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30ページ目 死神と死にぞこないと

謝罪するより他に正体不明がする事はございません。あらかじめ前話で更新遅れると言いましたが、あまりにもあんまりなほどの更新の遅れ、真に申し訳ございませんでした。

それでは今回からシリアスになりますが、気長な目で見守ってくれつつお楽しみになられると幸いです。

「はァ……こんな事になルとはナ」


「ははっごめんごめん。つい押し倒しちゃった事には謝るよ」


「……ソ、その事は言わないデくれ。なんというカ、なまめかしク聞こえテしまウ」


太陽はすでに沈み、完全に暗くなった道を一組の男女が歩いていた。

女は透き通るような赤いロングウェーブの髪をした、黒を基調としたシャツとジーンズというボーイッシュな服装をしている。

男の方は白い短髪をして、顔の左半分には嘲笑するかのような表情をした黒い仮面を付けている。服装はモノクロ調の色彩に手品師の服のような形をした特異なものだった。

二人とも、十二分に人の目を引く格好である。しかし、二人の真横を通り過ぎる人も遠くから見ている人も特には気にした様子は無い。

魔術的なものか、はたまた別の力なのかは分からないが、不思議な事に違和感無く、服装に関しては辺りの雰囲気と空気に溶け込んでいるのだ。

そのうち黒い仮面をした男の方が、何かを思い出したかのように顔を耳まで真っ赤にして自らの手をまじまじと見た後、何かを忘れようと振り払うかのように手を上下に動かす。


「一体どうしたんだい? 急に手を動かして」


「ナ、なんでも無い。 コ、これは腕に何か虫が付いたかラ振り払ってタだけダ!」


「ははっ。そうかい。キミは堅物っぽいけど時々おかしい行動を取るよね」


「……ッ」


些か難のある弁解を聞いて、まるで子供みたいな何も疑っていなさそうな無邪気な笑い顔をする夢音に、黒い仮面の男はピタリと一瞬全身の動きを止める。そしてそのまま手の動きを止める代わりにさらに顔を赤くした。

……ちなみに、夢音は黒仮面が何とか忘れようとしている事の当事者であるのだが、まるでそれを気にしている様子は無い。いやそれどころか下手すればついさっきの出来事であるのに、細かい所はすっかり忘れているみたいである。


「ソ、そんな事よりモ早くスーパーに行くゾ! 時間も時間だしナ!」


「ははっ。それもそうだね。君の料理、期待しているよ」


そして二人はぽつぽつと電灯が光る道を歩いていった。




所かわってここはマンションの部屋の扉の前。

そこにあまりに唐突に一人の人物が、さも最初からそこに居たかのようにして現れた。

その人物は中性的……ユニセックスな服装をしており、白いフードを深々と被っていて、顔は口元しか見えないがその口元も男か女かどっち着かずで中性的な感じがする。

肌の色も白く、腕にも余計な筋肉が無いように見えて細い。

見た感じでは、その人物の性別は分からなかった。


ピンポーン


その人物は前にある部屋のベルを一回鳴らす。しかし部屋の中からは他に物音は聞こえず、無反応である。


「誰も居ないのかな?」


白いフードの人物が僅かに開いた口から聞こえた声も、男か女か判別し難い中性的なものだ。

そこでその人物は一瞬も躊躇するそぶりを見せず、ドアに静かに平手を当てる。

すると、どうした事であろうか。そのドアが手を中心として、まるで水の波紋のように揺れ動いたかと思ったら、すでにその手はドアの中へと入りこんでいた。

それはまるで、ドアがそのままの形を保ったまま水になったかのような光景だ。気づいたらその人物は、すでに水のようになったドアをすり抜けていた。

その一瞬後の事だ。ドアをすり抜けた人物の首に大鎌の刃が当てられた。


「貴方は誰なのかしらね?」


その人物に鎌を当てたのは死んだ魚のような目と白い髪をした女、瞬である。瞬はいつもとまるで変わらない口調でそう尋ねた。


「はわわ……」


ちなみに瞬のずっと後ろには、星型の髪飾りをした幽霊女がはわわわと言って、明らかなまでに慌てている。

鎌を当てられた方は、それらの反応を飄々とした様子で流し目気味で見た後、口を静かに開く。


「私の事か? 私はそうだな」


そこでわざと勿体振るように間を置いて再度口を開く。


「………………………………………………………『死神』だよ」


瞬間、周りから音が消えたような気がした。


「はわわっ!? し、死神ですか!? わ、私昇天させられるですかっ!?」


死神のその言葉を理解した途端、その沈黙を破り、涙目になって幽霊こと新橋しんばし実菜みなはその半透明な身体で戦闘体制だか、全力で逃げるのだか分からない妙なポーズを取る。

それを尻目に瞬は死神と自ら名乗った人物に対して冷笑を浮かべた。


「死神、ねぇ……笑わせてくれるわね。『死にぞこない』。ついつい笑いを堪えてしまったわ。私を殺す事も出来ないくせに、よく死神を名乗れるわね」


「私は君の思っている死神になるつもりは無いよ。死を完全に操るような事が出来たなら、まさしく本物の反則……死神を遥かに越えているじゃないか。

だけど私は人より遥かに高い所で、死をある程度までは操れるし、魂を狩るような事も出来る。だから私は死神だよ」


「相変わらず、反吐が出るような台詞ね。はっきり言わなくても分かるだろうけど、私はあんたが大嫌いよ。だから私の視界から消えてくれないかしら? さもなくば今すぐに殺すわ」


「それは嫌だな。なんせ私は、いくら殺しても死ねない君が大好きだからね。だからこそ君がそんな事を言うと本当に殺されそうだけど、ここに居るよ」


「そう、なら私があんたを消すわ。ブラック!」


同時に両者は動いた。瞬はその手にした大鎌を手前に引き、首を切断しようとするが、それよりも早く、影と書きブラックと読む者は動き、地に伏せるようにしゃがむ事でその鎌を回避する。

そして足に力を込め、一足跳びで一気に瞬の脇を抜けて移動する。


「逃がすとでも思ったの?」


しかしその動作とともに瞬は反転し、距離を詰めようとする。それと同時に影も後ろ向きに走り、その両者の間の差は変わる事がない。

やがて影の背中が一つのドアにぶつかり、動きが止まった。


ザシュ


そんな音がし、影の首が宙を飛んだ。

本来ならこのような狭い廊下だと瞬の獲物である鎌のように、巨大な武器は動かしづらいはずなのだが、瞬は壁やドアなど気にせずにそれもろとも切り伏せたのだ。


「これで一回、殺されてしまったよ」


「そういう所が醜いのよ。潔く死になさい」


「いや、すでに私は今一回潔く死んだよ。まぁ生き返ったけどね」


気がついたら、その切られた首は元と同じ場所にあった。


「同じ事……よっ!」


「おっと!」


瞬は再度切り掛かるが、それは避けられる。


「参った。あらかじめ何回かは生き返るように細工は出来るが、死んだ後に生き返る細工をするなんて器用な真似、私には出来ないよ」


「そう、なら死ぬまで殺してあげるわ」


「それは困るね。第一私は戦闘向きじゃないよ……」


そんな事を言ってる間に、鎌の尖端が心臓を貫きまたしても殺された。


「さぁ、後何回殺せば良いのかしらね?」


その様子を、瞬は自分が殺した本人であるにも関わらず他人事のように言った後、汚物を見るかのような目に変わる。

その時だった。どこからともなく、ある人物の声が聞こえた。


「そりゃまぁ、普通は尋ねても言わないでしょう」


突如として、影を庇うようにして二人の間に一人の男が現れる。

その男は黒髪黒瞳、容姿はそこそこ。不可ではない。着ている服は赤と青を基調とした色彩の、どこぞの少数民族の衣装のようなものだった。

名前はシャドウ。黒と書いてシャドウと読む、随分とおかしな名前の男であった。


「だから、私は戦闘はこいつに任せる事にするよ」


「ひとまず、宜しくお願いしますと言っておきましょう」


「だからあんたたちは大嫌いなのよ……!」


そうして、戦いは続行される。





バァン!


夜の住宅街は基本的に静かなものである。少なくともここではそうだ。

しかし今夜ばかり、特に彼の周りではそうでも無かったみたいだ。

またしても彼のすぐ近くで音がし、自らの姿を隠すための影にしている壁の一部が砕ける。

どうやらどこに隠れていても、彼の潜む場所は分かっているらしい。

非常に整った容姿をし暗闇の中でもその銀髪が映える、旅人と自らを称するその男は、今現在狙撃による襲撃を受けている。旅人の手の中には小回りが利く小刀が握られていた。

バァンとまたしても音がし、今度は壁が弾け飛ぶ。旅人は人体の限界を越える反射速度で反応し、壁から姿を現し大まかな見当をつけた狙撃手の居る方向へと、緩急をつけランダムに体を左右に振りながら走り出す。

狙撃というものは、本来ならば弾丸が発射されてから2、3秒後になりようやく着弾するものであり、このような旅人の動作は十分意味があるものである。さらに言うのであれば、暗殺を目的にした狙撃手というのは最初の一発が外れたらすぐにその場を離脱するものであるが、この狙撃手は違ったようだ。第一にして、最初の一発目からして遊びのようなものであった。

最初の一発目はこう言っては難があるかもしれないが、『普通の』狙撃であった。使われた弾丸も銃も通常のものであり、だからこそ眠った状態といえでも危機察知能力に優れた旅人は、身体強化なども含めた一切の魔術を使わずに避ける事が出来た。しかし二発目から徐々に、徐々に通常では無くなってきた。異常になったのだ。

元来、旅人を殺そうとするのは魔法であったり気功術であったりオーバーテクノロジーであったりと、『異常の力』を知る者ばかりである。今回も例に漏れずそうであったようだ。


(狙撃自体もそうだが、これはそれに増して厄介だな。魔術か銃の性能だかは分からないが、一発一発ごとに弾丸の速度どころか威力も性能も完全にランダム。……しかし、妙だな。壁を貫通する弾丸もあるほどだ。一発ぐらいは当たっても良さそうなものだがな)


再度壁に潜んだ旅人は張り詰めた状態のまま思考を開始した。

今現在旅人は非常に高度な身体強化魔術を使用しているため、普通の弾丸なら十分な余裕を持って見切りそれどころか掴む事さえもが出来る。しかし狙撃手からは幾度も見切る事が出来ないほどの速度と威力の弾丸が連続で飛んできたりもしている。着弾時間ももはやコンマ数秒も無い。

それは旅人がそれだけ狙撃手に近づいてきた。という意味もない事は無いが、それよりも増して弾丸の落差が激しいのだ。

そう思考している間にさらに事態は進行した。


ドゥン!


「っ!?」


旅人は真横から飛んできた、非常に早い弾丸を咄嗟に身を屈めて避けた。

今の弾丸はおかしかった。今までの弾丸と飛んでくる方向が明確に違うのだ。それだけでは無い、今までとは音の性質が違う。今までのものは弾丸が何かしらの物に当たる事で聞こえたものだが、今のは銃本体から出たものだった。

旅人はその事実を一瞬も間を空けず理解し、身体全体を横へ向け、そちらの方へ忽然と現れた襲撃者へと視線を向けた。


「なかなかやるねぇ。油断させておいて、今ので仕留めたと思ったが流石は懸賞金が高いだけはある。一筋縄ではいかない」


聞こえてきた声とあとその体つきからしてどうやら女らしい。凛歌の鮮やかな金髪とはまた違う、少々栗色に近い金髪で髪は後ろ側で無造作に紐で束ねられている。大きなゴーグルを装着しており暗闇のせいもあってか、顔はよく見えない。

服装は軍服のようなミリタリー調のもので、その肩には担ぐように持たれた大きな銃があった。全長はおよそ2m近くある。おそらくその銃で旅人を狙い続けていたのだろう。


「……まさか狙撃者が自分から姿を現すとはな」


旅人は低い声で独り言のように言い放った。その手は静かに小刀を構え、完全な臨戦体制である。


「あぁ、俺は元々狙撃が専門じゃないんでねぇ。ちまたじゃあ『銃撃屋』って言われているんだ」


飄々とした様子の中、銃撃屋と自らを名乗った彼女の立ち振る舞いにおいては一切の油断も隙も見受ける事が出来ない。

旅人は長年の経験と雰囲気だけで相手の実力を計る事が出来る。そして彼女は相当な実力者である事が分かった。

相手は旅人でもそうは戦った事の無いほどの強者である。

今回はいかに強力な身体強化魔術をかけていようと、油断したら間違いなく死ぬ事になると思いつつ、旅人は銃撃屋へと向かって駆け出した。


次回は少なくとも今回よりは更新遅れないように努力したいと思います……

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