ソウルイーターが使徒を生む?
「さぁ、どこかのおまぬけ二人組なのかもしれないわね。それよりも重要なのは『後ろの正面だあれ?』よ」
(ふ~ん、さっぱり分からないや)
「話は変わるけど、かごめちゃんはドメスティ教会の怖い絵という噂を聞いたことがありますか?」
「聞いたことはあるわ。でも、あの絵はね、蘇らせてはいけない絵なのよ」
そう言うと、突然、言葉のトーンが変わって「それなのに、絵を公開して、バカどもの見世物にするとわ。罰当たりどもが! 許せないわ。あの絵はね、わたしの生前の姿なのよ」とドスの効いた声を響かせた。
さらに「妖魔ハンターだと、ちゃんちゃらおかしいわ! 脳みそを食ってやろうか」と毒づいてもいた。
そして、かごめが突然立ち上がると同時にロボット犬がうなり声をあげた。
(ん? ロボット犬だと。だとしたら骸骨たちと同じように妖術も幻術も効果がないな)
しかし、あやかは逢魔時白烈を放った。
三百羽の白がどこかについている八咫烏の群れが狭い社を埋め尽くしたかと思うと一羽々々が爆発を起こした。
社の中は白煙だらけになり、何も見えなくなった。
(かごめちゃんは無事なのか?)と思わず心配した有一郎だが、相手が妖怪だということを思い出して、(僕は何の心配をしているのか)と呆れていた。
白煙が消えるとそこには、かごめとロボット犬が何事もなかったかのように立っていた。
(無傷だと!)有一郎は信じられないという顔をして佇んでいた。
そのとき、ロボット犬が有一郎に襲いかかってきたがロボットのスピードでは話にならない。
空間弾烈を発動するまでもなく、有一郎はロボット犬の足の一つをへし折った。
これでロボット犬は使いものにならないだろう。
問題は、かごめはなぜ、一つもダメージを受けなかったのだろうかということだ。
あやかは(後ろの正面だあれ? がヒントね。つまり、もう一人、誰かがいる。その者がわたしの透視の邪魔をし、爆弾からかごめを守った張本人ね。多分、タロウと呼ばれる者、それを見つけ出して、倒さないといけないわ)と考えていた。
あやかは急遽、有一郎の体内に入った。
「は? どうしたあやかちゃん」
「この二人は危険よ。二人で戦わないと勝てないわ」
一方、かごめはあやかが突然消えたので(あの超美人が消えた。どういうことなの)と戸惑っていた。
タロウが言った。
「何の心配もない。どうせ、奴らには何も見えていないはずだ」
「でも、あいつら奇妙な術を使ってくるから油断はできないわ」
「しかし、相手が見えなければ戦えまい。実際、爆弾つきの幻術も、わしらに何のダメージも与えられなかったではないか。幻術などそんなものよ。どれ、ロボットの足を一本折ったぐらいで安心しているあのガキを驚かせてやろうか」
ロボット犬は三本足になったが、それで動けなくなったわけではない。
なにしろ、ロボットなのだ。
足が二本になっても動けるように作られている。
ロボットが起動したのを察知した有一郎とあやかは霊魂糸縛を発動して、またたく間に、蜘蛛のような粘着糸でがんじがらめに縛りつけ、振り回した。
ロボット犬は装着された機銃を乱射したが、ぶんぶん振り回されて社に投げ入れられた。
あやかは、そこにエネルギー挿入の九字の呪文、九呪裂帛弾を放った。
三百羽の逢魔時白烈に比べて、単純に言って、30倍の火力を持つ。
九字の呪文は凄まじい威力で爆発し、社は粉みじんとなった。
同時に大爆音が鳴り響いた。
爆音を聞いて、多くの人が駆けつけるだろう。
まさに、かごめの常套句ではないが、逃げて逃げて逃げてだ。
有一郎は空間弾烈を連射した。
走るのではなく、空間を削り取るので、有一郎の逃走劇を目視できる者は誰もいない。
安全な地に逃げた有一郎の体からあやかが出てきた。
有一郎があやかに言った。
「社が吹っ飛んだとき、ちらっと見えたんだけど。黒っぽい何かを」
「わたしも見たわ。あれがタロウね」
「また、かごめとタロウを探さなければ」
「それは簡単よ。かごめは、必ず、ドメスティ教会の絵のところに戻ってくるわ。あの絵がかごめの本体だから」
「そして、タロウもそれに付き添っている?」
「そういうことね、あの二人は一蓮托生だから、決して離れることはないわ」
後日、あやかと有一郎は花房と会い、ファミレスに集まってランチを取りながら善後策を協議した。
花房は「ソウルイーターが現れたというのか」と驚きを隠さなかった。
「そうです。しかも、前頭葉を食う」
「前頭葉だって? そこを食われれば、思考能力を失って動物並みの知力になる。それが原因か。最近やたら闇バイト系の粗暴犯たちが頻発するのは」
「そうかもしれないわ。強盗殺人という最も重い犯罪を犯しながら、『3年も服役すれば出てこれる』と平気で口にするような無知すぎる若者たちが増えているのは、それが原因かもしれないわね」
有一郎も口を挟んできた。
「ほぼ、無期懲役か死刑なのに、どうして、そこまで無能になれるのかと不思議だったけど、前頭葉が無くなっているとそうなってしまうのかもしれないですね」
「そうした前頭葉欠落の人間が、妖怪と化して辿り着く先が『使徒』と呼ばれている連中なのだ」
「使徒?」




