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迷路の中の殺人事件、体液を吸う影法師

「どうした、なにかいい案が浮かんだか?」


「ええ、浮かびましたよ。妖怪たちの中から昆虫妖怪を呼び出してください」


「昆虫? それで解決するのか」

「多分」


やがて昆虫妖怪デジデジが連れてこられた。


有一郎はデジデジに依頼した。


「へこきむしを集めてください。できるだけ多く。できますか?」


「おやすい御用でっせ。とりあえず三百匹ほどでいかがでごぜぇやすか」


「それで充分です」


へこきむしは、お尻から摂氏百度のおならを音とともに20回以上も噴射できる。

これを魔人バビディに投げつける作戦だ。


三百匹のへこきむしが魔人バビディ向かって飛んで行き、まんまと吸収された。


そして、バビディの体内で六千回に及ぶ高熱のおならが連続で噴射された。


「うぎゃ~」と叫んだのはバビディだけではなかった。


あまりの衝撃に一反木綿、一本足小僧、足長手長がこぞってバビディの丸い体から逃げ出した。


こうなると料理は簡単になる。

おまかせダイニングルームになる。


粛々とあやかの影武者幽体が爆弾を抱えて歩み寄る。

あっという間に影武者幽体はバビディに吸収され、爆発した。


魔人バビディは、これ以上膨らまないというほど膨らんだのち、破裂して粉々になった。


花房はまるで自分の手柄のような偉そうな顔をしてアンドレに言っていた。


「な、暗殺隊の使徒など簡単に掃除できるだろう」


ううむとアンドレは唸っていた。

妖怪の多様性を使えば、もしかしたら魔王を倒せるかもしれない。


そうなるとわてが魔王の座に就くわけか。

ぐふふふ、お金が儲け放題ではないか。


まさにパラダイス。アンドレは、蝿が手をすり、足をするではないが、媚びた笑顔を花房に見せていた。


(こいつだけは手放すわけにはいかない。こいつは打ち出の小槌(こづち)じゃないか)


東京のど真ん中の、迷路の多いある街で奇妙な殺人事件が連続して起こっていた。


死体はいずれも水分が抜き取られたか吸い尽くされたようにひからびていた。


その一報を受けた時、花房は一瞬で閃いた。

(使徒だな)と。


新たな使徒が現れたのか。

少なくとも妖怪や霊の仕業ではないはずだ。


そのような酔狂な妖怪や霊は歴史上存在しないからだ。


となると、使徒以外の犯人がいるわけがない。

これは、ほぼ確信のようなものだった。


花房はすぐにあやかと有一郎に相談した。


有一郎が言った。

「それは黄昏時以降の話ですか」


「うむ、死亡推定時間はいずれも18時以降だ」


「相手が特定できないので透視はできません。だから、その町を重点的に式神を飛ばして監視してみればいいのではないでしょうか」


「そうだな、ヤタロウとかごめにもう一度チャンスを与えようか。それでダメなら、彼らは首だ。すぐに地獄に送り返そう」


ヤタロウは黒いモヤのようなものをまとっているから、夕刻以降に威力を発揮できるはずだ。


問題はかごめだ、彼女は何の力を備えているのだろうか? 


前頭葉を食うだけでは人間相手には効果があっても妖怪相手には全く無力だろう。


彼女にも、何らかの妖術を身に着けてもらう必要があるかもしれない。


あやかが有一郎の考えを知って、言った。

「牛鬼婆村の妖怪と合体させればいいのでは」


「なるほど、面白い案ですね。花房さんはどう思われますか?」


「そうだな、首と舌が異常に長い尼入道か髪が異常に長い毛女郎(けじょろう)あたりかな。これだと飛び道具としても使えるし」


そして、熟慮の結果、かごめは毛女郎とコンビを組むことになった。


ヤタロウ、かごめ、毛女郎の式神三人組は監視の途中、凄い速さで駆け抜ける黒いものをみた。


人の目では目視できないものだ。


妖怪の目でも、黄昏時は目が暗さに馴染んでいないので見えづらい。


そこで式神三人組は、細い迷路の一角にトラップをしかけた。

それは、毛女郎の髪の毛を路地に隙間なく敷き詰めることだった。


これで、いくら目に留まらない速さで移動する黒いものといえども、毛女郎の髪に触れるとからめとられることになる。


はたして、黒いものは髪の毛に触れた。


触れなければ通り抜けられないようになっているので、たちまち毛女郎の髪に巻き込まれたが、その瞬間、「どこかに消えた」と毛女郎は言った。


「あちきの髪の毛地獄をあんなにすばやくすり抜けた奴ははじめてでありんす」と女郎らしく、江戸時代の(くるわ)言葉を使っていた。


(古式豊かな和風だな)と花房はご満悦だった。


有一郎は「毛をすり抜けたのですか、それとも消えたのですか」と毛女郎に問いかけていた。


「途中から感触がなくなったので、多分、消えたようでござんす」


「消えたというのか、これまた厄介な奴が現れたな」と花房は渋面(じゅうめん)を作っていた。


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