臨闘列伝、髑髏夜叉から60億円を脅し取る
「ふふ、笑わせるな」と言った瞬間、有一郎の空間弾烈が炸裂し、段野にアッパーカットをぶち込んでいた。
「うぐぐぐ、なにをしやがる!」と激怒した段野は正体を露わにした。
髑髏夜叉の名の通り、その顔は骸骨であり、落ち武者のようにざんばら髪をしており、両手は刀になっていた。
有一郎は(武闘系の妖怪か。牛鬼婆のような変幻自在系でないのは幸いだ。室内で変化されて暴れられたら大事になる)とその点は一安心である。
臨闘列伝が「ここで戦うわけにはいかないだろう。おとなしく金をだすがよいでござる」と言った。
「分かった、たかが60億円のはした金、とっととくれてやるわ。しかし、このままでは済まぬぞ」
「承知の上だ、後日、嬬恋村で決着をつけよう。だから、すぐにリュックを三つ用意するでござる。なければ、至急買いに行かせるでござる」
そして、言った。
「きっかり60億円でなくてもよいので、リュックに札束を詰めるだけ詰めるでござる」
有一郎は(ふふふ、これで二人の戦いになるな)とほくそ笑んでいた。
髑髏夜叉は有一郎を見て言った。
「お前、何か圧が違うな。お前の中に誰かいるのか?」
「ん? 勝手に、何を透視しているのですか。失礼な人ですね」
そういうと速攻で空間弾烈を発動させ、空間を削って髑髏夜叉に超接近して、こんどはフックをお見舞いした。
髑髏夜叉はざんばら髪を振り乱して激怒し、「お、お前はゆるさねぇ! 臨闘列伝と一緒に嬬恋村へ来い。まとめて葬り去ってくれるわ」と叫んでいた。
有一郎はこれを待っていた。
これで式神の使い方を近くで観察できる。
髑髏夜叉はまんまと挑発に乗ってくれたわけだ。
有一郎、臨闘列伝、烏小天狗の三人はリュックサック一杯に詰め込んだ札束を持ち帰った。
60億円には遠く及ばないが、それでも10億から15億ぐらいにはなっているだろう。
しかし、妖怪たちにお金など不要だ。
お金を欲しがる妖怪などは、誰一人としていなかった。
髑髏夜叉もお金が欲しくて投資詐欺を行ったわけではなく、ただ、愚かな人間どもを騙す愉快犯的な犯行にすぎない。
臨闘列伝も髑髏夜叉に一泡吹かせたいからお金をふんだくったにすぎない。
あやかはもとより有一郎もお金など欲しくない。
元々物欲に薄いタイプだし、あやかがいる限り、お金儲けは自由自在だ。
花房もくそ真面目な国家公務員であり、分不相応なお金は身を滅ぼすだけだと理解しているため、強奪したお金など貰えるわけもない。
結局、リュックに詰まったお金を欲しがる者は誰もいなかったので、全額、あやかの神社に寄付した。
ただ、問題はお金ではない。
臨闘列伝と髑髏夜叉の戦いにも興味はない。
あるのは式神だけだ。
式神をどう扱うか、その方法だけだ。
ただし、あやか考えている式神の活用法と有一郎が考えている式神の利用法は微妙に違っていた。
日を定めて有一郎、臨闘列伝、髑髏夜叉の三人が……、いや、四人か。髑髏夜叉の隣に、骸骨のタトゥーを顔全面に施し、頭に薔薇の花飾りをつけたメキシコの死の骸骨貴婦人「ラ・カトリーナ」のような妖怪がいた。
「そいつはだれだ」と臨闘列伝が言った。
髑髏夜叉は「これは、わしの女房だ」と答えた。
骸骨夫婦?
「あんたたちも二人だから、この戦いにはあたいも参戦するわよ」
そして、遂に、臨闘列伝が正体を現した。
それは、中国の妖怪アツユに似ていた。
体は赤い牛で足は馬の人面獣だ。
しかも、目が一つ。
それも真紅だ。
アツユは錫杖の代わりに牛刀を携えていた。
(何が山伏だ。完全に中国の妖怪ではないか)と有一郎は呆れていた。
有一郎は驚かされたり、納得させられることが多々あった。
(臨闘列伝という名前から中国系かと思っていたが中国そのものじゃん。おまけに人面獣じゃん。それで人面獣心髑髏夜叉に敵愾心を持っていたわけか。そして、赤い目の渦巻き型隻眼だと。道理で透視ができるわけだ)
アツユがいきなり牛刀を振りかざして髑髏夜叉に斬りかかった。
(おいおい)と有一郎は呆れていた。
(いきなり武闘か。妖術は使わないのか)
有一郎の中にはあやかがいる。
あやかは牛鬼婆に火で撃退された蟲吹雪毒蓮華を繰り出し、死の骸骨貴婦人を襲った。
しかし、相手は骸骨だ。
骸骨に虫の毒が効くのか?
こうして、またもやあやかの策略は不発に終わった。
そこで、白い八咫烏が舞う逢魔時白烈を放った。
「うおっ」と叫んで骸骨貴婦人は顔をそむけた。
そのかず三百に及ぶ白い八咫烏の舞を見て興奮したのが、この戦いを陰で見守っていた烏小天狗だった。
興奮のあまり、烏小天狗は高下駄の跳び蹴りを骸骨貴婦人に浴びせたが、いかんせん小兵なので、骸骨貴婦人の固い拳でぶっ飛ばされて半失神状態になっていた。
有一郎は邪眼念通を発動させて時間溶解に持ち込もうとしたが、(骸骨に脳みそがあるのか)と思って中断した。
有一郎の困惑を察してあやかが提案した。「二人で同時に霊魂糸縛を発動させるのよ」
(霊魂糸縛? 霊魂の糸で相手を縛り上げたとして、それからどうするのだ)
あやかは話を継いだ。
「二人の糸で相手の自由を奪ってすぐに糸の反動を利用して上空に飛ぶのよ。そこから、わたしが灼熱魂魄弾を撃ち込むわ」




