「か、勘違いしてよね! これはただの義理チョコなんかじゃなくて、心を込めた本命チョコなんだからね!!」から始まる、従妹兼お嫁さんとの、6年分のツンデレッデレなバレンタインデー❤️
『立派なツンデレになりたい従妹は、上手くツンツン出来ずにデレッデレ』の後日談。バレンタイン編。
前作(『立派なツンデレ~~~デレッデレ』)をお読みでない方も楽しめる内容になっておりますが、お読みいただいたほうがより楽しめると思います。
1番上のシリーズ欄からお読みいただけます。
俺より5歳年下で、今年19歳になる美少女従妹「沙希」ちゃんと結婚し、一緒に暮らし始めてから約1年が経った本日2月14日。
「……沙希ちゃん、何作ってるの?」
「チョコレート」
「…………」
「ふんふふ~ん♪」
……台所に立ってチョコを作っているらしい、ご機嫌な従妹兼お嫁さんに俺はもう一度問う。
「ならさ、俺が座っているテーブルの上にあるのは……何?」
「チョコレート」
「……今作っているのは?」
「チョコレート♡」
そんな甘い声で言われても騙されないぞ! つまりどういう訳かは全く分からないが……俺にチョコレートを複数食えということだな?
目の前のテーブルに置かれている、ハート型の箱を赤いリボンで包んでいるチョコレート――計5個を。
いや……違う。
現在進行形のチョコを含めると――6個か?
「は、ハハ……」
渇いた笑いを漏らす俺には気付かず
「ふんふふ~ん♪ ふふふふ~ん♪」
と、大層ご機嫌な様子でチョコ作りを続けている沙希ちゃんであった……。
「か、勘違いしてよね! これはただの義理チョコなんかじゃなくて、心を込めた本命チョコなんだからね!!」
「あ、ありがとう」
沙希ちゃんの提案で始まった、ツンデレバレンタインデー。
彼女曰く「今まで家が遠くて一度も渡せなかったバレンタインチョコ6年分、当時に考えたツンデレさんセリフと一緒に渡したいんです!」とのこと。
なんでもその頃のツンデレ言葉も、きちんとメモして残してあるらしい。
沙希ちゃんは「私が年々、立派なツンデレさんとして成長しているところを見せてあげますから!」と言っていたが……。
少なくとも今さっきの、13歳の時に考えついたというツンデレ台詞は「もはや告白だよっ!」と内心でツッコミながらチョコを受け取っていた。
……ついでに言えば、全てのチョコがハート型の箱に入っている時点で、もはや色々とバレバレな気もするが……触れないでおこう。
「次いきますね」
「ああ」
「か、勘違いしてくれていいのよ! 今から兄さんにあげるチョコは、沙希からの本命チョコとして受け取ってほしいんだからねっ!!」
14歳の沙希ちゃん、成長してねぇな!?
勘違いしていい&本命チョコ発言とか、ツンデレどうこう以前に、1年前と同じく告白してるようなもんだと……何故分からない!?
ツンデレヒロインはそんな告白しないぞっ!
天然か? 天然さんなのか!?
「3個目いきますよ?」
「あ、ああ……」
従妹に対して天然疑惑が浮上したのだけど、ひとまずは今受け取った2つ目のチョコを脇において、次のを貰う準備をした。
「か、勘違いしないでよね!? このチョコは時間をかけて夜遅くまで作った、兄さん専用、渾身のバレンタインチョコなんだからねっ!!」
専用って言葉、なんか独占欲が刺激されていい……。あと響きがエチっぽい。
っていうか、専用ということは、本命チョコって言ってるようなもんじゃねぇか!
結局当時15歳の沙希ちゃんも、ただのデレデレ告白じゃんっ!!
「4つ目渡します!」
「お、おう……」
さすがにそろそろ、多少の成長は見せてほしいな……。
というか、沙希ちゃんは何を参考にしてツンデレを勉強しているのだろうか?
……まさか、独学?
それならば全くツンデレになれていないデレッデレ台詞も頷けるけど……。
ラノベやアニメに登場する、ツンデレヒロインの言葉をそのまま言ってしまったほうが、絶対確実で早い気がしてきたわ……。
とか思いながら、3個目のチョコを大事に隣に置いておく。
「はいこれ、お兄ちゃんにチョコレート! 言っておくけど義理じゃないよ? 義理なんかじゃないからね!? 大本命なんだからね! か、勘違いしないでよねっ!!」
まさかのお兄ちゃん呼び!?
沙希ちゃんは俺を「兄さん」もしくは「お兄さん」としか基本的に呼ばないから――めっちゃ萌えるんだけどっ!!
……後日、沙希ちゃんに「お兄ちゃん」って呼んでほしいと、頼むことにしよう!
「では5つ目!」
「おう!」
あんまりもう、ツンデレ成長には期待しないで、沙希ちゃんのデレデレを楽しむことに集中しよう!
そのほうが俺も楽しいしな!
4つ目のチョコも、今まで貰ったチョコの上に積んでおく。
……高さは見なかったことにしよう。
「な、なによ!?ぐ、ぐぐ、偶然でハート型チョコになったんじゃなくて、意図的にしてあげたんだからねッ! それぐらい察してよねっ、バカお兄♡」
5年目もキターーー!!!
デレッデレ本命チョコ告白!
相変わらずツンの欠片もない!
けど、可愛いから許す!
かわいいは正義だっ!!
「いよいよこれが6個目の最後……。今年分のバレンタインになります」
「だな」
あまり視界に入らないよう、5個目のチョコも傍らのハートチョコ箱山の1番上に置いておく。
さぁ、次が今までの集大成!
見せてもらおうか、立派なツンデレバレンタインデー台詞、もしくは沙希ちゃんのデレッデレを!
「ほらっ! あげるわよ! ぜっ、絶対に勘違いしないでよねっ!? どうせ兄さんは沙希以外からチョコなんて貰えないんでしょうから……仕方なく! 本当に仕方なく渡してあげるんだからねっ!!」
羞恥で赤みが差した頬を、プイッと背けながら言う沙希ちゃん。
素晴らしい!
仕草、表情、言葉選び!
正に今のが、正真正銘のツンデ――
「兄さん以外の誰にも渡さないし、渡したこともないんだからね♡」
はい、ツン――からのデレッデレ告白来ましたぁ!!
予想通りに!
俺以外に渡してない=本命確定!
めちゃ嬉しい!
そして何よりも、沙希ちゃんの最初はツン、すぐ後にデレッデレがマジカワユス!!
キュンキュンしちゃうぜ!
「それじゃあお兄さん――召し上がれ♡」
……聞きたくても怖くて聞けなかったこと。
チョコを食べるタイミング。
後日ゆっくりでは……許されなかった。
ニコニコと天使のような微笑を浮かべ、俺が食べるのを今か今かと待っている沙希ちゃんの期待を、裏切る選択肢など取れるわけもなかった……。
うぷ……うっ……ぷ。
沙希ちゃんからのバレンタインは愛が重かった――物理的に。
なんせ6年分のチョコだったから……さ。
「お、美味しかったですか?」
チョコレートを全て完食した俺に、少しの不安を覗かせて聞いてくる沙希ちゃん。
答えは勿論――
「超絶旨かった!」
しかないだろう。これが男の甲斐性というものだ。
実際の所、本当に味には何の問題もなく美味しかった……量さえ除けば。うっ……ぷ。
「えへへ♡ なら良かったです♡ お菓子作りを中3の頃から頑張っていた甲斐がありました!」
そう言って心底嬉しそうに笑ってくれるのだから、俺としても報われるぜ。うぷ。
「あ、今のもツンデレさんっぽく言ったほうがいいよね? ツンデレ好きのお兄さんのために」
俺と沙希ちゃんにとって大切な記念日の日に話した内容と、似たようなことを言い出す従妹のお嫁さん。
結末はきっと、あの日と一緒。
「と、当然でしょ! その食べたチョコ全部に、沙希からお兄さんへの愛が――いっぱい入ってるんだからね♡」
最初はツン。
すぐ後にデレデレ。
そんなツンデレッデレな沙希ちゃんからの純粋で素直な好意に――俺はメロメロなのである。
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