蹴られて5メートルも飛ばされていた。


「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ」という都都逸(どどいつ)があるけれど、本当に、馬の足に蹴られるとライオンでさえ死ぬことがある。


髑髏夜叉はモヤのように消え去ったゆく骸骨貴婦人を悲しそうな目で見ながら、「このままでは済まぬぞ。必ず借りは返すぞ」と吠えていずこへともなく去って行った。


「やれやれだな」とアツユは言った。


「『雉も鳴かずば撃たれまいに』という言葉があるが、奴も投資詐欺のようなことさえしなければ、こんな目に遭わなかっただろうに。例え、たわむれであったとしても、いずれ自分で蒔いた種は自分で刈り取ることになる」


戦いを終えて、有一郎は、はっと気づいた。


(臨闘列伝、アツユは式神を出したか? 戦いに夢中になりすぎてチェックしていなかったが、式神を出した記憶はない。なんてこった!)


世の中には怖い家というのがある。

家は、人が棲むことで意識を宿す生き物である。


反対に人が棲まなくなると、かなりの勢いで廃屋になってしまう。


よく似た話に怖い人形というのもある。


確かに、人形は人を模したものだから、そこに霊が宿るということはあり得る。


同じような原理で怖い絵というのもある。

これは人間の絵であることが大前提になる。


やはり宿るのだ。

等身大のポスターもヤバイ。

これも霊が宿りやすい。


動物の絵などはどんなに怖く描かれていても人霊が宿らないから怖い絵にはならない。


城北中学校では例によって「怖い絵がある」とひそかに騒ぎになっており、それは番長である有一郎の耳にも届いていたが、有一郎は一ミリも興味を示さなかった。


もうその種の話、つまり霊絡みの話はウンザリなのだが、「それでいいの?」と疑問を呈してきたのがあやかだった。


「お、あやかちゃん。面と向かって話をするのは久しぶりだね」


「そうね、だいたい一緒にいるのにね。三次元ではあまり話はしないよね。ところで、また霊絡みの噂が立っているけど無視してもいいの?」


「ああ、霊は大蛇三太夫と鵺で食傷気味だからね。妖怪なら意味不明でもいいのだけど、霊の意味不明はマジで意味不明だから消化不良になってしまう」


「でも、あなた式神の謎を暴くのに失敗したでしょう」

「式神? あ、すっかり忘れてた」


「式神って妖怪なのか霊なのか分からないわね」

「もしかしたら分魂の術とか」


「そうね、それもありかもだけど、そこまで行くと妖術でも呪術でもなくなるわ」

「じゃ、何術?」

「しいていえば仙術ね」


「仙術? 仙人に学ばなければならないとか?」


「そうよ。だからね、とりあえず有能な霊を確保した方が早いの」

「有能な霊? それも奇妙な話ですよね」


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