関東霊夢省職員、花房浩太郎、使徒狩りに参戦
有一郎が言った。
「サキエルも常識外れの形態をしていましたよね。これって、魔王とかいう者が持つ能力ではないでしょうか」
「つまり、髑髏夜叉も以前に持っていた能力以外の能力を授かっていると?」
「その可能性は充分に考えられますよ」
しかし、アツユは興奮していた。
「髑髏だろうが、恐竜だろうが、あたしゃには関係ないでごじゃる。サキエルと同じようにぶっ壊してやるでごじゃる」
すると建屋から髑髏夜叉がでてきた。
「やたらうるさい爆発音がすると思ったら、アツユ、お前か」と言って、サキエルのモヤった残骸に目を向けた。
「おやおや、サキエル君も消されたか、モヤの残骸が残っとるわ。この責任はどう取ってくれるんだよ」
「責任だと。まさか、人面獣心の貴様からそのようなセリフを聞くとはな、呆れてものが言えないでごじゃる。しかし、のこのこと貴様からでてきてくれるとは手間が省けたというものでごじゃる」
アツユは、いきなり髑髏夜叉に牛刀を叩きつけた。
ところが、髑髏夜叉はすずしい顔をして、牛刀を片手で受け止めていた。
(なんだと、刃先をてのひらで……受けただと!)
アツユは思わず牛刀を引き上げ、その刃先を触って驚愕した。
「な、なんだこれは、あたしゃの牛刀がゴムのようにふにゃふにゃになっているでごじゃる」
それを聞いた有一郎も驚いていた。
「鋼鉄の刃がゴムになっただと」
あやかが言った「どうやら、これが授けられた新しい能力なのかもしれないわ」
ならば、とアツユは足で蹴ろうとしたが、足までゴムにされてはたまらない。
そこで、奥の手の黄金の玉を取り出した。
「黄金の玉を放つつもりね、その前に髑髏夜叉の動きを封じないと」
あやかが霊魂糸縛を発動して、蜘蛛の糸のようなものを放ったが、その魂の糸さえも輪ゴムのようにふにゃふにゃにされて、縛りの用を足さないものに堕していた。
あやかは、それではとムキになって八徳数珠蓮華の舞を放ったが、その八個の爆薬さえもゴム化されて、ポンという情けない爆発音しか響かせない。
あやかの妖術が全く通用していないが、委細構わず、アツユは黄金の玉を放った。
例の如く、黄金の玉は髑髏夜叉の体を突き抜け、それからバックして髑髏夜叉の体内に入った。
さすがに、体内ではゴム化はできないのか、パチン! という音を鳴り響かせて黄金の玉が破裂した。
「うおおお」と髑髏夜叉が胸を押さえて悶えたが、アツユも次の手が打てない。
あやかが有一郎を呼んだ。
「アツユさんに玉をできるだけ連打するように言って。わたしが逢魔時白烈を放って敵の目をくらましている間に」と、いうや否や逢魔時白烈を発動した。
三百羽の白い八咫烏が髑髏夜叉を襲うがことごとくゴム化されて爆発力を削がれているが、アツユの黄金の玉が髑髏夜叉の体内でバチン! と炸裂した。
「うおおお」髑髏夜叉が、胸を押さえて、再び、悶えた。
その間隙を縫ってあやかは邪眼通念を放った。
ズン! 実感のない衝撃が髑髏夜叉の頭部を襲う。
(これか! あやかちゃんの読みに賛成票を一票)とばかりに、有一郎も邪眼通念を起動させた。
ズン! ズン! ズン! やはり飛び道具だ。
こればかりはゴム化できないだろう。
髑髏夜叉は時間溶解の罠にハマった。
敵の動きが全てスローモーションに見える。
(勝った)と思った瞬間に敗けになる。
動きの鈍くなった髑髏夜叉めがけて、あやかが必殺の灼熱魂魄弾を撃ち込んだ。
ただ、命中するとその瞬間にゴム化されてしまうので、髑髏夜叉に触れる30センチほど手前で魂魄弾を弾け飛ばした。
髑髏夜叉はその衝撃で樹木に叩きつけられた。
樹木はゴムのように柔らかくなり、髑髏夜叉はそれにハメ込まれていた。
(これで動けなくなるわ)と思っていたら、ゴムの反動で樹木から飛び出してきた。
(なんと往生際の悪い能力だこと)
そこで繰り出したのが最終妖術としての影武者幽体だった。
これはアツユの黄金の玉に似ている。
つまり、触れられてもゴム化されない幽体に爆弾を装着して送り込むという、ある意味、仙術の一つである分魂の術に似ている。
あやかが放った幽体は粛々と髑髏夜叉に迫り、動きが鈍くなったその体と合体し、爆発した。
「ふぎゃ!」髑髏夜叉は間の抜けたような断末魔の悲鳴をあげて内部から砕け散った。
するとアツユのゴム化した牛刀も元に戻っていた。
髑髏夜叉の断片がゴムのように跳ねていたが、やがて、それもモヤと化して雲散霧消して行った。
有一郎があやかのところに駆け寄り「難敵だったですね」と言った。
一方、あやかは(魔物から能力を与えられた使徒たちは面倒だわ。早く魔物を倒さないと)と心の中で呟いていた。
江戸時代の中期には、既に、「一度ある事は二度ある、二度あることは三度ある」ということわざが成立していた。
つまり、使徒の出現はこれで終わりではない。
使徒を倒したという有一郎の言葉に反応した花房は、「今度はオレも立ち会う」と言ってきた。
有一郎は煽るように言った。
「普通の妖怪ではないですよ。常識破りの技を繰り出してきます。もし、見てみたいとおっしゃるなら、関東霊夢省の秘密兵器を携えてこられた方がいいかもしれないですよ」




