アツユの魔術、黄金の玉はすり抜けてバックする
サキエルは教団の庭にでてきた。
待ち受けているのは隻眼の人面獣心アツユだ。
サキエルは言った。
「面白い格好をしているな。眼が一つなのか、胴体が牛で足が馬? そして携えているのが牛刀だって。お前、笑えるぜ、ハロウィン大好き妖怪なのか、それともコスプレ妖怪なのか」
「減らず口もそこまでにするでごじゃる」と牛刀を振り上げた瞬間、サキエルから強烈な電磁波が飛んできた。
「うごごご、しかしだ、何のこれしき! あたしゃね、妖怪だから放射能系電磁波など、さほどの効果はねぇでごじゃる」と馬の足の一撃を喰らわした。
ところが、足がサキエルに触れた時点でアツユの体にすさまじい量の電流が流れ込んできた。
「うわわわ、あたしゃもしかしたら感電したでごじゃるか。きゃっ!」
アツユがサキエルを透視するとその体内は電気だらけでショートしたような火花が飛びかっていた。
(なんじゃこりゃ。こいつは和風の妖怪ではないな。古代の時代に電気などなかったからな、見た目も宇宙人っぽいし、こいつはニュータイプの妖怪か)とアツユが思っているとあやかが言った。
「この使徒とかいう妖怪、珍しく電気を使っているようね」
「霊魂糸縛を飛ばして動きを封じてみましょうか」
「そうね、わたしがやってみるわ」
あやかが霊の糸を放ってサキエルを捕えたが、その糸を伝って電気が流れ込んできた「痛い! 感電したわ」あやかはすぐに糸を切ったが、霊糸はサキエルに絡みついており、自由を奪っていた。
その動きが不自由になったサキエルにアツユの牛刀が振り下ろされたが、牛刀も感電して、アツユは「うぎゃ!」と悲鳴を挙げていた。
「もう、あたしゃ怒りに怒ったでごじゃる。あたしゃも魔術を使うでごじゃる」
そういうと右の手のひらからキラキラと黄金色に輝く玉が現れた。
「これでも喰らえ」とアツユがその玉を投げつけた。
玉はサキエルに当たるかと思うとその体を突き抜け、それから、バックしてサキエルの体に入っていった。
サキエルは体内でバチンッ! という衝撃を受けた。
まるで、体内でかんしゃく玉が破裂したようだった。
「うぇ!」と叫んで、サキエルは送電線の中に入り込み逃げ出した。
あやかが透視する「電線の中を逃げ回っているわ。あっ、街路灯にきた。上からアツユさんに襲い掛かるつもりね」
あやかは、臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前を秘めた九呪裂帛弾を放った。
凄まじい轟音とともにサキエルはぶっ飛ばされたが、それで破壊されたわけではない。
(こいつ、想像以上にしぶといな)と呆れながら、アツユは透視して、は? と思った。
サキエルの体内には電気が渦巻いていたからである。
これがこいつのエネルギーか。
それは疑いようもないことだろう。
ということは……、電気には水か! 水でショートさせればこいつの体はぶっ壊れるのではないか。
アツユは牛と馬の唾液を寄せ集め、粘着質の高い水分を作り上げると、それをサキエルにぶつけた。
唾液は糸をひいて、サキエルの穴という穴から体内に侵入して行った。
そして、思惑通り、サキエルの体内はショートを起こしていた。
機械ならば、過電流で基盤が溶けてしまって動かなくなるがサキエルはどうなのか? 体内で多大の過電流が発生して、さすがのサキエルも動きがぎくしゃくしだし、よろめきだしたが、それでも倒れるわけではない。
しかし、体内ショートによってサキエルの体は極度に防御力を弱めていた。
その衰弱し、防御力の弱まったサキエルをめがけて、「このくたばりぞこないが!」と叫びながら、全力で振り下ろされたアツユの牛刀がサキエルの首をはねた。
ぜんまいの切れた玩具のようになったサキエルの首は意外と簡単に刎ねられた。
サキエルの頭がころころと転がった。エネルギー源を失ったからか、サキエルの頭の形が崩れだした。
そして、モヤのように消えて行った。
同時に、サキエルの体もモヤのような白い煙を挙げながら、薄くなってゆき、遂に、消滅した。
やれやれだ。使徒一匹倒すのに、これほど手間がかかるとは。
さて、髑髏夜叉はどうなっているのかと透視してみたところ、髑髏夜叉は大変貌を遂げていた。
位置関係から割り出していなかったら、髑髏夜叉と判別できないような変化が生じていた。
これはいったいどういうことなのか?
あやかも透視してみたが、確かに、以前のおもかげはない。
そもそも、髑髏の顔ではなくなっている。
恐竜のような顔になっており、頭に三本の羽飾りがついている。
なんなのこれは!
どうして、短い時間でこのようになってしまったのか。
アツユがあやかに寄ってきて「透視してみたでごじゃるか」と訊いてきた。
「みたわ。なぜ、恐竜のような顔をしているの? 髑髏はどこに行ったの? これじゃ人面獣心恐竜夜叉よね。こんなことがありえるのかしら?」




